ベリーポップすず／ MYAGMIE-1 ＜いちご：旬の果物百科

●ベリーポップすずとは

　「ベリーポップすず」は株式会社ミヨシと三重県が共同育種により開発した一季成りの種子繁殖型イチゴ品種で、果皮、果肉とも赤く、果実が硬く、甘くてコクがあるのが特徴です。

◆ベリーポップすずの来歴

　「ベリーポップすず」は株式会社ミヨシと三重県が共同育種により開発した促成栽培に適した一季成りの種子繁殖型イチゴ品種です。正式な品種名は「MYAGMIE-1」で、「ベリーポップすず」という名称は株式会社ミヨシのグループ企業であり、苺の種苗を販売している三好アグリテック株式会社の登録商標「ベリーポップ」シリーズの一つとして付けられた商標です。

　育成の過程は、2017年と2018年に三重県とミヨシがそれぞれもつ系統を交換し、交配した51組のF1系統から選抜された１系統で、種子親はミヨシの系統、花粉親は三重県の系統でした。その後各所で促成栽培の適応性や特性検定試験を行い、2020年に「MYAGMIE-1」と命名し、種苗法に基づく登録が出願されました。2023年12月の時点ではまだ検証中で登録には至っていません。

　一般的なイチゴは親株から伸びたランナーから新しい株を増殖していく栄養繁殖型であるのに対し、本種は通常の農作物と同じように種子を蒔いて育苗、定植、収穫するという種子繁殖型のイチゴです。いわゆるF1種子品種で、これは民間企業としては初の品種だそうです。

　ちなみに、日本で初めて実用化された種子繁殖型イチゴ品種は三重県、香川県、千葉県と九州沖縄農業研究センター（農研機構）の４つの機関が共同で開発し2017年に品種登録された「よつぼし」です。この時も三重県は参加していたので、この分野においてはノウハウを蓄積している研究機関と言えそうです。

　イチゴを種子から育てられるという事は、親株の管理やランナーから増殖して育苗する手間が省けるという事で、その期間中の農薬も不要となり農家の労力やコストがかなり押さえられることになることから、今後このタイプの品種が増えてくると考えられています。

　株式会社ミヨシでは同年に本種より先に「MYAGFRA-1」という同じく種子繁殖型イチゴ品種も登録出願されており、こちらは「ベリーポップはるひ（19FAGｰ2）」という名称で販売されています。

　三好アグリテック株式会社の登録商標「ベリーポップ」という名称は『日本のイチゴの美味しさが、まるでポップカルチャーのように世界中の人々にとって身近なものになっていくように』という願いが込めているそうです。

◆ベリーポップすずの特徴

　「ベリーポップすず」の果実は円錐形で、果皮、果肉ともに赤く、「よつぼし」や「かおり野」より果実が硬く輸送性に優れ、糖度はそれらと同じくらいですが、酸度は「かおり野」ほど低くはありませんが、「よつぼし」よりも低く、甘くてコクのある味わいが特徴となっています。

　農林水産省の品種登録データベースには、まだ未登録のため記載がありません。

　果実の表皮の色はやや濃い赤色で艶があり、そう果のくぼみが深めです。

◆実際に食べてみたベリーポップすずの食味

　撮影試食した「ベリーポップすず」は12月24日に滋賀県近江八幡市の直売所で購入したもので、果実重40ｇ前後のやや大粒のもの8粒入りで税込み980円でした。

　果実の赤い色が濃く、果形は綺麗な円錐形で、触った感じもしっかりとしていました。縦半分に切った断面を見ると、果肉も赤身が強めで綺麗です。

　食べてみると、食感はやや硬く、甘味が強く、それに対して酸味はかなり少なく甘いイチゴでした。計った糖度は16％前後ありました。

●ベリーポップすずの主な産地と旬

◆主な産地と生産量

　「ベリーポップすず」の苗は三好アグリテックが販売しており、栽培地の制限などはないので、どこでも栽培することができます。

　まだ新しい品種なので、生産量は多くはないですが、今後増えてくれば一般のスーパーなどでも皆舞踊になると思われます。

　ちなみに、F1品種であるため、ランナーによる栄養繁殖はいかなる場合も禁止されているので、毎年苗を購入することになります。

◆ベリーポップすずの収穫時期と旬

　「ベリーポップすず」の栽培面においては、炭疽病に対する抵抗性が強く、また、萎黄病に対しても抵抗性があり、草勢は非常に強く、促成栽培で12月から収穫できる品種となっています。

　収穫時期は早い所では11月下旬頃から始まり、5月中まで続きます。

＜出　典＞

　※　「ベリーポップ　すず（19FAMｰ2）」三好アグリテック株式会社ホームページ

　※　「炭疽病および萎黄病に抵抗性をもつイチゴ種子繁殖型品種「MYAGMIE-1」」三重の植物防疫 No.64 p.9-11

　※　「炭疽病および萎黄病に抵抗性をもつイチゴ種子繁殖型品種「MYAGMIE-1」」園芸学研究別冊 21号 p.214 2022年03月17日

　※　「登録番号第6354929号　ベリーポップ」特許情報プラットフォーム　特許庁

　※　「出願番号34944　MYAGMIE-1」農林水産省品種登録データベース

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