富士の輝（ふじのかがやき）／ブラックシャインマスカット：来歴や特徴と産地と旬

●富士の輝とは

　「富士の輝（ふじのかがやき）」は山梨県の志村葡萄研究所が「シャインマスカット」と「ウインク」から生み出した皮ごと食べられる赤いぶどう品種で、「ブラックシャインマスカット」とも呼ばれています。

◆富士の輝の来歴

　「富士の輝（ふじのかがやき）」は山梨県笛吹市で志村葡萄研究所を営む志村富男が、皮ごと食べられる黄緑色のぶどうとして現在主流となっている「シャインマスカット」に、同じく皮ごと食べられる赤いぶどうの「ウインク」を交配し選抜育成したとされる果皮が赤紫色で皮ごと食べられるぶどう品種です。

　種苗法に基づき、2017年に登録出願、翌2018年に公表されていますが、品種登録には至らず2020年に拒絶されています。拒絶理由は分かりませんが特性が安定していなかったのかもしれません。

　ただ、「富士の輝」は甘くて皮ごと食べられ美味しいぶどうとして既に話題になり、様々なメディアでも「ブラックシャインマスカット」などと呼ばれ取り上げられています。

◆富士の輝の特徴

　「富士の輝」は通常ジベレリン処理され、種無しの大粒ぶどうに仕立てられています。

　果粒は長楕円から卵型、それに大粒になると果頂部にくぼみができ、断面が長ハート形になる傾向があります。

　果皮色は「ブラックシャインマスカット」とも呼ばれるように紫黒色になるものもありますが、写真のように赤紫色のものもあります。

　皮は薄く皮ごと食べられるのが特徴で、種無し処理されているのでそのままかじるように食べることができます。

　果肉は崩壊性で歯切れがよく、果汁は少なめですが糖度が高く酸味は少なめで蜜のように甘いぶどうと言われています。

　果粒断面を見ると果芯の左右に空洞ができていますが、これは種子ができるはずだった部分で、ジベレリンにより種無しになったためにできるものです。

◆実際に食べてみた富士の輝の食味　2022年8月

　撮影試食した「富士の輝」は8月11日に大阪の百貨店で購入した山梨県産で時期的にハウス物と思われます。

　房は綺麗に整えられ、果梗は太めで果粒がぐらつかないくらいしっかりとしていました。

　果皮色は「ブラックシャインマスカット」と呼ぶには全体に薄く、濃い紫黒色に着色している粒と、まだ黄緑色の地色に薄く赤く着色した程度の粒が入り混じるように付いていました。

　食べてみると、シャインマスカットと同じように皮は薄く、パリッと果肉と共に歯切れよくかじることができ、とても甘く美味しいぶどうでした。計った糖度は20～21％ありました。酸味が少ない分一層甘く感じます。皮の渋みは見た目の色から想像するほど強くはなく、かみしめた時に少し感じる程度です。

◆実際に食べてみた富士の輝の食味　2022年10月

　同じ2022年の10月中旬に撮影したものは「JAフルーツやまなし えんざん」のフィルムに包まれていたもので、8月ものと同じように粒によって着色にムラがあり、全体に”ブラック”というより”レッド”といった色合いのものでした。皮の色合いもやや透明感が感じられます。

　果粒は平均14.5ｇほどで、粒の形は8月のものより果頂部が顕著に凹んでいました。

　こちらも種子はなく、中にやや大きめの空洞ができています。

　食べてみると、皮はさらに薄く、パリッと皮ごと食べられ、皮にも渋みなどは感じられません。

　果肉は崩壊性で歯切れがよく、強い甘みが口に広がりました。酸味はやはり少なく、計った糖度は21.9％でした。

　この年は全体にしっかりと黒く色付いたものが入手できなかったので、別の年に試してみたいと思います。

●富士の輝の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　「富士の輝」は志村葡萄研究所がある山梨県が主な産地です。ただ、生産者が少なく希少なブドウとして市場ではかなり高値で取引されている状態です。

　可能であれば直接産地に足を運び、直売所で購入することをお勧めします。

◆富士の輝の収穫時期と旬

　「富士の輝」は温室栽培もされており、早いものは7月中旬頃から出回り始めるようです。雨よけだけの物は8月下旬ごろから収穫の最盛期を迎え、10月上旬頃までとなっています。

富士の輝	7月			8月			9月			10月
温室物
雨よけのみ

＜ 出　典 ＞

　※　「富士の輝」 志村葡萄研究所ホームページ

　※　「出願番号32529　富士の輝」　農林水産省品種登録データベース