●余蒔きゅうりとは

 余蒔きゅうりは福島県会津地方で古くから作られてきた在来種キュウリで、現在ではほとんど見なくなったブルームタイプの白いぼキュウリです。一時は絶滅しましたがその後復活し、会津の伝統野菜としてブランド化がすすめられています。

◆余蒔きゅうりの来歴

 余蒔きゅうりは江戸時代から福島県会津若松市門田町飯寺地区周辺で作り続けられてきた在来種キュウリで、かつては農家が自家採種によって種子を受け継ぎ、広く栽培されてきましたが、収量が少なく、栽培しやすく収量が多い新しい品種の登場により昭和20年頃にはその姿が見られなくなっていました。

余蒔きゅうり 余蒔胡瓜

 平成15年になって福島県農業試験場がジーンバンクから種子を譲り受け、その中から選抜固定し、平成20年に復活させることに成功。現在は地元の福島県立会津農林高等学校が「人と種を繋ぐ伝統野菜の会」として会津伝統野菜を栽培し普及活動なども行っています。また、全国的な伝統野菜を見直す動きの中、会津の伝統野菜もブランド化がすすめられ、地元でも栽培に取り組む生産者がでています。

余蒔きゅうり 余蒔胡瓜

 余蒔きゅうりという名称の由来にはいくつかの説があるようで、『余った種子を蒔いて育てた』という説や、『農作業を終え、余った時間に蒔いて育てた』、また、『前年の種を蒔くという意味』などがあります。また、関東あたりでのキュウリの栽培時期は春蒔きが一般的ですが、夏に地蒔きすることを「余蒔き」と言います。これは春に蒔いて余った種を夏蒔で再度栽培するためで、かつては各地でこうして作られたものが、ごく普通に余蒔ききゅうりと呼ばれていたようです。

◆余蒔きゅうりの特徴

 余蒔きゅうりの果実は一見半白キュウリに似ていますが、半白キュウリは黒いぼなのに対し、本種は白いぼキュウリです。

余蒔きゅうり 余蒔胡瓜

 一般的なキュウリに比べやや短く、通常は18cmほどまでで収穫されます。太さは3~3.5cmほどでややずんぐりとした形です。

 果皮は全体に淡い緑色で霜降り状に緑色が混じり、上部はその緑の霜が多くなっています。

余蒔きゅうり 余蒔胡瓜

 皮は柔らかく果肉の歯切れもよく、食味が優れる半面、表面がイボなどで傷つきやすい。キュウリ特有の青臭さが少ないのも特徴ですが、20cm以上大きくなるまで成長させると皮が硬くなり、キュウリの香りも強くなるようです。

余蒔きゅうり 余蒔胡瓜

 撮影した余蒔きゅうりは会津坂下町で会津の伝統野菜を中心に広く固定種・在来種の野菜を生産するリオリコ農園さんから届いたものです。

●余蒔きゅうりの美味しい食べ方と料理

◆調理のポイント

 余蒔きゅうりは基本的には普通のキュウリと同じ料理で美味しく頂けますが、比較的果皮が柔らかく、キュウリ特有の青臭さやエグミが少ないため、キュウリが苦手な人でも食べやすいかもしれません。油との相性がよく、天ぷらや炒めものなど加熱調理にも適しているようです。

余蒔きゅうりのスライス余蒔きゅうりの塩もみ

◆余蒔きゅうりのQちゃん漬け

 余蒔ききゅうりでつくったQちゃん漬け。食感は軽やか。

余蒔きゅうりのQちゃん漬け

●余蒔きゅうりの主な産地と旬

余蒔きゅうり 余蒔胡瓜

◆主な産地と生産量

 余蒔きゅうりは会津地方の伝統野菜で、会津若松市や会津坂下町で作られています。

 ブランド化がすすめられてはいますが、収量が少ないことや表面が傷つきやすいことなどもあり、生産量は多くはないようです。

◆余蒔きゅうりの収穫時期と旬

 余蒔きゅうりの栽培は、古くは余蒔き=6月頃に地蒔きされていたそうですが、現在は春に種をまき、収穫は6月偈頌院頃から始まります。収穫の盛期は7月から9月にかけての夏です。

品種 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
品種 7月 8月 9月 10月
余蒔きゅうり                        

< 出 典 >

※ 「会津余蒔胡瓜-「会津伝統野菜」は人と種をつなぐふるさとの味」みんなの農業広場 2021年06月11日

※ 「余蒔きゅうり」会津の伝統野菜を守る会

※ リオリコ農園