甘ひびき：来歴や特徴と産地と旬

●甘ひびきとは

　「甘ひびき」は「愛甘水｣の自然交雑実生から育成された、大果で甘味が強い極早生の赤梨品種です。

◆甘ひびきの来歴

　「甘ひびき」は愛知県安城市の猪飼孝志氏が「愛甘水｣の自然交雑実生から育成し、2009（平成21）年に種苗法に基づく登録出願、翌2010（平成22）年に品種登録された赤梨品種です。

　当初はJAあいち中央梨生産部会員だけに栽培許諾を限定し産地化がすすめられましたが、2015（平成27）年の秋以降、一般の種苗業者による苗木の販売が開始され、現在はどこでも栽培することが可能となっています。

　それまでの間「甘ひびき」はJAあいち中央梨生産部会員で栽培出荷されブランド化がすすめられてきました。その効果もあって、大きな果実と甘い食味などから直売所などでも高い人気を博し、並んでも買えないというほどでした。

　栽培エリアの限定が解除されるやいなや隣の岐阜県をはじめ関東でも茨城県や千葉県など各地に広まり、すでに出荷も始まっています。今後更に産地は広がっていくと思われます。

◆甘ひびきの特徴

　「甘ひびき」の果実は｢幸水」より大きく、安城市では大玉になる梨としてブランド化がすすめられ、一玉600ｇほどで、大きいものだと1Kgを超えるとあります。ただ、通常の栽培では300～400gのものが多いようです。

　果形は比較的背が低い扁円形のものが多く、果皮は黄赤褐色で果点は大きめです。

　果肉は｢幸水」と「愛甘水｣の中間くらいの硬さで、糖度が13 ～14％程度で果汁が多くジューシで食味良好な品種となっています。

　農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

　果実の形は扁円形、梗あの深さは深、梗あの幅はかなり広、がくあの深さはやや浅、がくあの幅は広、果実の大きさは大、

　果皮の色は黄赤褐、果点の大きさは大、果点の粗密はやや粗、果面の粗滑（赤なし品種に限る）は粗、

　果柄の長さは短、果柄の太さはやや細、肉梗の有無は無、

　果芯の形は短紡錘形、果芯の大きさはかなり小、

　果肉の色は黄白、果肉の硬さは中、果肉の粗密は中、果実の甘味はかなり高、果実の酸味は極弱、果汁の多少は多、

　種子の大きさは中、種子の形は長卵形、開花始期は晩、成熟期は早、裂果の発生の有無は無である。

　出願品種「甘ひびき」は、対照品種「愛甘水」と比較して、果点の大きさが大であること、果芯の形が短紡錘形であること等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた甘ひびきの食味

　撮影試食した「甘ひびき」は7月下旬に購入した岐阜県大垣市産で、果重360g前後でした。この時期に出回っている｢幸水」や「なつしずく」よりも大きいです。

　果形は扁平度がやや高い扁円形のものが多く、果皮は赤褐色に良く着色していました。

　食べてみると歯触りは軽く、シャキシャキとした心地よい食感で果汁感もしっかりとありました。

　計った糖度は13％前後でしたが、酸味がかなり少ないためとても甘く感じます。

　この時期に出回る梨でこの食味や大きさは人気が出るのもうなずけました。今度は是非、本家安芸市産の大きなものを撮影試食してみようと思います。

●甘ひびきの主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　甘ひびきの主な産地は、まだデビュー当初から栽培されてきた愛知県安芸市です。2022年はJAあいち中央の部会は４９人で約２．１ヘクタールで「甘ひびき」を栽培、15トンほどが出荷されたようです。そのほとんどがJAの直営店や道の駅などで販売され、一般の市場には出回っていません。

　その他の産地でも栽培が始まってはいますが、まだ個々の農園ですすめられている程度で、大きな産地化には至っていないようです。2023年の時点では岐阜県、茨城県、千葉県、東京都などで作られ、直売所などで販売されています。

◆甘ひびきの収穫時期と旬

　「甘ひびき」は極早生種で、収穫時期は「愛甘水｣と｢幸水」の中間あたりの７月下旬～８月上旬頃にかけてとなっています。

品種	６月			７月			８月			９月
甘ひびき

＜ 出　典 ＞

　※　「ナシ新品種「甘ひびき」の栽培特性について」ネット農業あいち　愛知県

　※　「登録番号19290　甘ひびき」　農林水産省品種登録データベース