二十世紀梨の来歴や特徴と産地と旬
■二十世紀梨の来歴や特徴
昭和50年代頃までは梨と言えば「二十世紀」梨か赤梨品種の「長十郎」といわれ、「二十世紀」梨は人気を二分する青梨の代表品種でした。
現在もなおその独特の食感や食味は人気があり、本種を親としてうまれた「菊水」や「八雲」などの品種もあります。
●二十世紀梨の来歴
二十世紀梨といえば鳥取がすぐに思い浮かび、そこで生まれたかのようなイメージがあるかもしれませんが、実は二十世紀梨が発見されたのは千葉県松戸とのこと。
発祥は明治21年に梨園の経営者の息子、松戸覚之助が、親戚のゴミ捨て場(農園の果実や苗などもここに捨てられていたようです)で苗を発見し10年かけて栽培、実った果実がこれまにない青梨だったのです。彼は「新太白」と名付けました。その後、明治37年に東京興農園主の渡瀬寅二郎と東大助教授の池田伴親氏により、20世紀における代表的品種になるであろうとの観測と願望を込めて新たに「二十世紀」と命名されたそうです。
鳥取県へは同じく明治三十七年、北脇永治さんが千葉県松戸市の松戸覚之助が経営する「錦果園」から、苗木を購入し、それを自分の果樹園に植えたのが始まりだそうですです。当時植えられた親木は100年以上たった今もなお3本残っており、毎年敬老の日の贈答用に収穫されています。
●二十世紀梨の果実の特徴
二十世紀梨は果形はきれいな球形で果皮色は淡緑黄色から熟すにしたがって黄色へと変わっていきます。
果皮表面の果点は赤梨に多くみられる大きなコルク質のではなく、リンゴと似ており果皮も薄いです。
果肉は白く、肉質はシャキシャキとして柔らかく、果汁が梨の中でも最も多く含まれています。糖度は11度前後で高い方ではなく、果芯近くは酸味があります。
◆実際に食べてみた二十世紀梨の食味
二十世紀梨の果肉はシャキシャキと歯触りも軽く、何と言っても食べた時の果汁の多さが持ち味で、甘味自体は特に強くはないのですが、適度な酸味とあいまってさっぱりとした味わいの果汁が口いっぱいに広がります。
■おさ二十世紀やゴールド二十世紀、おさゴールド
「おさ二十世紀」「ゴールド二十世紀」「おさゴールド」は栽培上の問題解決上発見されたあるいは改良された「二十世紀」で、果実自体の特徴は同じとされています。
●おさ二十世紀
「おさ二十世紀」梨は、1978年に鳥取県東伯郡泊村において長昭信氏が発見した自家結実性の高い「二十世紀」で、1979年に品種登録もされています。
「二十世紀」との違いは、自家結実性がなく他の品種の花粉を受粉させなければならない「二十世紀」に対し、その必要がなく安定して自家結実するという事だけで、果実そのものの特徴は全く同じです。
●ゴールド二十世紀
「ゴールド二十世紀」は「二十世紀」に放射線を照射することにより突然変異を誘発させ、「二十世紀」と同じ果実特性をしていながら黒斑病に抵抗性をもたせた変異種です。詳しくは「ゴールド二十世紀」のページへ
●おさゴールド
「おさゴールド」は1997年に鳥取県園芸試験場と農林水産省農業生物資源研究所が共同開発した品種で、放射線照射による「おさ二十世紀」の枝変わりから選抜、育成されたもので、「二十世紀」に対し「自家結実性」の面と「黒斑病に対する抵抗性」のどちらも持たせた最強の「二十世紀」です。これも果実の特徴自体は「二十世紀」そのものです。
■二十世紀梨の主な産地は
●全国の二十世紀栽培面積ランキング
これは農林水産省がまとめた平成27年産二十世紀の全国の栽培面積です。
最も広く栽培しているのは鳥取県で全国の約3割を占めていますが、その他にも長野県や福島県、山口県など各地で栽培されていることが分かります。
かつては二十世紀か長十郎かとシェアを二分する時期もあったようですが、今では幸水や豊水が主流となり、ゴールド二十世紀と合わせても梨全体の7.6%ほどとなっています。
●長野県のサンセーキ梨
二十世紀梨は通常、傷や病害虫から実を守るために、途中で果実に袋を被せて育てますが、この袋を被せず太陽日に十分当てることで糖度を上げ、より甘い梨にしたものを「サンセーキ梨としてJA長野が商標登録し、出荷しています。