●せとみとは
◆せとみの来歴
「せとみ」は山口県がイヨカン(伊予柑)に変わるオリジナル品種の開発を目的に、「清見」に「吉浦ポンカン」を交配しその実生から選抜育成した果形が扁球で果皮色が濃橙の育成地(山口県大島郡橘町)では3月上旬~4月中旬に成熟する、皮が手で剥け、独特の食感と高い糖度になる柑橘です。育成の過程は下記の通り。
1981(昭和56)年 山口県農林総合技術センター(旧大島柑きつ試験場)において「清見」に「吉浦ポンカン」の花粉を交配。得られた実生を養生。
1984(昭和59)年 実生をカラタチに接木。
1986(昭和61)年 試験圃場に定植。
1993(平成5)年 初結実。
1999(平成11)年 最終選抜。
2001(平成13)年 種苗法に基づく登録出願。
2004(平成16)年 品種登録完了。山口県農業協同組合によって「ゆめほっぺ」を商標登録。
「ゆめほっぺ」は、山口県内で収穫された「せとみ」を光センサーを用いて糖度13.5度、クエン酸含量1.35%以下のもので外観秀麗な物だけを選果したブランド商標で、さらに糖度14.5度以上の果実は特選「ゆめほっぺ」として出荷されています。
「ゆめほっぺ」という名前は一般公募で決められ、新しい柑橘に託す「夢」と「ほっぺ」が落ちるほどおいしいという2つの意味が込められているそうです。
◆せとみの特徴
「せとみ」の果実は果重180~200gと温州みかんより大きく、果形はやや扁平で果皮色は濃橙色、果皮はやや粗く厚みがありますが、手で皮は剥けます。
ジョウノウ膜は薄くそのまま食べることができ、果肉は温州みかんに比べやや果汁が少なくしっかりしており糖度が15~16度と高く、それに対し酸度は1.0%前後と甘い食味が特徴です。
種は通常入りませんが、周囲に花粉が多い品種がある場合など稀に入ることもあるようです。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の形は扁球、果形指数は大、果頂部の形は平坦、放射条溝及び凹環の有無は無、果梗部の形は切平面、放射条溝の多少は中である。
果心の充実度は粗、大きさは小、果実の重さはやや重、
果皮の色は濃橙、油胞の大きさは大小混合、密度は中、凹凸は凸、果面の粗滑は粗、果皮の厚さは厚、果皮歩合及び剥皮の難易は中である。
じょうのう膜の硬さは軟、さじょうの形及び大きさは中、色は濃橙である。
果汁の多少は中、甘味は高、酸味は中、香気の多少及び種子数は少、胚の数は多胚である。
発芽期及び開花期は中、成熟期は中で育成地においては3月上旬~4月中旬である。隔年結果性は高、浮皮果の発生は無、裂果の発生は少、貯蔵性は中である。
「清見」と比較して、果形指数が大きいこと、果心が大きいこと等で、「不知火」と比較して、果梗部が切平面であること、果皮の色が濃橙であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみたせとみの食味
撮影試食したせとみは4月8日に直売所で購入したもので、「ゆめほっぺ」としてではなく単に「せとみ」として2個500円ほどで売っていたものです。
果実は270g以上ある「せとみ」としては大きめのものでした。
一見皮がごつごつとしていて甘夏のような外見ですが、皮は想像よりも柔らかく、ナイフを使わなくても手で簡単に剥くことができます。
ジョウノウ膜はとても薄くて柔らかくそのまま食べても気になりませんが、試しに膜を剥いてみると思いのほか綺麗に剥くことができ、一般的に剥きにくい背の部分まで剥けてサジョウの房が缶詰のミカンの様な状態になりました。これだけ綺麗に剥ければ色々なスイーツのトッピングにも映えそうです。ショートケーキなど中に挟んでもしっかりと存在感を感じられると思います。ゼリー寄せにもお勧めです。
食べてみるとこれがまたとても甘くて美味しい。酸味はいい意味で甘味を引き立てていて濃厚な味わいが楽しめました。外見は今一つですがこのサジョウの向け具合や食味は私の心をぐっとつかんできました。
●せとみの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「せとみ」は山口県のオリジナル品種として栽培地は山口県内に限定されています。当然「ゆめほっぺ」も山口県だけです。
農林水産省の特産果樹生産動態等調査によると、2019(令和元)年の栽培面積、および収穫量は47.3ha、326.4トンとなっており、そのうち298.5トンが出荷されています。主な産地は周防大島町 下関市 岩国市となっています。
◆せとみの収穫時期と旬
せとみの収穫は1月下旬~2月上旬に始まります。ただ、収穫後すぐには出荷されず、約1カ月貯蔵され、酸味が落ち着く2月下旬~4月中旬に出荷されます。
「せとみ」及び「ゆめほっぺ」の旬は3月上旬から4月中旬となります。
旬のカレンダー | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | ||||||||
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せとみ・ゆめほっぺ | ||||||||||||
収穫期 |
■せとみの主な栄養素とその働き
●ビタミンCとシネフィリン
ビタミンCを豊富に含んでおり、シネフィリンとともに風邪予防にも大きな効果があるそうです。
●クエン酸効果
クエン酸を含んでおり、体内の酸性物質を減少させる効果や、疲労回復と血をきれいにする働きがあります。
●ペクチンの整腸作用
ジョウノウにはペクチンが多く含まれていて、整腸作用があり、便秘やお腹を壊しているときに効果があります。
●βクリプトキサンチンによるガン予防効果
ミカンなどに含まれるβクリプトキサンチンは、ガン予防への効果が期待されています。
< 出 典 >
※ 「高糖度で特徴的な食感の、中晩生カンキツ新品種「せとみ」の特性」近畿中国四国農業研究成果情報 2005年度(平成17年度)
※ 「登録番号4823305 ゆめほっぺ」商標出願・登録情報 特許情報プラットフォーム 特許庁
※ 「登録番号11721 せとみ」 農林水産省品種登録データベース
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