田口早生（たぐちわせ）：来歴や特徴と産地や旬

●田口早生 温州みかんとは

　「田口早生」は和歌山県において田口耕作氏が発見した「興津早生」の個体変異種です。興津早生より減酸及び増糖ともに早く、果実品質も優れてた早生品種で11月中旬から1月頃まで出回ります。

◆田口早生 温州みかんの来歴

　「田口早生」は和歌山県有田郡吉備町（現 有田川町）の田口耕作氏が、1978年に自園の「興津早生」の中から発見した、樹勢が強い個体変異（枝変わり）樹で、その後、育成しながら特性調査が行われ、「興津早生」より減酸及び増糖ともに早く、果実品質も優れてた早生品種であることが判明し、1993（平成5）年に種苗法に基づく登録出願、1995（平成７）年に「田口早生」という名称で品種登録されました。

◆田口早生 温州みかんの特徴

　「田口早生」の果実は果重120gほどで一般的な温州みかんと同じです。果形は果形指数125～130とやや扁平で、果皮の色は橙色で表面の油胞の大きさや密度は「興津早生」とほぼ同じです。

　果皮は比較的薄く、手で剥きやすい。また、ジョウノウ膜も柔らかく多汁で食味良好なみかんとなっています。

　農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

　果梗部水平域の果実横径に対する比は小、果梗部放射条溝果の多少は少、中心柱の大きさは小、

　果実の大きさは中（120g程度）である。

　果皮の色は橙、油胞の大きさ、果面の平滑度及び油胞の密度は中、凹凸は平、凹点の多少は無～少、果皮の厚さは薄、剥皮の難易は易である。

　じょうのう膜の硬さは軟、砂じょうの色は橙、果汁の多少は多、甘味は多（糖度12～13度程度）、酸味及び香気は少である。

　成熟期は早、育成地においては11月上旬である。隔年結果性は中、浮皮果の発生及び裂果の多少はでにくい、貯蔵性は中である。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた田口早生 温州みかんの食味

　撮影試食した田口早生は11月中旬に小田原の直売所で購入したものです。

　外見的には表皮に艶があり、果形も揃っていて綺麗なミカンです。

　皮はやや厚くゴワゴワした感じで、ジョウノウ膜もやや厚めに感じました。中のサジョウは粒感があり、果汁感がしっかりとあって、さっぱりとした甘さのみかんでした。

　いくつか計ってみた糖度はいずれも10％足らずで、本種としてはあまり良い状態のものとは言えませんでした。

　2023年の１月初旬に香川県の直売所で購入したものは、果実があまり扁平していないものが多く、皮は薄めでジョウノウ膜も柔らかく感じました。甘味は普通に美味しいと感じるレベルで、食感も良かったです。

　温州みかんも栽培される圃場の立地や土壌、環境、さらに栽培方法や収穫のタイミングなどで同じ品種でもかなりの違いが生じるので、自分の好みに合った農園が探してみたくなりました。

●田口早生 温州みかんの主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　「田口早生」の主な産地は発見された和歌山県です。本種は数ある温州ミカンの品種の中でも比較的広く栽培されており、九州をはじめ、主な温州ミカンの産地でも栽培されています。

　令和２年産の特産果樹生産動態等調査を見ると、この年の全国の栽培面積は623haです。最も広く栽培しているのは和歌山県で、全国の約半分を占めています。次いで熊本県、長崎県、愛媛県と続きます。

◆田口早生 温州みかんの収穫時期と旬

　田口早生は興津早生よりも早熟の早生種で、10月上旬には着色が始まり、11月上旬には全体に完全着色します。減酸も早く10月下旬には1％ほどになり、糖度は11月上旬には11～12度となり、11月下旬に向けて更に上がります。ただ、11月下旬を過ぎると浮き皮が発生しやすくなるようです。

　収穫時期は11月上旬から始まり1月頃まで出荷されます。

　田口早生は興津早生よりもやや早熟ではありますが、市場に出回るのは、より広い地域で多く栽培されている興津早生の方が若干早いようです。

品種	10月			11月			12月			1月
田口早生 温州みかん

＜ 出　典 ＞

　※　「田口早生　たぐちわせ」株式会社吉岡国光園

　※　「田口早生（たぐちわせ）」主要品種解説 中央果実協会

　※　「登録番号4725　田口早生」　農林水産省品種登録データベース