●もちトウモロコシとは

◆糯(もち)種トウモロコシ (英)Waxy corn

 一般にトウモロコシといえば今日広く食べられている黄色や白色の粒で、柔らかく甘いイメージがあると思いますが、そういったタイプのトウモロコシは「スイートコーン(甘味種)」と呼ばれるています。そしてここで紹介する「もちトウモロコシ」と呼ばれているものはそういったものとは別物と考えてください。

 「もちトウモロコシ」は別名「糯(もち)種トウモロコシ」と呼ばれ、スイートコーンなどとは違い、アミロースをほとんど含まず、アミロペクチンと呼ばれるもち質デンプンを多く含むため、モチのような粘りを持つのが特徴となっています。

 青果用のものは実が柔らかい若い間に収穫されますが、熟したものは果粒表面がワックスをかけたようにテカテカしたつやが出るため英名は「Waxy corn(ワキシー・コーン)」と呼ばれています。

◆もちトウモロコシの起源

 トウモロコシの起源にはいくつかの説があるようですが、紀元前からすでに南北アメリカ大陸では食料として重要な存在となっていたとされており、そこからヨーロッパやアジアなど世界中に広まったとされています。そして、ここで紹介している「糯(もち)種トウモロコシ」は中国で発見された突然変異種とされています。

在来種のもちとうきび(糯唐黍)

 日本でも「スイートコーン(甘味種)」が普及する以前は各地で作られていたようですが、現在では在来種として個々の農家が少量栽培されるにすぎないくらいになって今っています。

◆もちトウモロコシのでん粉

 「もちトウモロコシ」にはアミロペクチンと呼ばれるもち質デンプンが多いことは先に紹介しましたが、このアミロペクチンからなるでん粉は一般的なコーンスターチとどう違うのでしょうか。

 一般的なコーンスターチは水で溶いたものを加熱したときに糊化するときの温度が高く、冷めるとぼてっと硬くなりやすいのに対し、この「糯種トウモロコシ」から作られるコーンスターチはアミロースを含まず100%アミロペクチンからなり、低い温度から糊化が始まり、冷めてからも硬くなりにくいという特徴があります。

●もちトウモロコシの種類

 「もちトウモロコシ」の在来種は今どきのスイートコーンに比べ収穫量が少ない上に大きさも小さく、甘みもほとんどないものが多いということからスイートコーンに作替えする農家が後を絶たない状況でした。近年になり、農作物の在来種を見直す動きが盛んになり、この「もちトウモロコシ」の食感もかえって新鮮に感じられるようになってきたようです。

 「もちトウモロコシ」には各地で栽培されてきたいくつかの品種があるほか、近年種苗メーカーから出された新しい品種も登場しています。

 グラスジェムコーンをはじめ、同じように色々な色の粒がある「フリント種(硬粒種)」と呼ばれるものもありますが、これらは「もちトウモロコシ」とは別種になります。

◆もちもち太郎パープルの特徴

もちトウモロコシ もちもち太郎パープル

 「もちもち太郎パープル」は大和農園が開発し2019年1月に全国発売されたばかりのた新品種です。『モチモチとした食感は残し、従来のもち種より糖度が高く、食感だけでなく食味も良いのが魅力です。また従来よりも収穫物が大きく、収量性も向上されている』のが特徴となっています。

もちトウモロコシ もちもち太郎パープルの断面

 「もちもち太郎パープル」の果粒は濃い紫色で果軸周囲も紫色です。また、果粒を包んでいる包皮も紫色が混じっているので、皮をむかずとも判別できます。穂重は皮付きで約300g程、穂長は約25cmとなっており、収穫目安は播種後約80~85日となっています。

 すべての粒が濃い紫色でつやがあり 、とても美しいコーンです。

◆もちもち太郎バイカラーの特徴

もちトウモロコシ もちもち太郎バイカラー

 「もちもち太郎バイカラー」も「もちもち太郎パープル」と同時に大和農園が開発し2019年1月に全国発売されたばかりのた新品種です。「もちトウモロコシ」としての食味はパープル同様に改善されています。

 「もちもち太郎バイカラー」は果粒が白色と紫色のバイカラー(混合)で、『紫粒の発生率は35%前後。穂重は皮付きで約320g、穂長は約28cm』となっています。

もちトウモロコシ もちもち太郎バイカラーの断面

 こちらはパープルとは違い、果軸や包皮に紫色はなく、皮をむかないと他のスイートコーンとあまり違いがなく、バイカラーということはわかりません。

◆その他のもちトウモロコシ

 在来種には果粒が熟すほど真っ黒になっていく「黒もちトウモロコシ」や、果粒が白い「白もちトウモロコシ」、黄粒の「黄もちトウモロコシ」の他、様々な色の果粒が混じったようなものまでいろいろあります。

在来種のもちとうきび(糯唐黍)

 種苗会社が販売している在来種の種は選抜されているので比較的大きさなど質が安定しているものが多いようですが、在来種として農家によって受け継がれてきたものはサイズが小さいものや粒の色がまちまちなど安定していないことが多いようです。写真の茶色い小さなもちとうきびは滋賀県東近江市で在来種を栽培されている「野菜と旅する」さんからご提供いただいたもので、九州の在来種だそうです。小さいですが粒がそろっていて見た目がよく、味も深みがありとても美味しいとうきびでした。

●もちトウモロコシの主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 在来種の「もちトウモロコシ」を現在も作り続けている地方は長野県から岐阜県にかけてや北海道などが知られています。

◆もちトウモロコシの収穫時期と旬

 「もちトウモロコシ」の収穫時期はスイートコーン(甘味種)と大きな違いはなく、中間地で7月下旬ごろから9月上旬ごろにかけてで、冷涼地では10月頃までとなっています。

 完熟させると果粒が硬くなりやすいので若取りが基本とされます。

品種 7月月 8月 9月 10月
もちトウモロコシ