●人丸(ひとまる)とは
◆人丸の来歴
「人丸(ひとまる)」は千葉県成田市の吉岡次男氏が自身の「筑波」と「丹沢」の混植園で発見した偶発実生を育成した果皮が光沢のある赤褐色をした、やや早生の品種です。1983(昭和58)年に種苗法に基づく登録出願、1985(昭和60)年に品種登録されています。既に登録から35年以上経っている古い品種で、 1997(平成9)年7月8日に育成者権は消滅しています。
名称の「人丸」は当時あった地名に因んでつけられていますが、現在はもう地図からは無くなり、バスの停留所名(野毛平工業団地入口)が残る?のみとなっています。
育成者の吉岡次男氏は千葉県成田市で昭和30年頃から千葉県農業改良普及員として栗栽培の普及に活躍された方で、自宅の周囲を全て栗畑にし、既存品種の比較観察や新たな品種の育成に取り組まれ、本種が生まれたそうです。
風味、味ともにとても良い品種なのですが現在では生産者が少なく生産量、流通数ともにとても少ない希少品種となっています。
◆人丸の特徴
人丸の果実の大きさは中位で「丹沢」と同程度となっており、現在の主要品種の中ではやや小さめです。形に大きな特徴はみられませんが、果皮が赤褐色で光沢があるのが特徴です。
また、果肉は黄色味があり、粉質で豊かな香りと甘味の強さが特徴となっています。
撮影した人丸は3Lサイズの大きいもので、果重は平均26gほどでした。次の写真は鬼皮をむいた状態です。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の大きさは中で、「丹沢」と同程度、側果側面は帯円三角、側果横面は尖円、中果側面・中果横面は三角、中果底面はく形である。
果皮は赤褐色で光沢があり、座の大きさは中、接線の形は直である。
果肉は黄色で、粉質、甘味は多い。
成熟期は育成地(千葉県成田市)において9月中旬で、「丹沢」の終り頃から「筑波」の5日前頃までである。
きゅう梗の離脱は難、渋皮の剥皮は難、クリタマバチ耐虫性は中で「筑波」と同程度である。
「丹沢」と比較して、果皮が赤褐色であること、成熟期が遅いこと等で、「筑波」と比較して、果実が小さいこと、成熟期が早いこと等で、「伊吹」、「銀鈴」及び「国見」と比較して、果皮が赤褐色であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた人丸の食味
撮影試食した人丸は笠間市 かねこ農園から届いた3Lサイズ約1kgです。
生のまま中の身をかじってみるとほんのり甘く、栗らしい香りが鼻から抜ける感じで、加熱調理した時の期待感が膨らみました。今回は焼き栗とかねこ農園さんから送られてきたレシピにあった揚げ栗にしてみました。
焼き栗は風味は良かったのですが、渋皮がはがれにくくスプーンですくって食べる感じになりました。想像したほどホクホク感はなく、甘味も期待したほどではありませんでした。
揚げ栗は渋皮付きの状態で低い温度でじっくりと揚げ、仕上げにかるく塩を振って頂くのですが、渋皮が薄くカリッとした食感になり、中の身がほくほくしていて、塩によって甘味が引き立ち、風味も良くとても美味しく仕上がりました。
●人丸の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
人丸は現在栽培者が少なく、希少な品種となっています。農林水産省がまとめている令和元年産特産果樹生産動態等調査で見ると、人丸の栽培面積は全国で5.4haしか記録がなく、これは栗全体の0.05%ほどしかありません。
主な産地は茨城県で3.8ha、次いで兵庫県の1.6haのみとなっています。
◆人丸の収穫時期と旬
人丸はやや早生の品種で、収穫時期は9月中旬~9月下旬となっています。
品種 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||||
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人丸 |
< 出 典 >
※ 「成田の栗 一大産地を目指した先駆者」広報なりた 成田歴史玉手箱52回
※ 「登録番号833 人丸」 農林水産省品種登録データベース
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