バイオレットキング:来歴や特徴と産地や旬
●バイオレットキングとは
「バイオレットキング」は山梨県の志村富男氏が「ウインク」と「シャインマスカット」を交配し育成した大粒で紅藤色に着色する高糖度のぶどう品種です。
◆バイオレットキングの来歴
「バイオレットキング」は山梨県の志村葡萄研究所の代表である志村富男氏が2008(平成20)年に、志村氏がマンズワインに勤務していた時に育成した皮ごと食べられる果皮が赤い「ウインク(「ルーベルマスカット」×「甲斐路」)」に皮ごと食べられる「シャインマスカット」を交配し、得られた実生から選抜育成したブドウです。種苗法に基づく品種登録はされていませんが、志村葡萄研究所のホームページには『只今、品種登録準備中』となっています。
昨今、シャインマスカットの人気に続き、皮ごと食べられる高糖度のブドウが注目され、中でも果皮が赤いタイプがシャインマスカットとともに紅白の詰め合わせにできることから贈答用に求められている中、本種も期待されている品種の一つとなっています。
◆バイオレットキングの特徴
志村葡萄研究所の紹介によると「バイオレットキング」は果粒は20~25gの大粒で、大きい物になると30gほどにもなり、果皮は紅藤色で着色容易となっています。 ただ、生産者のホームページなどを見ていると全体に綺麗に着色している写真は少なく、今回入手したものもムラがあり、まだ栽培の技術的な面が確立されていないようです。
果粒の形は扁円から短楕円となっていますが、大粒のものは頂部が平坦で凹みがみられるものも多いです。
食味の点では、交配親はいずれも皮ごと食べられる品種であり、本種もその特性はしっかりと受け継いでいます。ただ、マスカット香は受け継げなかったようです。
果肉は崩壊性で糖度は18~23度と高く、粒がそろって全体に赤く色付いた大きな房は贈答用としても十分ふさわしいぶどうです。
また、果粒は果梗にしっかりと付いていて脱粒しにくく棚持ちも優れています。
◆実際に食べてみたバイオレットキングの食味
撮影試食したバイオレットキングは10月9日に購入した山梨県産のもので、進物向けではなく1房1500円のパック売りされていました。着色は全体に濃く色付いている粒とあまり着色していない物もありバラツキがあります。
食べてみると、果肉は欧州種特有の食感で甘く、酸味は少ないです。香りも少なく全体にあっさりした味わいで後口もすっきりしていました。ただ、皮はそのまま食べることができますが、やや強く、皮だけ残して出すことができるくらいでした。糖度を計ると16.2度前後だったので、このぶどう本来の食味にはなっていなかったようです。
今回のものは出来としては今一つの物だと思うので、これぞバイオレットキングだというものを食べてみなければなりません。次回そういうものが入手できた際に、あらためて追記したいと思います。
●バイオレットキングの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
バイオレットキングはまだ栽培面積が少なく、平成30年産特産果樹生産動態等調査にもまだ記載がなく、現在の栽培面積や収穫量は分かりませんが、主な産地は山梨県のようです。
その他、確認できた限りでは長野県、岡山県、埼玉県、福岡県、富山県など広く栽培されており、多品種栽培をしている個々の農園で作られています。
◆バイオレットキングの収穫時期と旬
バイオレットキングの成熟期は育成地の山梨県で9月上旬~中旬となっています。
収穫時期は産地や栽培環境などによって幅があり、早い所では8月中旬ごろから始まり9月下旬頃までとなっています。
品種 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||||
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バイオレットキング |
< 出 典 >
※ 「バイオレットキング」 志村葡萄研究所ホームページ
※ 「バイオレットキング」 ブドウ品種総図鑑 植原宣紘 編著 p.132