●かおりんとは

◆かおりんの来歴

 「かおりん」は埼玉県が「ふくあや香」に「ゆめのか」を交配し選抜育成した非常に糖度が高く酸味もあって味が濃い埼玉県オリジナルのいちご新品種です。

 埼玉県農業技術研究センターが下記の過程で交配育成しました。

かおりん(埼園い1号),イチゴ,埼玉県オリジナル,新品種

2008(平成20)年 種子親「ふくあや香」に「ゆめのか」の花粉親を交配、得られた実生から味、大きさ、色の面で一次選抜。

2009(平成21)年~2011(平成23)年 収穫などの時期、草勢、果実外観、及び収量、品質、耐病性などから選抜を繰り返し「埼園い1号」「埼園い2号」の2系統に絞る。

2012(平成24)年~2015(平成27)年 特性調査及び現地試験を実施

2016(平成28)年 最終的に「埼園い1号」を選抜し、同時に別系統で選抜育成した「埼園い3号」とともに種苗法に基づく品種登録出願。

2019(平成31)年2月14日 品種登録されました。 

 「かおりん」という愛称は、同時に育成・品種登録された「あまりん(埼園い3号)」と共に埼玉県のオリジナルいちご新品種として秩父市出身の落語家:林家たい平氏が命名し、それと共に2種のいちごのイメージイラストも描いています。

◆かおりんの特徴

 「かおりん」は果実の大きさはやや小ぶりで、形は縦長の円錐形です。果皮の色は艶のある赤色で、そう果(表面の種のような粒)の落ち込みが浅いのが特徴です。「あまりん」と比べるとやや粒が小さく、形も「あまりん」の方が揃いが良いようです。また、そう果の落ち込み具合とわずかな色味で「あまりん」と「かおりん」は判別できます。

かおりん(埼園い1号),イチゴ,埼玉県オリジナル,新品種

 「かおりん」の果肉はかなり硬く、中の色は薄い橙赤で少し空洞ができやすいようです。

 埼玉県のホームページには『非常に糖度が高いのが大きな特徴です。糖度だけでなく、酸度もあるため、食べた時に味の濃さを感じる。また、香りも豊かで、特徴的です。』と紹介されています。

 栽培面においては萎黄病・炭疽病などに対する耐病性もあるそうです。

かおりん(埼園い1号)の断面,イチゴ,埼玉県オリジナル,新品種

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果実の大きさは中、果実の縦横比は縦長、果実の形は円錐形、

 果皮の色は赤、果実の光沢の強弱は強、そう果の落ち込みは落ち込み小、

 果実のがく片の付き方は水平、果径に対するがく片の大きさは同等、

 果実の硬さはかなり硬、果肉の色は橙赤、果心の色は淡赤、果実の空洞は中、

 季性は一季成りである。

 出願品種「埼園い1号」は、対照品種「ふくあや香」と比較して、第1番果と第2番果の果形の差が無又は極小であること、可溶性固形物含量が極高であること等で区別性が認められる。

 対照品種「ゆめのか」と比較して、たく葉のアントシアニン着色の強弱が中であること、果実の大きさが中であること、可溶性固形物含量が極高であること等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた「かおりん」(埼園い1号)の食味

 今回入手した「かおりん」は3月11日に届いた埼玉県秩父市のただかね農園さんで作られたものです。

 箱を開けるとイチゴの良い香りがかなり強く感じられました。イチゴはどれも傷一つなくつややかですが、「あまりん」に比べ形は少しばらつきがありました。果実は持ってみると指先にそう果の粒が感じられ、果肉も硬そうでした。これだけしっかりとしていれば輸送性も高いと思います。

かおりん(埼園い1号)の断面,イチゴ,埼玉県オリジナル,新品種

 大きさは「あまりん」より少し小ぶりで15粒の平均果重は18.7gでした。

 一粒手に取ってかじってみると、まずその硬い食感に驚きました。噛んだ時にグリグリッと強い食感が歯に伝わってきます。そして、すごく強い甘みと共にそれに見合うだけの酸味も同時に広がり、そのイチゴらしい甘酸っぱい味に感動しました。そして鼻に抜ける香りもまた素晴らしいです。

 箱を開けた時は、「あまりん」が綺麗なハート形でそろいが良いのに対し、やや不揃いで果実の表面もそう果の粒々感が強く見劣りにもかかわらず一緒に品種登録出願された理由が、一口食べた時に分かりました。個人的には「あまりん」もとても美味しいイチゴですが、見た目は「あまりん」、味は「かおりん」に軍配を上げたくなりました。

 糖度を計ってみると16度前後もありました。 かおりん(埼園い1号)の糖度,イチゴ,埼玉県オリジナル,新品種

●かおりんの主な産地と旬

かおりん(埼園い1号),イチゴ,埼玉県オリジナル,新品種

◆主な産地と生産量

 「かおりん」は埼玉県オリジナル品種として、県内でのみ栽培出荷が許諾され、他府県では作ることはできません。

 まだ登場したばかりの新品種なので生産量は少ないですが、この強甘酸っぱい味わいと香りは製菓などスイーツに使うにもしっかりと自己主張してくれるイチゴなので、今後需要が高まるのではないでしょうか。ただ、埼玉県内だけでの栽培なので全国的にはどれほど流通するかはまだ分かりません。

◆かおりんの収穫時期と旬

 「かおりん」は促成栽培に適したイチゴで、ハウスでの栽培であれば12月から収穫は可能なようです。

 収穫は5月頃まで続きますが、美味しい旬の時期は1月から4月上旬くらいまでです。

品種 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
かおりん                        

< 出 典 >

 ※ 「いちご新品種「かおりん」「あまりん」」埼玉県ホームページ

 ※ 「イチゴ新品種‘かおりん※’の育成」埼玉県農業技術研究センター 新技術情報 2016

 ※ 「かおりん、あまりんに対する収穫期前進化のための育苗管理」農業技術研究センター試験研究成果発表会講演要旨旨(R2.1.29 開催)

 ※ 品種登録データベース 農林水産省ホームページ

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埼玉県のオリジナルイチゴ品種