●大浦太ごぼうとは
千葉県の八日市場市(現 匝瑳市)大浦地区で古くから栽培されてきた伝統野菜。長いごぼうですが直径が10cmほどもあり、筒を踏んで潰したような形をしています。また、中に空洞があり、詰め物をして料理したり、精進料理などに使われています。市場に流通する大浦ごぼうはこれと同じ系統の物を他の地域で栽培したものです。
◆大浦太ごぼうの来歴
「大浦ごぼう」は千葉匝瑳郡大浦町原産で千葉県匝瑳市の指定文化財にも指定されている太いごぼうで、成田山新勝寺に奉納され、参拝者へ精進料理の一品として提供されてきました。
平安時代に平将門の乱起こり、これを鎮めるため藤原秀郷が戦勝祈願に新勝寺を訪れた際に大浦ごぼうがふるまわれ、乱を鎮圧したことから「勝ちごぼう」と呼ばれるようになり、縁起物として精進料理として振る舞われるようになったのだそうです。
それ以来、大浦地区では奉納用として大浦ごぼうが栽培され、現在も新勝寺と契約している6軒の農家が栽培を続けており、厳密には「大浦ごぼう」は一般の市場には流通していません。
市場に流通する大浦ごぼうはこれと同じ系統の物を他の地域で栽培したものです。種子は様々な種苗会社から販売されています。
◆大浦太ごぼうの特徴
大浦ごぼうの根は太くて短い紡錘形で、直径10cmほどで、長さ40~50cmほどです。ただ、大きく育てたものでは太さ30cm長さ1mにもなるようです。
根の表面は肥大するにしたがって裂け目ができ、中心部に空洞ができます。
このように、外見は非常に武骨で荒々しい姿ではありますが、煮るとやわらかくなり、食味も美味しいごぼうとして知られています。
●大浦太ごぼうの美味しい食べ方と料理
◆調理のポイント
大浦ごぼうは太くてアクもあるので、煮物にする場合は下茹でしてから出汁や調味料を加えて仕上げます。また、風味を残すために皮は剥きません。下茹では糠を加えて、柔らかくなるまで茹でますが、家庭では糠は無くても良いでしょう。
◆大浦太ごぼうの含め煮
大浦ごぼうを筒切りにし、一晩水にさらしてから、竹串がスッと刺さるくらい柔らかくなるまで下茹でします。
それを出汁に砂糖、醤油、みりんを加えた汁で煮上げます。
箸でほろっと割れる感じに仕上がり、味も良く染みてとても美味しいです。
◆大浦太ごぼうの肉詰め
筒切りにして下茹でした大浦ごぼうの真ん中をくり抜き、そこにくり抜いたゴボウを刻んだものと、ナツメグを加えたひき肉を詰めてフライパンで両面焼き上げたもの。
ひき肉とごぼうの相性もよく、ゴボウの食感も柔らかくて良い感じです。写真は塩胡椒を振って焼いていますが、照り焼き風にしても美味しいと思います。
●大浦太ごぼうの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
成田山新勝寺に奉納されている「大浦ごぼう」は大浦地区の6軒の農家だけが栽培しており、一般の市場には流通していません。
様々な種苗メーカーから販売されている「大浦ごぼう」あるいは「大浦太ごぼう」はどこでも誰でも購入でき栽培することができますが、本来の大浦ごぼうと同じような品質に育てるには粘土質の土壌が適しているそうです。
また、ゴボウは連作が出来ない作物の一つですが、大浦ごぼうは一度植えたら5年は同じ場所で作ることができないと言われています。
◆大浦太ごぼうの収穫時期と旬
本場の大浦ごぼうは3月に種をまき、11月に収穫されます。成田山新勝寺でふるまわれているものは12月上旬に奉納されたものを調理し、保存されたものが通年小出しにされています。
広く販売されている種子で栽培されたものは、やはり秋から冬にかけて直売所などで販売されています。
品種 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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大浦太ごぼう |
< 出 典 >
※ 「大浦太ゴボウ」野菜まるごと辞典 成美堂出版 p.105
※ 「大浦ごぼう」株式会社まつの
※ 「千葉県 匝瑳市指定文化財「大浦ごぼう」の物性に与えるゆで汁の影響」日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
※ 「怖っ!直径30センチのゴボウ 成田山新勝寺に奉納「幻」の巨大野菜に迫る」産経新聞 2013/12/30