南月（なんげつ） ：来歴や特徴と産地や旬

●南月とは

　「南月」は長野県が「越後」に「新水」を交配し育成した果実の形が円形で、果重400g程で育成地において９月上中旬に成熟する青ナシで、同じ時に同じ交配親から育成された赤ナシの「南水」とは姉妹品種となります。

◆南月の来歴

　「南月」は長野県農業試験場下伊那分場（現長野県南信農業試験場、長野県下伊那郡高森町）において黒斑病や黒星病に耐病性をもつ大玉の赤ナシ「越後」に、甘味と酸味のバランスのとれた味の良いやや小玉の赤ナシ「新水」を交配し、得られた実生から選抜育成された、果実の形が円形で、果重400g程で育成地において９月上中旬に成熟する青ナシです。育成の過程は下記の通り。

1973（昭和48）年　長野県農業試験場下伊那分場において「越後」に「新水」の花粉を交配。種子を得る。

1974（昭和49）年　種子を播種。

1983（昭和58）年　選抜。以後、高接ぎで増殖を行いながら特性の調査・確認をすすめる。

1994（平成6）年　育成を完了。

1995（平成7）年　種苗法に基づく登録出願、

1997（平成8）年　品種登録が完了。

　同じ時に同じ交配親から選抜育成され、本種よりも7年も早く1990年（平成2年）に品種登録された「南水南水」とは姉妹品種になります。ただ、交配親は同じでも「南水」は赤ナシ品種で、「南月」は青ナシ品種です。

　デビューしてからもう随分立っている品種ですが生産者からはあまり人気がないようで、市場ではほとんど見かけません。

◆南月の特徴

　「南月」の果実は果実重は350～400gで果形は円形とはなっていますが、ばらつきがあるようで、有てい果が混在するという特性通り、今回入手したものも無いものとあるものがありました。また、サビが発生しやすい品種となっています。

　果肉は糖度が14％ほどになり酸味が少なく甘いのですが食感は硬めとなっています。

　農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

　果実の形は円、果形指数及び梗あの深さは中、広さはやや広、ていあの深さはやや浅、広さはやや広、有てい果の有無は混在、

　果実の大きさは400g程度でやや大、

　果皮の色は黄緑、果点の大きさはやや小、密度はやや疎、果面のさびはやや多、

　果梗の長さは短、肉梗の有無は無、果芯の形は短紡錘、大きさは小、

　果肉の色は雪白、硬さはやや軟、粗密はやや粗、切り口の褐変は軽、甘味はやや高、酸味は弱、香気は少、果汁の多少はやや多、

　種子の形は卵、大きさは中である。

　成熟期はやや早で育成地において９月上中旬、みつ症の発生は無、貯蔵性はやや短である。

　「二十世紀」と比較して、新梢の色が茶褐であること、果点の密度が疎いこと、果面のさびが多いこと、肉梗が無いこと等で、「翆星」と比較して、花弁の数が少ないこと、やくの色が淡いこと、有てい果が混在すること、酸味が弱いこと等で、「幸水」と比較して、有てい果が混在すること、果皮の色が黄緑であること等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた南月の食味

　撮影した「南月」は鳥取県産で、果実重350ｇほどでした。

　入手した南月はいずれもサビがあまりなく、果面は比較的綺麗でした。りんごかと思うような腰だ高の物と、背が低い扁円形のものがあり形にばらつきがみられます。

　食べた食感はやや硬めではありますが硬すぎるというほどではなく、シャキシャキ感があり、果汁感もあり、甘味は特に強いという訳ではありませんが、酸味が無いので甘く感じ、梨としてはまあまあといった味わいでした。

●南月の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　「南月」は長野県で育成された品種なので、主な産地は長野県だと思いますが、令和２年産特産果樹生産動態等調査には記録がなく実際の栽培面積や収穫量は不明です。

　市場にはほとんど出荷されていないと思われ、梨狩りを営業している観光農園や個々の農園で少量栽培され、直販や直売所で販売されている程度のようです。

◆南月の収穫時期と旬

　南月は育成地の長野県において９月上中旬に成熟するとあり、収穫時期は産地によって多少幅があると思いますが9月上旬から下旬にかけてでしょう。

　栽培数が非常に少なく、出回る数がわずかなので個々の農園で予約購入するか見かけたら即買いすることをお勧めします。

品種	8月			9月			10月			11月
南月

＜ 出　典 ＞

　※　「南信農業試験場がこれまでに育成した品種」長野県ホームページ

　※　「ニホンナシ「南水」の生い立ち」試験場だより 令和元年8月号（515号）南信農業試験場

　※　「登録番号5866　南月」　農林水産省品種登録データベース