●ベニオトメとは
「ベニオトメ」は九州農業試験場(現 農研機構)が「九州88号」に「九系7674-2」を交配し育成された固定品種であり、イモの皮色が赤、形状は長紡錘形、多収性で、ネコブセンチュウ抵抗性が強く、貯蔵性にも優れ、九州の食用かんしょ栽培地帯に適する青果向きの品種です。
◆ベニオトメの来歴
「ベニオトメ」は九州農業試験場において、多収性で紅赤皮色の「九州88号」に耐病虫性に優れた「九系7674-2」を交配し、得られた実生から選抜育成されたサツマイモ(甘藷)の品種です。育成の過程は下記の通り。
1981(昭和56)年 「九州88号」に「九系7674-2」の花粉を交配。得られた実生を育成。およそ6年にわたり選抜と育成を繰り返す。
1987(昭和62)年 地域適応性検定に供試。
1989(平成元)年 優良新品種として命名登録出願及び種苗法に基づく登録出願。
1990(平成2)年 農林水産省育成農作物新品種命名登録基底に基づき、「ベニオトメ」と命名、「かんしょ農林43号」として登録。長崎県及び鹿児島県において推奨品種となる。
1991(平成3)年 品種登録完了。
「ベニオトメ」という名称は、『皮色が紅色で美しい乙女のようなすらりとした形状をしていること』に因むとなります。
◆ベニオトメの特徴
「ベニオトメ」のイモは端正な長紡錘形で皮色は赤紅色、肉色は黄白色です。条溝や裂開、皮脈が無く外観が優れたサツマイモです。
肉質は粉質で焼き芋に適し、食味の良い品種となっています。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
いもの形状は長紡錘形、大小は中、皮色は赤、肉色は黄白、条状溝及び皮脈は無、外観はやや上、圃場萌芽は無である。
萌芽の遅速は早、萌芽揃の整否は整、晩植適性は中、早掘り適正は高、1株当たり上いも個数及びアール当たり上いも重は多、上いも重歩合はやや高、貯蔵性は易、カロチンは無、切干歩合は高、食味はやや上である。
黒斑病抵抗性はやや強、ネコブセンチュウ抵抗性は強、ネグサレセンチュウ抵抗性は中である。
「高系14号」と比較して、草高が高いこと、分枝数、葉脈色及び密腺色が多いこと、萌芽揃が整であること、ネコブセンチュウ抵抗性が強いこと等で、「コガネセンガン」と比較して、葉形が三角形であること、いもの皮色が赤であること、ネコブセンチュウ抵抗性が強いこと等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみたベニオトメの食味
実際に「ベニオトメ」を焼き芋にしてみました。まず120度のオーブンで1時間、その後200度に上げ1時間かけじっくりと焼き上げました。
焼きあがったイモはどちらかと言えばホクホク系ですが、とてもホクホクというほどではありません。甘味も昨今増えているめちゃ甘系ではなく、サツマイモらしいほっくりとした甘さで飽きがこない美味しさでした。
●ベニオトメの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「ベニオトメ」はデビューしてすぐに長崎県と鹿児島県の推奨品種とされ、それ以外の産地にも広がり、一時は全国で200haほどで作られていたようです。現在も長崎県では推奨品種の一つに指定されており、令和2年産の全国の栽培面積は長崎県の19.5haと鹿児島0.8haのみとなっています。
◆ベニオトメの収穫時期と旬
「ベニオトメ」の栽培は一般的には5月上中旬に植付けをし、収穫 は10~11月となります。収穫後一月ほどは貯蔵した方が甘みが増して美味しくなり、本種は貯蔵性が高く、年明けまで美味しい状態が保てます。
品種 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ベニオトメ |
< 出 典 >
※ 「カンショ新品種「ベニオトメ」について」九州農業試験場報告 27 (3), 249-267, 1992-03
※ 「かんしょ品種の普及状況」農林水産省
※ 「登録番号2628 ベニオトメ」農林水産省品種登録データベース