●キルトピンクとは

 「キルトピンク」は長野県が育成した果肉も赤いリンゴの新品種で、果汁が多く糖度と酸度が高く食味が濃厚な晩生品種です。

◆キルトピンクの来歴

 「キルトピンク」は長野県果樹試験場において「シナノスイート」に「JPP-35」を交配し、得られた実生から、系統名「リンゴ長果34」として選抜育成された果肉がピンク色に着色するリンゴです。育成の過程は下記のとおりです。

1989(昭和64)年 「紅玉」に、果肉がピンク色のアメリカの品種「ピンクパール」を交配し、その実生から「JPP-35」を育成。

2000(平成12)年 「シナノスイート」に「JPP-35」を交配、得られた実生を育成。

キルトピンク(リンゴ長果34) 果肉も赤いリンゴ

2020(令和2)年 系統名「リンゴ長果34」を11月上旬から中旬に成熟する晩生品種で、糖度と酸度が高く食味は濃厚であること、果汁が多く食感が良いこと、果肉がピンク色に着色する特性を持つことから新品種とし、2月12~26日に名称を一般公募。名称を「キルトピンク」と決定し、10月に種苗法に基づき登録出願。

2021(令和3)年 品種登録出願公表。

 交配親に用いられた種子親の「シナノスイート」は長野県が生み出した『りんご三兄弟』の一つで、「ふじ」と「つがる」の交配から育成された品種で、酸味が少なく食味が良い赤皮のリンゴです。

 2000年の交配から実に20年の年月をかけ生み出された長野県のオリジナルりんご品種です。

◆キルトピンクの特徴

 「キルトピンク」の果実は大玉で、果実重は 350~400gとなってはいますが、500gを超える果実も多いようです。撮影したものは600~700gありました。

 果形は円形からで長円錐形で、果皮色は全体に濃紅色に着色し、果点は小さめです。また、果肉の着色よりも果皮の着色が先行する傾向があるとされ、収穫はがくあ部(果頂部)まで赤く着色してからが推奨されています。

キルトピンク(リンゴ長果34) 果肉も赤いリンゴキルトピンク(リンゴ長果34) 果肉も赤いリンゴ

 果肉は果心以外がピンク色で、着色する面積は「紅の夢」より大きいい傾向があります。ただ、着色の度合いは、個体間差をはじめ台木の違いや栽培環境などによって差がみられるようです。

 食味は糖度 15%ほどと甘いですが、酸味もあり、甘酸っぱく濃厚な味わいとなっています。

キルトピンク(リンゴ長果34)の断面 果肉も赤いリンゴ

 長野県果樹試験場の技術情報には以下の通り記載されています。

『-----

 果心を除く果肉がピンク色に着色する。果肉の着色程度には、個体間差、台木間差、 地域間差及び年次間差が認められる。

 育成地(須坂市)における発芽期と開花期は、「ふじ」とほぼ同時期である。また、成熟期は 11 月上旬から中旬で、満開後成熟に要する日数は 192 日程度である。

 果実は円形で果実重は 350~400g、果皮は濃い紅色に着色し、糖度 15%程度、酸度 0.8g/100ml 程度で糖酸比は 20 程度であるが、食味は濃厚である。冷蔵条件で2ヵ月程度は貯蔵できる。

 果皮における斑点性の生理障害や梗あ、がくあ部に裂果が発生することがある。

-----』以上、抜粋。

こうあが裂果しているキルトピンク(リンゴ長果34)

 写真は梗あに裂果が発生した果実です。食味自体に問題はありませんが、傷みが早くなるので商品としての価値は下がってしまいます。

◆実際に食べてみたキルトピンクの食味

 撮影試食した「キルトピンク」は12月6日に届いで、果実重596~700gもある大きなものでした。果皮色は色が濃く、がくあ部まで完全に赤く着色していました。

キルトピンク(リンゴ長果34)のスライス断面 果肉も赤いリンゴ

 切ってみるとご覧の通り綺麗なピンク色で、わずかに蜜入りのような感じになっていました。正に名前の通り『切るとピンク』でした。ただ、4個届いたもののうち一つは果実の片側半分しか果肉の着色がありませんでした。

キルトピンク(リンゴ長果34) 果肉も赤いリンゴ キルトピンク(リンゴ長果34)の糖度 果肉も赤いリンゴ

 食べてみると、食感は硬めで、強い甘みとしっかりとした酸味、そこに極わずかですが赤ワインに感じるような渋みが相まって甘酸っぱくコクのある濃厚な味わいでした。

 計ってみた糖度は糖度16.2%ありました。

●キルトピンクの主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 「キルトピンク」は長野県オリジナル品種として長野県内に住所を有する者が長野県内においてのみ栽培可能となっています。まだ発表されたばかりの新しい品種なので栽培面積も少ないですが、今後徐々に県内には広まっていきそうです。ただ、赤肉のリンゴは一般的ではないので、シナノスイートなどのような一般受けする品種のようには増えないと思います。

◆キルトピンクの収穫時期と旬

 「キルトピンク」の成熟期は11月上旬から中旬となっていますが、収穫時期はその年の気候などによって前後し、11月中旬から下旬にかけて行われることが多いようです。

 貯蔵性は冷蔵で2か月ほどとなっているので、1月上旬位までは美味しく頂けそうです。ただ、生産量がまだ少なく、購入するなら12月中旬頃までに注文した方が良いかもしれません。

品種 11月 12月 1月 2月
キルトピンク                        

< 出 典 >

 ※ 「赤果肉りんご品種「リンゴ長果 34」の育成 」令和元年度 普及に移す農業技術 長野県農業試験場

 ※ 「果肉がピンク色で食味の良いリンゴ新品種「リンゴ長果34(キルトピンク)」」注目の農業技術 みんなの農業広場

 ※ 「出願番号35013 キルトピンク」 農林水産省品種登録データベース

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果肉が赤いリンゴの種類

 普通のリンゴは果肉が黄色から乳白色ですが、中まで赤いリンゴもあります。皮が赤く中まで赤いタイプと、皮は黄色くて中の果肉が赤いタイプなどがあります。