●あづましずくとは

 「あづましずく」は福島県が17年の歳月をかけ「ブラックオリンピア」に四倍体化した「ヒムロッド・シードレス」を交配し、得られた実生から選抜育成した、大粒で糖度が高い極早生品種の果皮が黒いぶどうである。

◆あづましずくの来歴

あづましずく ぶどう

 福島県では「巨峰」などの大粒種を栽培しても他の産地よりも出荷が遅くなることや収量性で勝てず、この地でも他の主要産地に負けない大粒で高品質の種無しブドウが求められるようになった。これを受け、1987年から福島県果樹試験場(現:福島県農業総合センター果樹研究所)で育種の取り組みが始められ、結果、完全無核で糖度が高く大粒になる黒皮種ぶどう「あづましずく」を生み出し2004年に品種登録された。

 育成の過程は下記の通り。

 1987(昭和63)年 ヒムロッド・シードレスの組織培養苗条から四倍体ヒムロッドシードレスを得る

 1992(平成4)年 「ブラックオリンピア」に四倍体「ヒムロッド・シードレス」を交配。種子を得る。

 1993(平成5)年 播種し、育苗、40個体の実生を養生

 1994(平成6)年 定植。枝番号1-01~1-40を付与

 1996(平成8)年 26個体が結実 一次選抜実施

 1997~1998(平成10)年 完全無核の5個体と種子痕跡を示した5個体に対して満開期ジベレリン処理を行いテスト

 1999(平成11)年 個体番号1-16を選抜、「ブドウ福島 1号」の系統番号を付与

 2000(平成12)年 現地試験に供試

 2001(平成13)年 種苗法に基づき登録出願・公表

 2004(平成16)年 品種登録完了

 「あづましずく」という名称は、育成地である福島県北地方にそびえる「吾妻連峰」の雄大さと美しい自然の恵みの結晶をイメージさせる名前として公募で決められた。

◆あづましずくの特徴

 あづましずくの果房は自然状態では複果房が発達しやすく複雑な形となることが多いが、整形することで綺麗な円錐形にまとまる。

あづましずく ぶどう

 果粒の大きさは自然状態では 6~9g で球形だが、ジベレリン処理することにより11~15gと大粒になり、果粒の間隔を蜜にするとしずく型になる。果皮は青黒又は紫黒に着色し果粉も多い。果皮はやや厚みがあり、皮ごと食べることはできないが、果肉とははがれやすい。

 果肉は巨峰より柔らかめで、糖度は17〜19%と高く、それに対して酸味が少なめなので甘さが強く感じられ果汁も多い。

あづましずく ぶどう

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果房の形は複形、大きさは大、長さ及び着粒の粗密は中、果梗の太さは太、長さは短、色は黄緑である。

 果粒の形は円、大きさは極大、果皮の色は青黒又は紫黒、果粉の多少は多、果皮の厚さは厚、果皮と果肉の分離性は易、

 果肉の色は不着色、肉質は中間、甘味は中、酸味は少、渋味は無~極少、香気はフォクシー、果汁の多少は多、種子の有無は無である。

 発芽期は早、開花期は中、成熟期は極早で 育成地においては8月上旬である。

 果実の着色の難易は中間、花振いの多少は中、裂果の多少は無~極少、果梗の強さ及び果梗と果粒の分離は中である。

 「巨峰」と比較して、果粒の形が円であること、種子が無いこと等で、「高尾」と比較して、成葉葉身の形が五角形であること、果房が短いこと等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみたあづましずくの食味

 撮影試食した「あづまましずく」は8月末に取り寄せた福島県産4房(2kg)/csで、果皮の色は濃い紫黒色に着色したものから赤紫色のものまでありました。

あづましずく ぶどう

 どれも果粒がぎゅっと詰まった円錐形で果粉もしっかりと付いています。果粒の形は綺麗なしずく型でした。

 試しに指先で皮を剥いてみると、少し皮に果肉が付いていく感じで仕上がりは綺麗ではありませんが剥く事は出来ました。

 皮付きのまま食べてみると、皮は比較的簡単に口から出すことはできました。食味は甘みと酸味のバランスが良く、鼻から抜ける甘いフォクシー香が強めでとても美味しいです。計った糖度は17%前後でした。今回届いたものに関しては、着色が薄い果粒よりも、しっかりと黒く着色している粒の方が粒が小さめながら糖度は高い傾向がありました。

あづましずく ぶどう

●あづましずくの主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 あづましずくは福島県が育成したオリジナル品種という事で主な産地は福島県です。ただ、栽培地域は福島県に限定されてはおらず、苗木も一般に広く販売されており、ぶどうが栽培できる地域であればどこでも生産することは可能です。

 特産果樹生産動態等調査によると、2020(令和2)年の時点では福島県が13.9ha、そして青森県でも1.4haの記載があります。2022(令和4)年になると福島県が8.4haに減り、青森県は記録が無くなり、代わりに埼玉県が1.1haとなっています。

 あづましずくは福島県でも色濃く着色し、高品質のぶどうが作れることから、東北地方の山形県や秋田県、岩手県などでも栽培する農園が現れているようです。

あづましずく ぶどう

◆あづましずくの収穫時期と旬

 あづましずくの収穫時期は福島県では8月上旬から下旬にかけてとなります

 最盛期の旬は8月の上旬から中旬にかけて。

品種 7月 8月 9月 10月
あづましずく                        

< 出 典 >

 ※ 四倍体無核ブドウ新品種‘あづましずく’ 福島県農業総合センター研究報告 1号 p. 11-20 2009年3月

 ※ ふくしま味と技「あづましずく」 ふくしまファンクラブ会報第13号 2010( 平成22)年発行 福島県観光交流課

 ※ 「登録番号 11590 あづましずく」 農林水産省品種登録データベース

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