菊水(きくすい):来歴や特徴と産地や旬
●菊水とは
◆黒斑病に強い、二十世紀の後代として誕生
「菊水(きくすい)」は1927(昭和2)年、神奈川県立農事試験所(現農業総合研究所)で当時場長だった菊池秋雄氏が育成した青梨品種です。
当時すでに「二十世紀梨」は市場に広く出回っていたようですが、黒斑病に弱いという欠点があり、この病気に対する抵抗性を持つ、二十世紀に替わる品種を目指し、強い抵抗性を持つ「太白(たいはく)」に、「二十世紀」の交配種を掛け合わせてできた実生から選抜育成されました。
「菊水」は甘味酸味がしっかりとあり食味が良く、肉質も良かったので期待を背負いますが、一本の樹から穫れる収量が二十世紀より少なく、果形が良くないものが多かったり、さらに収穫後、果梗が早く黒くなり日もちが悪いことから、その後市場から姿を消していったようです。
◆幸水をはじめ様々な品種に受け継がれている
「菊水」はその後様々な交配親として用いられ、優れた品種を生み出しています。中でも「幸水」は現在市場の約4割を占めるまでになっており、それに続く「豊水」は「幸水」を親としています。つまりは「菊水」の孫にあたる品種というわけです。
それ以外にも「菊水」が親となっている品種には「秀玉」や「新水」があり「新水」を親とする、いわゆる孫にあたる品種「なつひかり」や「南水」が生まれています。
◆菊水(きくすい)の特徴
「菊水」の果実は高さに対して直径が大きい扁球形で、果皮表面はなめらかで、果皮色は黄緑色で全体に果点が散らばっています。
果肉は「二十世紀」に似た肉質でやや柔らかく、果汁を多く含み、強い甘みと共にしっかりとした酸味も持っていて食味はとてもいい梨とされています。
先にも紹介したように、樹に成るのは写真のような外観がいい果実ばかりではなく、収量としての歩留まりはあまりよくないようです。
また、貯蔵性が低く、果梗が早く黒くなってしまうことと、味的にも早くぼけやすいとされています。
◆実際に食べてみた菊水(きくすい)の食味
今回入手したものは国立京都大学の農場で作られたものです。本種を育成した菊池秋雄氏はのちに京都大学(当時の京都帝国大学)の博士となり、 第3代農場長をされていたこともあり、様々な果樹が保存されているそうです。
果実は400gほどの大きさで、きれいな扁球形で、果皮の色もみずみずしい黄緑色でした。
食べてみると、サクッと軽やかな歯切れのいい食感で、果汁もたっぷりと含んでいました。そして甘みと共のいい感じの酸味がバランスよく感じられとても美味しい梨でした。今日主流となっている品種ほど甘味は強くありませんが、いくつもの品種の交配親になっているだけの実力を感じさせてくれました。
●菊水(きくすい)の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「菊水」は後代の「幸水」や「豊水」などに転換が進み、現在栽培しているところはごくわずかとなっています。農林水産省が行っている特産果樹生産動向調査によれば、2015(平成27)年産の栽培面積は大分県18.4ha、愛媛県2.1ha、千葉県1.8ha、神奈川県1.5haのみとなっています。
それ以外のところでも各地の梨産地では個々の農園で少量作っているところもあるようです。
◆菊水(きくすい)の収穫時期と旬
「菊水」の収穫時期は8月下旬ごろから9月中旬ごろまでで、生産者が少ないこともあり、市場に出回る期間はかなり短く、その量もごくわずかです。
品種 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | ||||||||
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菊水梨 |