美玖里（みくり）栗：来歴や特徴と産地や旬

●美玖里とは

　「美玖里」は農研機構が交配育成し2010年に品種登録されたやや晩生で食味に優れる栗です。果肉が黄色く、風味がよくて食味もほくほくと美味しい栗ですが、まだ生産量がわずかで付加価値の高い品種となっています。

◆美玖里の来歴

　「美玖里」は農研機構が晩生品種である「石鎚」に果実品質が優れる「秋峰」を交配し得られた実生から選抜育成したもので、育成の過程は以下の通りです。

1995（平成 7 ）年　晩生の主要品種である「石鎚」に果実品質が優れる「秋峰」を交雑し、得た実生を1年間苗圃で養成。

1997（平成9 ）年　個体番号「610-18」とし選抜圃場に定植

1999（平成11）年　一次選抜　やや晩生で食味が良好

2000（平成12）年～　「クリ筑波39号」の系統名でクリ第 6 回系統適応性検定試験に供試し，全国 13カ所の公立試験研究機関でその特性を検討。

2009（平成21）年2月　平成20年度果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会 （落葉果樹）で承認され、平成20年度果樹試験研究推進会議において新品種候 補とすることが決定。

2009（平成21）年 7月　「美玖里」と命名し、種苗法に基づく品種登録を出願。

2010（平成22）年　「クリ農林9号」として農林認定品種に認定される

2011（平成23）年　品種登録完了。

　「美玖里」の系統図はこのようになっています。

◆美玖里の特徴

　「美玖里」の果実は平均果重28ｇほどと大きく、果形粒ぞろいが良いです。

　果肉は「石鎚」や「筑波」等に比べ黄色く、肉質は粉質で加熱調理するとほくほくした食感になります。

　また、栗らしい香りが強く甘味も多いのが特徴となっています。

　農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

　成熟期はやや晩生、単胚多胚の別は単胚、果実の形は球形、果実の色は淡褐、果実の大きさはやや大である。

　出願品種「美玖里」は、対照品種「筑波」と比較して、雄花穂の長さが短であること、若葉の着色の有無が有であること、葉身の長さ／葉柄の長さが極大であること等で区別性が認められる。

　対照品種「石鎚」と比較して、雄花穂の長さが短であること、若葉の着色の有無が有であること等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた美玖里の食味

　撮影試食した「美玖里」は9月末に熊本県菊池市の岩永農園産のものをGastronomy Nakataさんに送っていただいたものです。

　粒の大きさは平均29ｇほどで、一粒一粒にずっしりと重みを感じました。下の写真は鬼皮をむき、ブラシで白いワタを取り除いた状態です。鬼皮は比較的薄く「石鎚」などよりもむきやすいです。

　上の状態の物を生のままかじってみると、コリっと心地よい歯ごたえでほんのり甘味と栗の香りが口に広がり、渋みはとても少なくこのままでも食べられなくはないなという印象でした。

　次は、これを渋皮付きのまま8分ほど素揚げし、フライパンに砂糖と水をほんの少し入れて煮溶かし、色が付き始めたところでバターを加えてキャラメルにし、そこに先の揚げた栗を加えて全体に絡めた物です。

渋皮がカリッとしていて中はホクホクに仕上がりとても美味しいです。

この栗は加熱調理した時のホクホクした食感や栗らしい香りと甘味があり、製菓や料理の素材としてとても優れていると思います。

●美玖里の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　農林水産省がまとめた平成30年産特産果樹生産動態等調査によると「美玖里」は全国で約38haで栽培されています。これは栗全体から見ると0.34％ほどしかなく、まだまだ希少な品種となっていることが解ります。

　最も広く栽培しているのは熊本県で僅差で山口県が続き、茨城県となっています。

◆美玖里の収穫時期と旬

　「美玖里」は晩成種で収穫時期は「筑波」と「石鎚」の間、もしくは「石鎚」と同時期となっており、9月下旬ごろから10月上旬にかけてです。「美玖里」はまだ生産者や収穫量が少なく、出回る数が少ないため出回る期間も短いです。

品種	8月			9月			10月			11月
美玖里

＜ 出　典 ＞

　※　「ニホングリ新品種'美玖里'」　果樹研究所研究報告19号, p.1-9(2015-03)

　※　「美玖里(みくり)」　農研機構　品種詳細

　※　品種登録データベース　農林水産省ホームページ