ひめこなつ ：来歴や特徴と産地や旬

●ひめこなつとは

　「ひめこなつ」は果樹研究所が従来の早生品種よりさらに早く収穫できる極早生品種を育成する目的で、育成系統「182-3」の自然交雑実生から選抜育成された、果実が小さいが極早生で、黄肉の食味良好な桃品種です。

◆ひめこなつの来歴

　「ひめこなつ」は果樹研究所が育成した早生系統「182-3」の自然交雑実生から選抜育成された品種で、2007年に種苗法に基づき登録出願、2009年に品種登録されました。育成の過程か下記のとおりです。

1989（平成元）年　早生系統「182-3」の自然交雑種子を胚培養し、実生を獲得。

1992（平成４）年　個体番号「246-9」を付して定植。

1995（平成７）年　一次選抜。

2001（平成13）年　「モモ筑波118号」の系統名で、モモ(生食用)第8回系統適応性検定試験に供試。

2007（平成19）年　平成18年度落葉果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会において新品種にふさわしいと認められ、種苗法に基づき登録出願。

2009（平成21）年　品種登録完了。

　「ひめこなつ」の系統図は下の図の通り。花粉親は不明で、「182-3」の交配親は「70-10」と「65-20」で、「65-20」は「高陽白桃」と「さおとめ」の交配で得られた系統で、「ちよひめ」の兄弟系統となっています。

　「さおとめ」の交配親である「Robin」とはアメリカから導入した早生品種だそうです。

◆ひめこなつの特徴

　「ひめこなつ」の果形は扁円形で、果面の裂果はなく、平均果実重が120g前後と小さい桃です。撮影したものは75～100ｇと、本種でも小さい物でした。

　果皮の地色は黄色で、果面全体に縞状に紅色の着色が覆います。

　果肉は溶質で肉質は中となっており果汁は多めです。核が小さく、粘核で核割れの発生が多いようです。糖度は12%を超え、酸味は少なく、渋味の発生も少なく、食味は極早生としては良好となっています。

　農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

　果実の大きさは小、果実の形は扁円形、果頂部の形は広浅凹、果実の対称性は対称、縫合線の強弱は弱、梗あの幅は狭、

　果実の地色は黄、果実の着色の型は条状、果実の着色面積は大、果実の毛じの粗密はやや粗、果皮の付着性は弱、

　果肉の硬さは軟、果肉の地色は黄、果肉のアントシアニン着色の強弱は無又は極弱、核の周辺のアントシアニン着色の強弱は無又は極弱、

　果肉の肉質は繊維質、果実の甘味は中、

　核の大きさは小、核の横面の形は楕円形、核の褐色の濃淡は極淡、核の表面の紋様は点・条、核割れの多少は多、核と果肉の粘離の強弱は強、収穫期は極早である。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみたひめこなつの食味

　撮影した「ひめこなつ」は6月上旬に直売所で購入したもので、サイズが小さなものでした。

　果皮はやや濃く着色しているものから薄いものまでありましたが、地色が黄色く、見た目は美味しそうです。

　食べてみると、甘さは控えめですが、酸味が少なくジューシーで、あっさりとした味わいでした。計った糖度は8～11.7％でした。

　今回のものはサイズが小さく、適切な摘果が行われてなかったのかもしれません。

●ひめこなつの主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　ひめこなつは市場に出荷するほどの産地は見当たりませんでした。現在のところ、個々の農園で少量栽培し、直売所などで販売されている程度だと思われます。

　苗木は一般に販売され、どこでも栽培は可能となっています。

◆ひめこなつの収穫時期と旬

　ひめこなつは露地栽培で早いところでは5月下旬から、東北あたりでも７月中旬に収穫できる極早生種となっています。

　

品種	5月			6月			7月			8月
ひめこなつ

＜ 出　典 ＞

　※　「モモの新品種'ひめこなつ'」果樹研究所研究報告13号 p. 7-15 2012年3月　農業技術研究機構果樹研究所

　※　「極早生で食味良好な黄肉モモ新品種「ひめこなつ」を育成」プレスリリース 2007年10月 3日　果樹研究所

　※　「ひめこなつ」育成品種紹介　農研機構

　※　「登録番号17787　ひめこなつ」　農林水産省品種登録データベース