●サマーブラックとは

 サマーブラックは山梨県果樹試験場において「巨峰」に「トムソン・シードレス」を交配して育成された、早生種で果皮の色が紫黒、果粒が円で中粒で3倍体品種の種無しぶどうです。

 あまり見かけない品種で、主に観光農園や直売所向けとなっていますが、ぶどう通の中には強いファンも多く、種無しなので噛んでも種子を噛むことは無く、皮も渋みはありますが皮ごと食べられなくはないといった感じです。

◆サマーブラックの来歴

 サマーブラックは山梨県果樹試験場が無核の生食醸造兼用種を目標に生み出し、2000年に品種登録されたブドウ品種です。育成の過程は下記のとおりです。

サマーブラック ぶどう

1968年 山梨県果樹試験場において果皮が紫黒色の大粒種「巨峰」(四倍体品種)に二倍体で果皮色が黄緑色の無核品種「トムソン・シードレス」を交配。

1969(昭和43)年 得られた種子を播種。11個体の実生を養生。

1970(昭和44)年 個体番号「8255」として万力山圃場に定植。

1992(平成4)年 系統名「山梨35号」とし、第8回系統適応性検定試験に供試。

1997(平成9)年 平成8年度落葉果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会において新品種として認められ、「サマーブラック」と命名、「ぶどう農林16号」として登録されると共に、種苗法に基づく登録出願。

2000(平成12)年 品種登録完了。

なお、育成者権は2013(平成25)年12月に消滅しています。

◆サマーブラックの特徴

 サマーブラックは生食醸造兼用種で、種子無しブドウです。

 自然栽培では果粒が3g程度と小さいのですが、ジベレリン処理を施し、摘粒を50粒程度にすることで果粒7~10g程、果房重400~450gになります。撮影したサマーブラックは山梨県のアルガベリーファームさんから仕入れたもので、一房あたり650~700gありました。

サマーブラック ぶどう

 果皮は紫黒色で、着色しやすく、袋をかけたままでもの着色するようです。

ぶどう サマーブラックの果粒サイズ

 果肉は塊状と崩壊性の中間で、糖度は20%以上になり、酸度は0.5%程度となっています。

 果梗は太くしっかりとしていますが、やや脱粒が目立つようです。

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果房の形は有岐円筒、大きさは大、長さ及び着粒の密度は中、果梗の太さは太、長さは中、色は黄緑である。

 果粒の形は円、大きさは中、果皮の色は青黒又は紫黒、果粉の多少は多、果皮の厚さは厚、果皮と果肉の分離性はやや難、

 果肉の色は不着色、肉質は中間、甘味は高、酸味は中、渋味は無~極少、香気はフォクシー、果汁の多少は多、種子の有無は無である。

 発芽期及び開花期は中、成熟期は早で育成地においては8月中旬である。

 果実の着色の難易は散光着色、花振いの多少は多、無核果粒の混入は極多、裂果の多少は無~極少、

 果梗の強さは中、果梗と果粒の分離は易である。

 「巨峰」と比較して着粒が密であること、種子が無いこと等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみたサマーブラックの食味

 撮影試食したサマーブラックは山梨県のアルガベリーファームさんから仕入れたもので、一房あたり650~700gのものが3房です。梱包もとても丁寧で、3房のブドウがフカフカのクッションに包まれた状態で届きました。

ぶどう サマーブラックの果粒断面

 『朝採れ完熟サマーブラック』と表記されているだけに、届いたぶどうはしっかりと黒に近いくらい着色し、表面は果粉で覆われ、密に付いた果粒はどれもしっかりと果梗に付いており、脱粒しそうなものは全くありません。

サマーブラック ぶどう

 食べてみると、皮はやや厚く、巨峰と同じかそれよりも厚いかな?といほどで、果肉と結着していて手で綺麗に剥けるのは果梗側から3分の1くらいまででした。

ぶどう サマーブラックの糖度

 果肉は巨峰よりも歯切れがよく、正に巨峰と崩壊性の欧州系を足して割ったような感じです。

 そして甘いです。酸味もあるのですが、甘味がとても強く、酸味が隠れてしまう感じです。計った糖度は20~21.1%でした。

 皮は渋みが結構あるのですが、この甘い果肉と一緒に食べるとそこまで気にはならず、むしろ味に深みが出る感じでとても美味しいです。とはいうものの、子供や、皮を食べ慣れない人には皮をむいて、または皮は出して食べることをお勧めします。


垣見ぶどう園のサマーブラック ぶどう

 次に試食したのは、滋賀県近江八幡市にある大中垣見ぶどう園さんのサマーブラック。当園ではサマーブラックの木を植えてからまだ浅く、今年が初結果とのことで販売はされていませんでしたが、ご厚意により一房分けてくださいました。

サマーブラック ぶどう サマーブラック ぶどう

 こちらのサマーブラックは木が若いこともあって房はまだ小さい物でしたが、ブドウは完全に熟していて、皮ごと食べても渋みはなく、皮もほとんど気にならないくらいでした。そして、驚くほど甘く、慌てて糖度を計ってみると、なんと26度を超え、高い粒では27.6%もありました。

 さすがにここまで完熟した状態では物流に乗せることは難しいので、直売所でしか味わうことはできないと思いますが、サマーブラックのポテンシャルの高さをうかがい知ることとなりました。

●サマーブラックの主な産地と旬

サマーブラック ぶどう

◆主な産地と生産量

 サマーブラックは各地のブドウ産地で栽培されていますが、その数は少なく、農林水産省の特産果樹生産動態等調査には記録がありませんでした。個々の農園で少量栽培され、直売や直売所で販売されている程度となっています。

◆サマーブラックの収穫時期と旬

 サマーブラックは山梨以西で8月上中旬が熟期となっており、収穫も8月上旬から中旬にかけてとなります。

 新潟県など北寄りの産地では8月中旬から下旬にかけてとなっています。

品種 7月 8月 9月 10月
サマーブラック                        

< 出 典 >

 ※ 「サマーブラック」 過去に登録した品種 山梨県果樹試験場ホームページ

 ※ 「ブドウ新品種 ’サマーブラック’ 」山梨県果樹試験場研究報告 10号 p.1-9 2000年3月

 ※ 「登録番号8559 サマーブラック」 農林水産省品種登録データベース

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サマーブラックの交配親となったブドウ品種