●タワラマゼランの来歴や特徴
◆タワラマゼランの来歴
「タワラマゼラン」は育成者、故・俵正彦氏の育成系統の変異株であり、イモの形状は長楕円形、皮色は紫、肉色は黄の調理向きの品種となっています。もとになった系統も2000(平成12)年に「グラウンド ペチカ」として品種登録されています。この「グラウンド ペチカ」も「レッドムーン」の突然変異とされ、「デストロイヤー」という異名でも有名ですね。
タワラマゼランは2005(平成17)年に種苗法に基づく登録出願、2008(平成20)年に品種登録されています。俵正彦氏は2018(平成30)年6月に生涯を閉じるまで10品種ものジャガイモを世に送り出しています。
◆タワラマゼランの特徴
タワラマゼランのイモは長楕円形で、皮の色が紫色であることが大きな特徴です。変異元の品種である「グランド ペチカ」は赤い地色に赤褐色の斑模様でした。今回撮影した物は気候の影響で紫色が薄めで斑になっていますが、状態が良い物は全体に黒に近い位濃い紫色になります。
また、芽が浅くイモの形が長いので皮がむきやすいタイプです。
肉色が黄色く、肉質はグランド ペチカによく似ており、きめが細かくホクホク系でありながら加熱調理しても煮崩れしにくいのが特徴です。
皮の色が紫色で、緑化しにくいことから、長期保存しても有害なソラニンやチャコニンが増えにくいようです。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
いもの長短は極長、扁平度は弱、形は長楕円形、
皮色は紫、表皮のネットは無、目の深浅は極浅、肉色は黄、
枯ちょう期は中、早期肥大性はやや速、上いも重及び上いも数はやや少、上いも平均1個重及び肉質は中である。
「レッド ムーン」と比較して、皮色が紫であること、表皮のネットが無いこと等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
●タワラマゼランの食味や適した料理
◆皮ごと蒸したものと皮を剥いて茹でたもの
タワラマゼランを皮付きのままのものと、皮をむいた物を同じ鍋でしっかりと火が通るまで茹でたものです。皮付きの方はまるごと茹でたものを切っています。
皮をむいたものも大きな煮崩れはなく、皮ごと茹でた方を手で潰した見ると、でん粉価が高いわりに中の水分量が多いように感じます。
食べてみると、舌触りはサラサラした感じではなくややしっとりとしていますが、粘りはあまり感じません。ほんのり甘く、味にコクが感じられ美味しいです。
●タワラマゼランの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
タワラマゼランは北海道から九州まで各地で栽培はされていますが、本種だけを大規模に生産している所はなく、多くが個々の農園で多品種栽培している中の一つとして作られており決して生産量は多くないので、一般のスーパーなどに並ぶことはほぼないです。
収穫された物の多くは農園での直販か産地の直売所で販売されていると思います。
◆タワラマゼランの収穫時期と旬
タワラマゼランも基本的には他の馬鈴薯と同じ時期に栽培されています。
暖かい地方では寒い時期に植え付け、初夏に収穫され、寒い北海道などでは春過ぎに植え付け、9~10月頃に収穫されます。
品種 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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タワラマゼラン |
< 出 典 >
※ 「俵死すとも品種は死せず」新農業経営者ルポ 第170回 2018年09月03日 農業ビジネス (株)農業技術通信社
※ 「登録番号 16015 タワラマゼラン」農林水産省品種登録データベース