ファーストトマト:特徴や産地と旬
●ファーストトマトとは
◆ファーストトマトの来歴
「ファーストトマト」は1985年に「桃太郎トマト」が登場するまでは日本のトマトの主要品種でした。
この「ファーストトマト」の発祥は愛知県で、「ポンテローザ」の改良品種とされ、1938(昭和13)年4月20日に豊橋温室組合春季総会で「ファーストトマト」と命名され、組合奨励品種とされたとのことです。※1
「ファーストトマト」はもともと味の良さから全国に普及したのですが、果頂部が突き出た形になるものが多く、また、揃いも良くなかったうえに、保存性が悪く、傷みが早いため、未熟な青いうちに収穫し出荷されるようになり、その為に大切な味がどんどん犠牲にされるようになってしまったんです。
そこに登場したのが丸くつぶそろがよく、しかも日持ちも良くて栽培もしやすい桃太郎「桃太郎トマト」だったんです。それで全国の畑が一気にオセロゲームのように「桃太郎トマト」一色になっていき、一時はほとんど「ファーストトマト」を見かけなくなるまでになっていました。
近年、ファーストトマトの本来の味が見直され、美味しい完熟の状態で収穫された物が出回るようになりました。フルーツトマトと呼ばれる小ぶりのトマトがありますが、これは品種名ではなく与える水分量を調節して味の濃いトマトに仕上げた物を指します。こういった栽培方法にも用いられています。「ファーストトマト」は栽培時の水分調整が難しい品種で、その数は限られていますが、緑健トマト又は永田農法栽培など、産毛がしっかりと生えているトマトで知られています。
また、近頃、このトマトをまだ未熟なグリーンの状態で収穫したものも出回っているようです。赤みがまったく無い青々としたトマトは、それはそれで違った持ち味があり、使いようによっては面白いかもしれません。
◆ファーストトマトの特徴
「ファーストトマト」はダブル花房になりやすく、鬼花もできやすい品種です。果実はよく肥大し、ムキムキとしたマッチョな形になるものも多いです。そして、果頂部がツンと尖った形になりやすいのも特徴です。
果皮は薄く、果肉が透けて見えるほどで、輸送性が低は低いトマトです。
中は断面を見ても分かるように、子室数が多く、その分種子の周りのゼリー状部分が少なく、果肉部分がしっかりとしているのが特徴です。
食味は栽培方法によってかなり違いが出てきますが、甘味酸味のバランスが良く、特徴的なトマトらしいさわやかな香りが持ち味です。
◆美味しいファーストトマトの見分け方
潅水の調整が上手く絞れていて味の濃い美味しい「ファーストトマト」を見分けるポイントが二つあります。
1.果頂部から放射状に綺麗な縞模様が入っているもの。
2.ヘタの周りに濃い緑色の部分があるもの。
お店ではヘタを下にしてパック詰めされていることが多いので、一番目の放射状の縞模様をまずは見つけるようにしましょう。
●ファーストトマトの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「ファーストトマト」は全国各地で作られていますが、まとまった生産量を出荷しているのは愛知県です。愛知県はこの品種の発祥の地でもあり、「あいちの伝統野菜」にも認定されています。
愛知県での主な産地は豊橋市や宝飯郡、渥美地域となっています。
◆ファーストトマトの収穫時期と旬
トマトの旬は夏? と思いがちですが、愛知県のハウス栽培においては美味しい「ファーストトマト」が穫れる時期は12月から6月ごろにかけてで、最盛期は1~3月、冬から春にかけてが旬となります。
露地物が収穫できるのは初夏から夏にかけてですが、露地物ではこの時期雨も多く、いい状態になりにくいです。
品種 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ファーストトマト (ハウス物) |
< 出 典 >
※1 「野菜園芸大百科 トマト」農山漁村文化協会出版(1988/11/1)
※ 「ほっとマルシェ ファーストトマト」中日新聞ほっとWeb