●璃の香(りのか)とは
「璃の香」は静岡県興津の果樹試験場においてレモン(一般的なリスボン種)に「ヒュウガナツ」を交配して育成された、かいよう病に強く大果で果皮が薄く、まろやかな酸味が特徴のレモン品種です。
◆璃の香(りのか)の来歴
「璃の香」は静岡市清水区興津中町にある農林水産省果樹試験場(現 農研機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点)において、国内では一般的なレモンの品種である「リスボン」に「ヒュウガナツ」の花粉を交配し、得られた実生から選抜育成されました。育成の過程は下記のとおりです。
1991(平成3)年 「リスボン」レモンに「ヒュウガナツ」を交雑、得られた実生を育成。
2008(平成20)年 系統名を「カンキツ興津66号」とし、カンキツ第10回系統適応性・特性検定試験にとして供試。
2013(平成25)年 8月、平成25年度果樹系統適応性試験成績検討会において新品種候補とし、12月に種苗法に基づく品種登録出願。
2015(平成27)年 「璃の香」として品種登録完了。
「璃の香」という名称は、本種のもつ透明感やすっきり感のある香りを、「宝」あるいは「ガラス」「水晶」という意味をもつ「璃」という字で表しているそうです。
◆璃の香(りのか)の特徴
「璃の香」の果実は果形は一般的なレモンと同じような紡錘形ですが、果実重が200g程度と大きいです。栽培環境などによっては500gを超えるものもできるようです。撮影したものは200~260gでした。
果皮の色は一般的なレモンと同じく若いうちは緑黄で、熟すと黄色になります。果皮は薄く、果面は滑らかで、手で剥くこともできます。
中のサジョウは黄白で果汁が多く、果汁の糖度は9.2%、酸度は5.6%程度とリスボンレモンよりもまろやかな酸味が特徴となっています。ただ、香りはやや弱いです。
リスボンレモンやマイヤーレモンに比べ種子が少なく、種なし果も結実します。
そして何よりも大きな特徴は、リスボンをはじめ他のレモン品種の大敵であるかいよう病に強い品種であるという事です。かいよう病とは細菌によって葉、果実、枝に褐色の斑ができてしまう病気で、強い雨風にさらされるとかかりやすいため、レモンの栽培は温暖で雨の少ない地域に限られていました。この細菌に対して強いことから、栽培可能な産地がぐんと広がる事になります。
農研機構によると、果肉歩合は79%、搾汁率は50%とともに高く、既存の品種より歩留まりが高く、加工適性に優れると考えられるとあります。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の形は紡錘形、果頂部の形は突、果頂部放射条溝の有無は無、果頂部の凹環の有無は無、果梗部の形は短いネック、果梗部放射条溝の多少は中、果心の大きさは極小、果実の重さはやや重、
果皮の色は黄、油胞の大きさは中、油胞の密度は極疎、油胞の凹凸は平、果面の粗滑は滑、果皮の厚さは中、果皮歩合は中、剥皮の難易は中、
じょうのう膜の硬さはやや軟、さじょうの形は細長、さじょうの大きさは大、さじょう(果肉)の色は黄白、果汁の多少はやや多、甘味はやや低、酸味は中、香気の多少は中、種子数は少、
発芽期は早、開花期は早、成熟期は中、隔年結果性は低、浮皮果の発生は無、貯蔵性は中である。
出願品種「璃の香」は、対照品種「マイヤーレモン」と比較して、果皮の色が黄であること、種子数が少であること等で区別性が認められる。
対照品種「リスボンレモン」と比較して、果皮の厚さが中であること、酸味が中であること、種子数が少であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた璃の香(りのか)の食味
撮影試食した「璃の香」は11月26日に届いた和歌山県産10個/箱です。果実重は200~260gありました。
触った感じは表面が滑らかなしっとりした感触で柔らかく、一般的なレモンのような硬くごつごつした感じではありません。
手で皮がむけるというので試してみました。上下の端をナイフで切り落とし、皮に4方向から浅く切り込みを入れて、その切り目から指先を使って剥いてみると、確かに綺麗に皮がむけました。
果実が大きいことと、果実の大きさに対して皮が薄く、果汁が詰まった果肉が多いので、一つの果実から絞れる果汁も多いです。写真のもので100㏄以上ありました。また、計った糖度は8.5%でした。
「璃の香」の食味は一般的なレモンに比べると幾分酸味が穏やかですが、今回取り寄せたものは11月下旬だったこともあり、酸味もしっかりとしていて甘味は少なくレモンらしい酸っぱさでした。
また、香りがレモンとは少し違っていて、交配親の日向夏に感じられるような香りも混じっているような気がしました。
●璃の香(りのか)の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
普及予定地として神奈川、三重、和歌山、広島、香川、長崎、宮崎、鹿児島が挙げられ、苗木の販売も2016年から始まっているようですが、2022年の時点ではまだ各地の栽培面積や収穫量のデータがなく分かりません。JA香川県は生産拡大に力を入れているそうで、高松市内を中心に23人が栽培しており、2023年は10トンの出荷を見込んでいるとのことです。
各地の柑橘産地で徐々に栽培に取り組む農園が増えてきているようです。ただ、まだ収穫量は少なく、一般にはほとんど認知されていないと思われます。今後増えてくると思います。
◆璃の香(りのか)の収穫時期と旬
「璃の香」はリスボン種などに比べ約1ヶ月早い11月下旬頃から黄緑色の成熟果実が収穫できます。果皮が完全に着色するのは12月になってからです。貯蔵性は高く、よく春辺りまでもつようです。
また、JA香川県では主にまだ青いうちに収穫するグリーンレモンとして収穫出荷しており、8月中旬頃から収穫が始まり8月下旬から9月上旬にピークを迎え下旬頃まで続くそうです。
璃の香 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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璃の香グリーンレモン | ||||||||||||
璃の香レモン(黄緑~黄色) |
< 出 典 >
※ 「かいよう病に強く豊産性のレモン新品種「璃の香」」果樹研究所2014年の成果情報 農研機構
※ 「かいよう病に強いレモンの新品種「璃の香」」果樹茶業研究部門 農研機構
※ 「日本生まれのレモン品種「璃の香」の収穫ピーク/高松市内の農家」テレビせとうち 2023.8/30(水) 8:52配信
※ 「登録番号24081 璃の香」 農林水産省品種登録データベース
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