紀の香（きのか） の来歴や特徴

●紀の香（きのか）とは

　「紀の香」は和歌山県が「かおり野」と「こいのか」を交配し、得られた実生から選抜育成した、炭疽病に強く、やや大粒で食味が良いイチゴのオリジナル品種です。

◆紀の香の来歴

　和歌山県ではオリジナル品種として2010年に品種登録された「まりひめ」の普及がすすめられてきましたが、この品種は炭疽病に弱いという欠点があったため、これを補完する新たな品種として和歌山県農業試験場において平成24年に炭疽病に強い「かおり野」をもとに交配し、得られた実生から3年間をかけて選抜されたのが「紀の香」です。

　結果的には「紀の香」は「かおり野」と「こいのか」の交配によって生まれた品種となります。交配、育成の過程は下記のとおりです。

2012年　炭疽病に強い「かおり野」をベースに早生で果実品質の高い「こいのか」、果実が硬く食味がいい「さちのか」、大果で収量が多く食味が良い「まりひめ」の３種をそれぞれ子房親、花粉親とする6つの組み合わせで交配し、得られた9654 個体の実生を農業試験場の温室内に定植し462 個体を選抜。

2013年　炭疽病に対する耐性や早晩性，果形，果実色， 食味等の果実品質などから10 個体を2次選抜。

2014年　3系統を選抜

2015年　農業試験場内圃場で特性検定を行うとともに、県内7農家で現地適応性試験を実施。極早生で果実が硬く、着色が良く高糖度で上物率が高く、炭疽病に強い「I21（「かおり野」×「こいのか」）」を選抜。

2016年　「紀の香」と命名し、品種登録出願。

2018年　品種登録完了。

　名称は紀州（和歌山県）の香り高いいちごで、和歌山を代表する品種となることを願って付けています。

◆紀の香の特徴

　「紀の香」の果実は肩が丸く縦長の円錐形で、大きさは「まりひめ」と同じくらいですが、「まりひめ」にみられる極大果は発生しにくいようです。果皮色は艶のある赤色でそう果のくぼみは比較的浅めとなっています。

　果肉は果芯部も橙赤色で空洞はほとんど見られず、糖度は「まりひめ」や「さちのか」と同等かやや高く、酸度は「まりひめ」より高く「さちのか」と同じくらいとなっています。

　全体に適度な酸味とさわかやかな味わいが持ち味のイチゴとなっています。

　農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

　果実の大きさはやや大、果実の縦横比はかなり縦長、果実の形は卵円形、

　果皮の色は赤、果実の光沢の強弱は強、そう果の落ち込みは落ち込み小、

　果実のがく片の付き方は水平、果径に対するがく片の大きさはやや大、

　果実の硬さは硬、果肉の色は橙赤、果心の色は淡赤、果実の空洞は無又は小、季性は一季成りである。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた紀の香の食味

　撮影試食した「紀の香」は3月6日に前田農園さんから届いた約５００g(12~15粒入り)2,000円（税込）です。一つ一つが結構大きく、45～50ｇありました。

　イチゴの粒は大きいですが、形はとても綺麗なものばかりで、箱を開けるととてもいい香りが広がりました。

　食べてみると、果肉はしっかりしてはいますが食感は柔らかく、果汁感もしっかりとあり、イチゴの香りと共に甘味が口の中に広がりました。全体にしっかりと着色しており、肩の部分までしっかりと甘いいちごです。酸味は柔らかく、甘さを引き立てている感じで、とても美味しいいちごでした。計ってみた糖度は13～14％でした。

●紀の香（きのか）の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　「紀の香」は和歌山県が育成したオリジナル品種で、栽培は和歌山県内に限定されています。

　品種登録から既に6年が経過した2024年3月の時点では、まだまだ「まりひめ」の方が広く栽培されており、「紀の香」の出荷数は少ないです。

◆紀の香の収穫時期と旬

　「紀の香」の収穫は「まりひめ」よりも早く、11月中旬頃から始まり、クリスマスの時期に対応できる品種となっています。

品種	1月	2月	3月	4月	5月	6月	7月	8月	9月	10月	11月	12月
紀の香

＜ 出　典 ＞

　※　「イチゴ新品種‘紀の香’の育成経過と特性」和歌山県農林水産試験研究機関研究報告 5号 p. 1-8 2017年6月

　※　「イチゴ新品種「紀の香」の育成経過と特性」和歌山県農業試験場　和歌山県

　※　「登録番号 27050　紀の香」　農林水産省品種登録データベース