スカーレット ナスはブラジルの一部地域で栽培されているナス科の野菜で、ナス属の一種ではありますが、一般的なナス(Solanum melongena)とは別種のエチオピアナス(Solanum aethiopicum)に分類される西アフリカが原産の栽培品種です。奴隷貿易によってブラジルに伝わりましたが、西アフリカでも現在も「庭の卵(garden egg)」と呼ばれ栽培されています。
ブラジルでは”Jiló”と呼ばれていますが、この”Jiló”には写真のように丸い形のタイプと、縦長のタイプがあり、丸いタイプを「モロ レドンド」"Morro Redondo"といい、細長いタイプは「コンプリド ヴェルデ クラロ」"Comprido Verde Claro"と呼ばれています。
スカーレット ナス”Jiló”はいずれも、特にブラジル内陸部のミナスジェライス州やその地域の奴隷として連れてこられた人たちの子孫の伝統的な料理に用いられてきました。
スカーレット ナスは日本国内でも種子が入手でき、栽培もされているようですが、それは極わずかでしかありません。というのも、スカーレット ナスは苦みが持ち味で、日本人の口には合わないからだと思います。ブラジルの産地ではこの苦みが好まれているそうです。
ちなみに、エチオピアナスにはハロウィンに飾られるソラナム・パンプキンなど観賞用品種も含まれています。
◆スカーレット・ナスの特徴
スカーレット ナス”Jiló Morro Redondo”の果実は果重30~40gほどで果形は丸ナスと似た丸い形で巾着のように縦に溝ができるものが多い。
果皮色は通常未熟な緑色の状態で収穫されますが、木成りで熟すと黄色から濃いオレンジ色になるようです。ただ、ブラジルではそういった状態になったものは食用とはみなされず、濃い緑色のものが好まれているそうです。
中の果肉は白く、種子の入り方はナスと同じです。未熟な状態で収穫される事もあり、皮はやや硬く果肉も締りがあり、果実を指で挟んでも結構固く感じます。
●実際に食べてみたスカーレット・ナスの食味
スカーレット ナスを調理し、いくつかの料理を試してみました。
◆スカーレット・ナスとベーコンのソテー
スカーレット ナスのヘタを切り落とし、半分に切って、タマネギとベーコンと共にニンニクとローズマリーを効かせながらオリーブ油でソテーしたものです。
スカーレット ナスは硬そうだったのでじっくり時間をかけて炒めました。
食べてみると皮は思ったより歯切れがよく、果肉も柔らかく食感はまあまあでした。香りはニンニクなどを効かせたこともあり、あまりナス感は感じません。そして味ですが、特性通り苦みが結構あります。甘味はなく、コクのようなものも感じられはしますが・・・私には美味しいとは言えませんでした。
◆スカーレット・ナスのトマト煮
次に、トマト煮にしてみました。煮込むことで何かが変わるかもと・・
結果、トマトソースはとても美味しくなりましたが、スカーレット ナス自体は柔らかくはなったものの、やはりどうしても苦みが気になってしまいます。葉物のチコリなども苦みが強いですが、それとはまた違った苦みで、正直、私には活かし方がよく分かりません。
◆スカーレット・ナスのチップス
ということで、春の山菜の苦みと同じように油で揚げることでアクが抑えられるのではと、チップスにしてみました。
ポテトチップスのようなパリパリ感はありませんが、サクッとした食感で苦みもあることはありますが、この程度なら逆に付け合わせやあしらいに使えば料理のアクセントになり、美味しく食べられると思います。