紅プリンセス/愛媛果試第48号の来歴や特徴と食べ方や食味・旬

紅プリンセス 愛媛果試第48号

●紅プリンセス(愛媛果試第48号)とは

 「紅プリンセス」は愛媛県が「紅まどんな(愛媛果試第28号)」に「甘平」を交配し育成した「愛媛果試第48号」という新品種の登録商標です。「紅まどんな(愛媛果試第28号)」と同じく、タンゴール類(ミカン類とオレンジとの交雑種)の一種で、ゼリーのような食感と濃厚な甘みが特徴です。

◆愛媛果試第48号(紅プリンセス)の来歴

 「愛媛果試第48号」は愛媛県農林水産研究所 果樹研究センター みかん研究所が”ゼリーのような食感”で人気が高い「愛媛果試第28号(紅まどんな)」にサジョウの粒感がしっかりとしていて濃厚な甘さが特徴である「甘平」の果粉を交配し、得られた実生から選抜・育成したタンゴール類(ミカン類とオレンジとの交雑種)の一種です。育成の過程は下記のとおりです。

紅プリンセス 愛媛果試第48号

2005(平成17)年 「紅まどんな」に「甘平」の花粉を交配

2006(平成18)年 得られた種子を播種、実生を養生

2008(平成20)年 温州ミカンに高接ぎ

2010(平成22)年 初結実

2015(平成27)年 系統名「愛媛48号」として二次選抜

2017(平成29)年 現地適応性試験開始

2019(平成31)年 「愛媛果試第48号」として種苗法に基づく品種登録を申請すると共に、県が「紅プリンセス」で商標登録申請 同年8月に出願公表 

2020(令和2)年 「紅プリンセス」が商標として登録される

2022(令和4)年 品種登録完了

2025(令和7)年 「紅プリンセス」として本格的に市場出荷開始

 「紅プリンセス」という名称は『「紅まどんな」から生まれた娘「プリンセス(王 女)」として、誰からも愛される存在になるよう にとの思い』が込められているそうです。

 本種は系統名「愛媛48」で登録品種名は「愛媛果試第48号」となりますが、交配親に用いられた「紅まどんな」は2005年に品種登録された「愛媛果試第28号」で、「甘平」は系統名「愛媛34」で2007年に「甘平」として品種登録されています。「愛媛果試」がつけられて品種登録されている柑橘はこれらの他に「愛媛果試10」「愛媛果試14」「愛媛果試16」の3品種ありますが、あまり知られてはいません。

◆愛媛果試第48号(紅プリンセス)の特徴

 「愛媛果試第48号」の果実は果実の大きさは 250gほどで、果形は短卵形で果形指数(横径 / 縦径)は 106 程度で「おむすび」のような形の物が多い傾向があります。

 果皮の色は赤みの強い橙色で、厚さは薄く、手で剥くこともできます。

紅プリンセス 愛媛果試第48号

 ジョウノウ膜は非常に薄く、そのまま食べても気にならず、果肉はゼリーのような食感で、種子はなく、糖度が高いのが特徴です。

 「紅プリンセス」という名称で出荷するには愛媛県内の生産者であっても県の許諾が必要で、果実の品質は下記のような条件が設けられ、それをクリアしたもののみとなります。

  • ●糖度12度以上 非破壊内部品質測定装置(光センサー選果 機等)で測定した果実に限る。
  • ●酸度1.2%未満 非破壊内部品質測定装置(光センサー選果 機等)で測定した果実に限る。
  • ●階級 果実の横径
    • 4L 9.5cm~10.2cm未満
    • 3L 8.8cm ~9.5cm未満
    • 2L 8.0cm ~8.8cm未満
    • L 7.3cm ~8.0cm未満
    • M 6.7cm ~7.3cm未満
  • ●果実外観
    • 〇果皮は良好なもの
    • 〇形状は良好なもの
    • 〇日焼け、果皮色ムラ軽微なもの
    • 〇病害虫被害軽微なもの
    • 〇風傷、果皮障害などが軽微なもの
    • 〇クラッキング軽微なもの
    • 〇ヘソ軽微なもの
紅プリンセスとその断面の合成 愛媛果試第48号

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果実の形は短卵形、果頂部の形は平坦、果頂部放射条溝の有無は無、果頂部の凹環の有無は無、果梗部の形は球面、果梗部放射条溝の多少は中、

 果心の充実度は粗、果心の大きさは極小、果実の重さは重、

 果皮の色は橙、油胞の大きさは大小混合、油胞の密度は中、油胞の凹凸は凸、果面の粗滑はやや滑、果皮の厚さはやや薄、果皮歩合は小、剥皮の難易はやや易、

 じょうのう膜の硬さは軟、さじょうの形は中、さじょうの大きさは中、さじょう(果肉)の色は橙、

 果汁の多少は多、甘味は高、酸味は低、香気の多少は中、種子数は無、発芽期は中、開花期は中、成熟期は中である。

-----』以上、抜粋。

●愛媛果試第48号(紅プリンセス)の美味しい食べ方と食味

◆ナイフでスマイルカットにするのがお勧め

紅プリンセスの切り方 愛媛果試第48号

 愛媛果試第48号(紅プリンセス)の皮は手で剥けなくはないのですが、比較的薄く、中の果肉がみっちり詰まっており指先に中の房が感じられるものも多いです。また、ジョウノウ膜がとても薄いため、手で皮をむくと膜が破れて果汁が染み出しやすく、手がべたべたになることも多いので、ナイフを使い、写真のようにスマイルカットにするか、縦に串切りにし、皮と果肉もナイフでむくことをお勧めします。

 そうすることで、プルンとしたゼリーのような果肉を楽しみやすくなるでしょう。

◆実際に食べてみた紅プリンセス(愛媛果試第48号)の食味

 撮影試食した「愛媛果試第48号」は愛媛県の中島産の約1.5kg(6玉) 贈答用(赤秀) 5,400円(税・送料込み)で「プリマドンナ」という名称で販売されていたものです。

紅プリンセス 愛媛果試第48号

 果実は球形に近いものが多く、お結び型のものもありました。外見は比較的綺麗ではありますが、贈答用の赤秀にしては傷や痣状班があったり、ヘソが大きい物などがあり、こういったところが個選の基準の甘い所かなと感じました。

紅プリンセスの糖度 愛媛果試第48号

 しかしながら、中の果肉は見るからに艶々しておりゼリーのようです。食べてみるとプルっとしたゼリーのような舌触りの後、とても甘い果汁が口に広がり、適度な酸味が甘さをさらに引き立てて濃厚な味わいで、ついつい『これマジ旨っ!』って声が出ました。計った糖度は19~20%もあり、甘いはずです。

 「紅プリンセス」として販売するには県の許諾が必要で、そのためには高価な光センサーの設備が必須だったりするため、個々の農園や集荷販売している所の個選では独自のブランド名で販売しているのですが、そういったところでは共選の基準とは違い独自で基準を定めているので、共撰以上に高いレベルでブランド化を進めているところもあれば、甘々の基準で程度の低い代物を平気で販売しているところもあるので、その生産者や販売元の情報を知っておくのは大切なこととなります。

●紅プリンセス(愛媛果試第48号)の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 愛媛果試第48号は愛媛県のオリジナル柑橘で栽培は愛媛県内に限定されています。また、「紅プリンセス」という名称は県の許諾を受けた生産者しか使用することができません。

 本格的な出荷は2025年からとなっていますが、限られた店舗での試験販売が2023年から始まっており、2024年の時点で既に高い関心が集まっています。

◆紅プリンセス(愛媛果試第48号)の収穫時期と旬

 愛媛果試第48号は3月上旬に成熟し、その頃糖度が13~15 度(Brix) 程度まであがり、樹上におくほど増加するそうです。また、クエン酸含量は2月下旬~3月上旬に 1.0g/100ml 程度になりその後は横ばいとなるため、収穫は3月中旬から4月上旬となっています。

甘平」が2月から3月上旬辺りまでなので、その後に続く柑橘となります。 

品種 2月 3月 4月 5月
紅プリンセス
(愛媛果試第48号)
                       

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交配親に用いられた愛媛県オリジナル柑橘