●炎舞(えんぶ)とは

 「炎舞(えんぶ)」は長野県の育種家、吉家一雄氏が「いろどり」に「ふじ」を交配し育成した果皮、果肉ともに赤い、やや晩成種のリンゴです。

◆炎舞(えんぶ)の来歴

炎舞(えんぶ) 果肉も赤いリンゴ

 「炎舞(えんぶ)」は長野県中野市で長年赤肉リンゴの育種研究をされている吉家一雄氏が自身で育成した赤肉系品種「いろどり(「紅玉」×「ピンクパール」)」に「ふじ」を交配し育成した赤肉系のリンゴで、2014(平成26)年に種苗法に基づく登録出願、2018(平成30)年に品種登録されています。

 同時期に品種登録された「なかの真紅」「ムーンルージュ」とは交配親が同じ兄弟品種です。吉家一雄氏は「いろどり」を皮切りに本種をはじめ「なかの真紅」「ムーンルージュ」、さらに「なかののきらめき」「冬彩華(とうさいか)」と現在育成された6品種が品種登録されており、2021年には「星のスパイス」も登録申請され、今後さらに育種を進めておられるようです。

◆炎舞(えんぶ)の特徴

 「炎舞」の果実は大きめで果形は球形、王冠は無いかあっても弱く、果皮色は濃い紫紅で全面に着色します。梗あ周辺にサビが発生しやすい。

炎舞(えんぶ) 果肉も赤いリンゴ

 大きな特徴である果肉の色は明るい黄色に、帯状に桃色に着色し、果実によっては写真のように蜜入りになることもあります。ただ、桃色の着色は栽培環境や樹の状態などによって着色度合いにムラがあるようで、果実によってはほとんど着色していない物もみられます。

 果肉の肉質はやや硬めで、甘味と共に適度な酸味もあります。

炎舞(えんぶ) 果肉も赤いリンゴの断面

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果実の大きさは大、果実の形は球形、果実の王冠の強弱は無又は弱、果実のがくの開閉は小、

 果皮のろう質の多少は無又は少、果面の粗滑はやや滑、果皮の地色は黄緑、果皮を被う色の面積は大、果皮を被う色は紫紅、果皮を被う色の濃淡は濃、果皮を被う色の型は不明瞭なしま模様を伴った全面着色、

 梗あ周辺のさびの量は中、果実側面のさびの量は無又は小、がくあ周辺のさびの量は無又は小、果点の数はやや少、果点の大きさは中、スカーフスキンの多少は少、

 果柄の長さは長、果柄の太さは中、梗あの深さは中、梗あの幅は中、がくあの深さは深、がくあの幅は中、

 果肉の硬さは中、果肉の色は帯桃、果実の甘味はやや高、果実の酸味は中、果実の蜜の多少は少、果心の形は円錐形、

 開花始期は中、収穫期は晩である。

 出願品種「炎舞」は、対照品種「紅の夢」と比較して、果点の大きさが中であること、果実の酸味が中であること等で区別性が認められる。

 対照品種「HFF60」と比較して、果実の形が球形であること、果皮を被う色の面積が大であること、収穫期が晩であること等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた炎舞(えんぶ)の食味

 撮影試食した「炎舞」は11月下旬に届いた長野県産8個で、B品混じりといった感じで果実の大きさも214~326gとバラツキがありました。

 切った断面は綺麗な桃色で蜜入りになっているものがありましたが、その1個以外は着色が少なく(下の写真)、極わずかしか着色していないものもありました。

炎舞(えんぶ) 果肉も赤いリンゴの断面

 食べてみると、蜜入りのものは甘味がとても強く、酸味もあるにはあるのですが甘味に負け、あまり感じない位になっていてとても美味しいリンゴでした。実はこの蜜入りの綺麗なリンゴは、梗あから肩にかけ、一面にサビが出ていて果実も小さく、外見的には一番悪いものでした。外見が良い物は果皮の着色がとても濃いものも、そうでないものも果肉の着色はわずかで、食味的には甘味と共に酸味もしっかりとあり、甘酸っぱいリンゴとしては美味しいリンゴでした。ただ、「炎舞」は味も大事ですが、何より”果肉も赤い”事がウリの品種なので、それを期待して購入し、ほんのり着色してるかも・・・という程度ではがっかりしてしまいますね。

炎舞(えんぶ)の糖度  果肉も赤いリンゴ

 今回取り寄せたものがたまたまこんな感じだっただけなのかもしれませんが、今時は果肉の糖度は光センサーで判別することができますが、果肉の着色具合は切ってみるまで判別できないので難しい問題だと思います。

 ちなみに、着色ありで蜜入りのリンゴの糖度はなんと18.8%もありました。そうでないものは13.5~15%でした。

●炎舞(えんぶ)の主な産地と旬

炎舞(えんぶ) 果肉も赤いリンゴ

◆主な産地と生産量

 「炎舞」の主な産地は長野県です。2018年に品種登録されたリンゴという事もあり、農林水産省にはまだ全国の生産量や栽培面積のデータが記載されていません。

 育成地でもある長野県では栽培が広がってきているようですが、まだ樹が若く収穫量は少なく、一部の果物店以外では産地に足を運ぶか直販サイトなどから取り寄せるしかありません。

◆炎舞(えんぶ)の収穫時期と旬

 「炎舞」の収穫時期は11月上旬頃から始まり、市場には12月頃まで出回ります。貯蔵性は冷蔵で60日ほどとなっています。

 食べ頃の旬は11月中旬から12月一杯です。

品種 10月 11月 12月 1月
炎舞(えんぶ)                        

< 出 典 >

 ※ 「登録番号26832 炎舞」 農林水産省品種登録データベース

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果肉が赤いリンゴの種類

 普通のリンゴは果肉が黄色から乳白色ですが、中まで赤いリンゴもあります。皮が赤く中まで赤いタイプと、皮は黄色くて中の果肉が赤いタイプなどがあります。