ブラックジャック/3XBJ:来歴や特徴と産地や旬
●ブラックジャックとは
◆ブラックジャックの来歴
「ブラックジャック」はナント種苗株式会社が2013年に開発した黒皮の3倍体シードレススイカです。2014年頃から本格的に市場への出荷が始まり、これまでの種無しスイカに比べ栽培しやすく、しかも食味が一般的なスイカに劣らず美味しいことから話題になりました。
「ブラックジャック」が種無しになるのは、染色体の数が3組ある3倍体品種であるため、正常に減数分裂を行うことができず配偶子(生殖細胞)を作れないからです。
通常、スイカは2倍体ですが、ブラックジャックのような3倍体の種無しスイカは自身で子孫を残すことができません。こうした品種は、他の植物などから遺伝子を取り出し、改良しようとするスイカの 細胞の中に人為的に組み込む遺伝子組み換えを行うのではありません。
一般的な2倍体のスイカの子葉の芽に「コルヒチン」という植物由来のアルカロイドを処理するとその何割かは4倍体のスイカになるのですが、こうしてできた4倍体のスイカの種をまき、その雌花に2倍体のスイカの花粉を受粉させてできたスイカに入る種子が3倍体のスイカになります。
これまでも種無しスイカはこの方法でいくつか開発され作られてきましたが、その多くが着果率が低かったり、果肉に繊維が多く食味が今一つだったりとマイナスの面が強く、広く栽培されるまでには至らなかったのです。また、3倍体の品種開発をするためにはまず4倍体品種を作らなければならないため、その手間は大変なものだと思います。ナント種苗がそうした地道な品種改良の研究を続け、高い糖度で食味や外見がよく、しかも栽培しやすい種無しスイカとしてこの「ブラックジャック」が生み出されました。
◆ブラックジャックの特徴
「ブラックジャック」の果実は果重6~10kgで、果形は球形。
表皮の色は黒に近いほど濃く、縞模様がほとんどなく、あっても地色が濃いため分かりにくいです。
果肉は濃桃紅色で肉質はやや硬めで繊維が少なく、糖度も12~13度と安定しており食味が良いスイカとなっています。
そして何より種がほとんどなく、あってもシイナ(未熟種子)なので、そのまま食べても口に残らないのが最大の特徴です。
断面を観ても分かるように皮はやや厚く硬めで、割れにくいので輸送性も高いです。
存在感のある漆黒の外見と種がほとんどないため、ダイス状にカットしても角が崩れにくく見栄えがするスイカとなっています。
ナント種苗のカタログには以下の通り記載されています。
●草勢は3倍体品種としては大人しい(通常のタネあり品種よりは強い)。
●果皮色は漆黒色で縞の無い重量感ある外観。
●空洞果や変形が3倍体品種としては非常に少なく、抜群の秀品性。タンソ病にも強い。
●果重8~10kg。果形は玉張りの良い球形。
●シイナ(未熟種子)が少なく、カットした場合の見栄えも良好。
●糖度は12.5度前後でコク深い。果肉は濃桃紅色でやや硬めの肉質。
●従来の3倍体品種特有の繊維質が口の中で残らず、食感・口どけが極良。
●果皮が硬いため輸送性に優れ(荷痛みしにくい)、カット販売もしやすい。
◆実際に食べてみたブラックジャックの食味
撮影した「ブラックジャック」は8月24日に購入した滋賀県産のもので、大きさはやや小ぶりでした。外見が真っ黒で高級感が感じられます。
半分に切ってみると皮が厚く、あまり期待しない方が良いかもしれないと思ったのですが、食べてみるととても甘く、シャリ感もしっかりとあって美味しかったです。果肉の色もやや濃く、切り出して果肉だけ盛り付けると見栄えが良かったです。
完全な種無しではなく、小さなシイナ(未熟種子)が入っていましたが、そのまま食べてもほとんど気になりませんでした。計った糖度は14度近くありました。
●ブラックジャックの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「ブラックジャック」は熊本県、千葉県、山形県などで広く栽培出荷されているほか、各地のスイカ産地でも作られています。
種子は一般に販売されているので、家庭菜園で作ることも可能です。
◆ブラックジャックの収穫時期と旬
「ブラックジャック」はシードレス品種としては低温着果性がよく、ハウス栽培であれば4月下旬ごろから収穫が始められるようです。トンネル栽培であれば6月から8月中旬頃までが収穫時期となります。
品種 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ブラックジャック |
< 出 典 >
※ 「ブラックジャックがシードレスの標準を変える。壁を破る。」ナント種苗株式会社 総合カタログ2022 p.18-20