●ヌアールドカロンとは

 ヌアールドカロン”Noir de Caromb”は南フランスから導入された黒くて長い洋ナシ型の黒イチジクで、糖度が高く香りも良いのですが、収量が少ない上、完熟すると果皮にひびが入りやすいため市場出荷には不向きで直売所に適した品種となっています。

◆ヌアールドカロンの来歴

ヌアールドカロン(Noir de Caromb) 黒イチジク

 「ヌワールドカロン」は南フランスのヴォクリューズ(Vaucluse)県カロム(Caromb)地域で作られてきた黒イチジクと呼ばれるタイプの品種で、フランス語で”Noir de Caromb”と言います。直訳すると『カロムの黒』となりまが、原産地では”Figue Longue Noire de Caromb”『カロムの黒長イチジク』と呼ばれており、この表記は元の名称を略したものであると思われます。

 ルーツは第二次世界大戦後、南部から来たイタリア人の荷物に入って持ち込まれた「ドゥキエラ・ネグラ」という品種が元という説がありますが、イタリアにはその品種が既に無くなっていたため、栽培が広まったカロム地区の名をつけた”Figue Longue Noire de Caromb”と呼ばれるようになったようです。

ヌアールドカロン(Noir de Caromb) 黒イチジク

 フランス語の”Caromb”は音訳すると『カロム』の方がしっくりときます。また、”Noir”は日本語では『ノワール』と表記することが多いので、本来であれば「ノワールドカロム」となりそうですが、現在国内で「ヌアールドカロン」と呼ばれるようになったのは、国内で本種の苗木を販売し始めた?当時、福岡県の株式会社吉岡国光園が、「ヌアールドカロン」という名称で商標登録した事に由来していると思われます。同社のカタログにはヌワールドカロンは桝井治氏(桝井ドーフィンの生みの親である桝井農場)がフランスから導入した品種と紹介されており、現在も吉岡国光園のホームページには「R(当社)ノワールドカロン」と表記されていますが、2023年の時点では既に商標権は消滅しています。この名称は桝井氏によって付けられたのかもしれませんね。

 ”Figue Longue Noire de Caromb”は現在もカロム地域の重要な産物として生産出荷されています。

◆ヌアールドカロンの特徴

 ヌアールドカロンの果実は果実重40~80gで、やや縦長の洋ナシ形のものが多く、果皮色は黒く見えるほど濃い赤紫色に着色します。

 果肉は明るい赤色からイチゴジャムのような色合いで、糖度が高く無花果らしい香りが強い品種となっています。

ヌアールドカロン(Noir de Caromb)の断面 黒イチジク

 ノワールドカロンは生食の他、ドライイチジクにしたり、料理のソースに用いたりするのにも適しています。

 栽培特性としては、着果数がとても少なく、熟すと果皮にヒビが入るのが特徴で、市場出荷には不向きな品種となっています。実際、各地の直売所では果皮が縦に幾筋も裂けているものをよく見かけます。

◆実際に食べてみたヌアールドカロンの食味

 撮影試食したヌアールドカロンは愛媛県の岩城島産で、主にレモンを扱われている「わらしべ」の岡氏からご提供いただいた無農薬栽培され、樹上で完熟したものです。

ヌアールドカロン(Noir de Caromb)の断面 黒イチジク ヌアールドカロン(Noir de Caromb)の糖度 黒イチジク

 送っていただいた果実は35~66gほどと大小大きさにばらつきはありますが、いずれも黒に近い濃い色に着色し、香りもたっていました。本種は果皮にヒビが入る傾向がありますが、これは完熟した証しで、食味には全く影響はありません。

 半分に切った断面は写真の通りで、白い果肉部分は比較的薄く、痩果を含む赤い部分がたっぷりと詰まっています。

 皮ごと食べてみると皮はほぼ気にならず、果肉はネットリとした食感で舌触りは滑らかです。そして濃厚な甘みとイチジク特有の香りが鼻から抜けていき、一般的な桝井ドーフィンとは違った味わいでとても美味しいです。同じ黒イチジクと呼ばれるビオレソリエスと食感や味わいはよく似ています。計った糖度は17.8~23.5%でした。

●ヌアールドカロンの主な産地と旬

ヌアールドカロン(Noir de Caromb) 黒イチジク

◆主な産地と生産量

 ヌワールドカロンは比較的耐寒性が低いため、主に西日本に向いています。実際に栽培面積などは不明ですが、まだ大きな産地化がすすめられているといった話はなく、個々の農園で少量栽培されている程度で、2023年の時点ではビオレソリエスよりも希少な品種の一つです。また、収量が少ない品種でもあるため、価格も高めとなります。

 購入はイチジクの産地の直売所や個々の農園の直販となります。

 愛媛県の岩城島産は「わらしべ」で取り寄せることができます。無農薬栽培された完熟果を発送されています。生のままあるいは収穫してすぐに状態が良いまま冷凍したものいずれかを選択することができます。冷凍品であれば収穫時期が過ぎてからも取り寄せることができます。

◆ヌアールドカロンの収穫時期と旬

 ヌアールドカロンは国内での栽培では秋果専用品種となり、収穫は8月下旬~9月中旬にかけてとなります。

品種 7月 8月 9月 10月
ヌアールドカロン                        

< 出 典 >

 ※ 「ヌアールドカロン」株式会社吉岡国光園ホームページ

 ※ 「Figue longue noire de Caromb」Pépinière Palmiers et Compagnie

 ※ 「Noire de Caromb」Wikipedia

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