紫月(しづき):来歴や特徴と食味
●紫月(しづき)とは
「紫月(しづき)」は農研機構が育成した、紫皮で淡黄肉色の「男爵薯」並みに食味がいい青果用馬鈴薯で、中心空洞や褐色心腐などの生理障害が発生しにくく栽培しやすいジャガイモです。
◆紫月(しづき)の来歴
「紫月」は北海道農業試験場(現・国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)が1992(平成4)年に「長崎紫」に「十勝こがね」の花粉を交配し、得られた実生を育成、2000(平成12)から選抜と生産力検定試験を行い、2012(平成24)年種苗法に基づく登録出願、2013(平成25)年に品種登録された、紫皮で淡黄肉色のジャガイモで、平成27年度から本格的な一般栽培が始まっています。
系統名は地方番号「北海100号」系統番号「勝系14号」で、「紫月」という名称は、いもの形状が球形で切断面が円形になり、肉色が淡黄色であることから満月をイメージし、皮色が紫であることに因んでいるとのことです。
◆紫月(しづき)の特徴
「紫月」のイモは形が球形に近い丸い形のものが多く、サイズ的には規格内(60~260g)イモ重が「男爵薯」並みとなっています。
表皮の色は紫色で、比較的目が浅く数も少ないことが外見的な大きな特徴となっています。
撮影試食した「紫月」は10月下旬に届いた北海道産のもので、この年の夏が非常に高温だった影響で表皮が粗くなる生理障害が出ていました。
肉色は淡黄色で、でん粉価は「男爵薯」よりわずかに少ない程度ですが、肉質はやや粘質で、舌触りが滑らかであり、調理後の黒変は「男爵薯」より少ないのが特徴となっており、煮くずれが少なく、調理後の黒変も少ないため煮物料理に適していると紹介されています。
また、中心空洞や褐色心腐などの生理障害が発生しにくく、家庭菜園でも栽培しやすい品種となっています。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
塊茎の形は円形、塊茎の目の数は少、塊茎の皮色は青、塊茎の目の基部の色は青、塊茎の表皮のネットは中、
塊茎の肉色は淡黄、上いも重はやや軽、上いも数は中、上いもの平均重(Sサイズ(20g)以上のいもの1個平均重量)は中、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性は有である。
出願品種「紫月」は、対照品種「十勝こがね」と比較して、幼芽の基部のアントシアニン着色の強弱が強であること、塊茎の皮色が青であること等で区別性が認められる。
対照品種「キタムラサキ」と比較して、花冠内面のアントシアニン着色の強弱が弱であること、塊茎の肉色が淡黄であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
●紫月(しづき)の食味や適した料理
「紫月」は煮崩れにしにくく黒変しにくいジャガイモなので煮物料理に適しているとされています。そこで、実際に色々な調理に使ってみて試してみました 。
◆皮ごと蒸したものと皮を剥いて茹でたもの
「紫月」を皮付きのまま蒸したり、煮崩れ具合を試すため皮をむいて茹でてみました。左が茹でたもので、右が皮ごと蒸してから半分に切ったものです。
このジャガイモは比較的火の通りが早いようです。他の数品種と一緒に加熱したのですが、「紫月」は蒸した状態で皮に裂け目ができ、はがれかかっています。また、茹でたものは他の品種が原形のままだったのに対し、表面が崩れていました。
今回の使用したものがたまたまなのかもしれませんが、この崩れ方や蒸し上がり方は粘質というより「男爵薯」に似ています。
皮ごと蒸しあげたものを指で圧迫して崩してみた感じも「男爵薯」に似ていました。
食べてみると味的には比較的あっさりしていますが、舌触りは良く、どちらかと言えばホクホク系で、煮物にした場合、おそらく味が早く染みると思います。ただ、煮過ぎると崩れやすい感じでした。
ある生産者によると、収穫後すぐよりも、一定期間貯蔵熟成させた方が甘みが増して美味しくなるタイプと紹介されているので、しばらく貯蔵してからまた試してみることにします。
◆紫月(しづき)のポテトチップ
< 出 典 >
※ 「ばれいしょ新品種「紫月(しづき)」」農研機構プレスリリース 2013.2.8
※ 「紫皮・淡黄肉色の青果用ばれいしょ新品種「紫月」」北海道農研NEWS No.40 p.2 2013.9.30
※ 「登録番号22695号 紫月」農林水産省品種登録データベース