●青森毛豆とは

 「毛豆」とは黒目青大豆の一種で、青森県の主に津軽地方で栽培されている在来種です。莢全体が黄金の毛で覆われており、甘味とコクがあるのが特徴で、9月中旬~10月上旬にかけての短い期間しか出回りません。

◆青森毛豆の来歴

 「毛豆」は青森県農家の津軽地方で「畔豆(あぜまめ)」と呼ばれ、古くから自家用として田の畦や苗代、畑の隅などに植えられてきました。米が凶作の時はこの豆が貴重な食材となっていたようです。毛豆の栽培は主に各農家の嫁が担い、家族の食卓の一品として美味しい豆を作るために選抜や栽培方法などを工夫しながら代々姑から嫁、あるいは母から嫁へ種子を受け継いできました。

 そういった形で、長年個々の農家が自家消費する分や、近所に分けたりと、地元で消費する程度でしかなかったのですが、2011年に有志により青森毛豆研究会が設立され、「青森毛豆」をブランド化し、青森県の特産品として全国に発信する活動が始まり、この豆の存在や美味しさが広く知られるようになってきました。

◆毛豆の品種改良品種も

 「毛豆」と呼ばれる物には在来種の「毛豆」以外に、青森県畑作園芸試験場(現 地方独立行政法人青森県産業技術センター)が品種改良を行い育成した早生種「あおもり豊丸」「あおもり福丸」の2品種があります。いずれも2001年に品種登録されています。在来種との違いはいずれも収穫時期が早いことと、「あおもり豊丸」は毛が少なく、「あおもり福丸」は香り、甘さが在来「毛豆」より優れるなどがあるようです。

◆青森毛豆の特徴

 「青森毛豆」は津軽地方の個々の農家によって受け継がれてきた在来種ですが、長い年月の中でそれぞれが美味しい個体を選抜してきたことから、各農家によってサヤの見た目や豆の味わいなどに微妙な違いが見られます。

 撮影試食した「青森毛豆」は津軽地方の中でも毛豆の栽培が盛んな板柳町で、「青森毛豆研究会」、「いたや毛豆研究会」のどちらにも所属し毛豆のブランド化やPRにも取り組んでおられる長内将吾氏の農園産です。

青森毛豆(あおもりけまめ)

 「青森毛豆」のサヤは一般的な枝豆に比べ少し大きく、豆は1~2粒入りのものが多いです。そして、サヤは写真のように表面にびっしりと黄金から赤茶色の毛が生えています。

青森毛豆(あおもりけまめ)

 中の豆はグリーンで、粒が大きく、甘く、非常にコクがあり栗のような食味が特徴となっています。

◆実際に食べてみた青森毛豆の食味

 長内将吾氏の農園では農薬や化学肥料を使わず、主に馬糞と米ぬかによって土づくりをされているとのことなので、茹で上がった莢も安心して口に運べます。

茹で上がった青森毛豆(あおもりけまめ)

 茹で方は青森毛豆250gに対して、水1L、塩50g(5%相当量)がおすすめとのことなので、その分量で、莢をさっと水洗いしてから塩を振り、しっかりともみ込んでから、塩が付いたままの状態で鍋に入れ、水を張って火にかけ、7~8分茹でるとあります。ここでは枝豆の茹で方で紹介しているように、サヤの両端を切り落として茹でています。

茹で上がった青森毛豆(あおもりけまめ)の豆

 茹で上がった毛豆の莢を押すと、つるっと艶のある美しい黄緑色の豆が出てきました。サヤの大きさの割に豆自体はそれほど大きくはないですね。

 今回沢山取り寄せたので、料理用に豆を剥いてみました。

青森毛豆(あおもりけまめ)茹でてサヤから出した豆

 豆の味は甘みがあり、なるほどと思う濃くも感じられます。香りはクセがなく豆らしい風味で美味しい枝豆でした。ただ、旨味の面では黒豆系や茶豆系には及ばない気がします。

◆青森毛豆の調理例

 「青森毛豆」を使った料理を2つ作ってみました。一つは青森毛豆と二子さといもを、ベーコン、ニンニク、ローズマリーと共にソテーしたもの。毛豆のグリーンが鮮やかで映えています。

青森毛豆と二子さといも、ベーコンのソテー

 もう一つは栗ご飯に加えたもの。豆は一緒に炊き上げると色が悪くなるので、炊き上がった栗ご飯に茹でた豆を混ぜています。

青森毛豆入り栗ご飯

●青森毛豆の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

青森毛豆(あおもりけまめ)

 「青森毛豆」は青森県津軽地方が産地です。

 かつては産地で消費され、県外に出荷されることはなかったようですが、近年はブランド化がすすめられ全国に向けてPR活動が行われており、知名度も徐々に上がってきています。それに応じて大都市からの引き合いも増えてきているようで、生産量も増えています。

◆青森毛豆の収穫時期と旬

 在来種「青森毛豆」は晩成種で、産地も青森県という北にあるため、収穫は9月中旬~10月上旬にかけての短い期間となっています。

 また、登録品種の早生2品種は「あおもり豊丸」が7月下旬から、「あおもり福丸」は8月上旬から収穫が始まり、在来種「毛豆」の収穫時期までリレー的に出回ります。

品種 7月 8月 9月 10月
あおもり豊丸                        
あおもり福丸                        
在来種毛豆                        

< 出 典 >

※ 青森毛豆研究会ホームページ

※ 長内将吾 毛豆 (ケマラボ)

※ 「連載:地方品種をめぐる12 青森県「毛豆」」豆類時報 No.81 p.16-20(2015.12)