●小布施丸なすとは

 

◆小布施丸なすの来歴

 小布施丸なすは明治時代から小布施町の山王島で栽培されてきた在来種で、食味の良さもあり大正時代には「晩成丸茄」と呼ばれ北信地方の30軒ほどの農家が栽培していたそうです。ところが、昭和30年代に「千両」そして「千両二号」の登場により全国的に在来種から栽培しやすく、形が安定し収量が何倍もあるこういった新品種に切り替わっていきました。

小布施丸なす 信州の伝統野菜

 この小布施丸なすはこういった種苗メーカーが販売する新品種に比べ一株から採れる量が1~2割しかないそうです。食味の良さはあっても、この大きな時代の流れの中で生産者はどんどん減り、一時はわずかな農家が自家用に少量栽培する程度にまでなっていたそうです。

 そんな中、近年の全国的に在来種や伝統的な野菜に対する関心が高まり、本種も掘り起こされることになったのです。長野県では2006(平成18)年に「信州の伝統野菜認定制度」が発足し、その翌年2007(平成19)年に認定されました。そして2012(平成24)年には小布施町の農家や飲食店などの有志により「小布施丸なす研究会」が発足し、小布施丸なすの保存活動や、栽培の普及をすすめました。現在も「小布施丸なす保存会」と名称を変えて活動されています。

◆小布施丸なすの特徴

 小布施丸なすの果実は果重は300~400グラムでソフトボール大のやや扁平の巾着型で表皮に浅い溝が入るものもあります。

小布施丸なす 信州の伝統野菜

 果皮色は黒紫色で、花痕が大きく、艶はあまりありません。

 果肉は乳白色で肉質は緻密で硬くほのかに甘い特有の風味があるのが特徴となっています。

小布施丸なすの断面

●小布施丸なすの美味しい食べ方と料理

◆調理のポイント

 小布施丸なすは果肉が硬く締まりがあり、一般的なナスと比べると火の通りが遅く、柔らかくなるまでには時間がかかります。しかし、柔らかくなるまで煮ても煮崩れすることがないのが持ち味でもあります。そのため、煮物向きのナスとも言われています。

小布施丸なすの断面

 また、信州と言えば「おやき」が有名ですが、この小布施丸なすは「おやき」の具材としても欠かせない素材と言われています。

 切った後、時間と共に切り口が茶色く変色してくるので、切ったらすぐに塩水に浸します。

 ナスは油との相性がとても良く、小布施丸なすもそうです。揚げ物や炒め物などもお勧め。

◆小布施丸なすの田楽

 小布施丸なすの頭のヘタの部分を切り落とし、お尻の花痕もそぎ落とします。それから赤道で半分に切り、それぞれ両面に格子状に隠し包丁をいれ、塩水に浸します。

 よく水気を切り、油を敷いたフライパンで両面しっかりと焼きます。このナスは柔らかくなるまで少し時間がかかるので、火加減に注意しながらじっくりと焼き上げましょう。

小布施丸なすの田楽

 焼きあがったナスに田楽味噌をひろげ、山椒を振ります。

◆小布施丸なすのまるごと揚げ浸し

 小布施丸なすは大き過ぎず、手頃なサイズなので、まるごと一個をその形を残した状態で揚げびたしにしています。

小布施丸なすのまるごと揚げ浸し

 果頂部(花痕の部分)から頭のヘタ近くまで切り込みを入れ、170度の油でじっくりと素揚げし、出汁、醤油、みりんを合わせたつけ汁に浸します。

 小布施丸なすはしっかりと火が通っても形が崩れないので、つけ汁に浸ける際に上から押し付けるようにして少し広がるようにします。

◆小布施丸なすの肉詰めグラタン

 丸なすを縦半分に切り、果肉をくり抜いて器にしたグラタンです。

小布施丸なすの肉詰めグラタン

 くり抜いた後の器状の茄子は一旦塩水に浸しておき、くり抜いた果肉は細かく刻んで、ひき肉、タマネギと共に塩胡椒、ナツメグを振ってから炒め、トマト缶とオレガノを加え、煮詰めるように煮ます。

 ナスの器に炒めた具材を詰め、たっぷりとチーズをのせ、オーブンで焼き上げます。

 今回、ナスの器は生のまま具材をつけて焼き上げたので、火は十分に通っているものの食感は結構固めに仕上がりました。器はあらかじめ素揚げするか、別に焼き上げてから具材を詰めた方が良いかもしれません。

◆小布施丸なすのトマト煮

 小布施丸なすをさいの目に切って塩胡椒を振り、タマネギ、ニンニクと共にオリーブ油で炒め、タマネギがしんなりしたら白ワインを加え、水分を飛ばすように煮詰めてからホールトマトの缶詰とオレガノを加えて軽く煮込みます。

小布施丸なすのトマト煮

 煮込んでも写真の通り、小布施茄子はさいの目の角がしっかりと残っていますね。でも食べると柔らかく口の中で崩れ、とても美味しいです。皮も柔らかくその存在感を意識することはありません。

◆小布施丸なすのフライ ナスカツ

 小布施丸なすを上部のヘタとお尻の部分を削ぐように切り落とし、それを赤道で半分に切って、塩胡椒、小麦粉、卵、パン粉の順にまぶし、油で揚げたもの。

小布施丸なすのフライ ナスカツ

 これが思いのほか美味しかったです。ナスは形が崩れない適度な硬さがあるのですが、食べた時には硬いと感じることはなく、柔らかすぎる事もなく何とも言えない絶妙の食感です。

◆小布施丸なすのオランダ煮

 茄子料理の定番ですね。写真は1個の小布施丸なすを縦6等分に切り、皮目に隠し包丁を入れてから油で素揚げし、それを出汁、醤油、みりん、砂糖を合わせたつゆで煮たものです。

小布施丸なすのオランダ煮

 柔らかくなるまでナスを煮ていますが、形はキレイに残っています。でも食べると出汁が染みていて柔らかくとても美味しいです。

◆小布施丸なすのひき肉餡かけ

 小布施丸なすを少し薄めに串切りにし、素揚げしてから器に盛り、ひき肉餡をかけたもの。

小布施丸なすのひき肉餡かけ

 このナスはこれくらいの薄さでしっかりと揚げても形が崩れず綺麗に並べることができます。薄く切ることでひき肉の餡が絡みやすく食べやすいです。

●小布施丸なすの主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 小布施丸なすは長野県上高井郡小布施町に伝わるナスで、現在も小布施町の7軒ほどの生産者が栽培出荷されています。

◆小布施丸なすの収穫時期と旬

 小布施丸なすの収穫は7月から10月上旬頃までで、最盛期は7月下旬から8月にかけてです。

品種 7月 8月 9月 10月
小布施丸なす                        

< 出 典 >

※ 「小布施丸なす」おいしい信州ふーどネット 長野県

※ 「地元で愛され続ける伝統野菜「小布施丸なす」」長野県のおいしい食べ方 2012.08.28 JA長野県