安納芋(あんのういも):特徴や旬の時期と主な産地
■安納芋(あんのういも)とは
◆安納芋の来歴
「安納芋」は戦後、スマトラ島から帰還した兵隊さんが現地から持ち帰った芋を鹿児島県の種子島北部にある安納地区で栽培し始めたのが起源と伝えられています。その後その芋は安納の芋として島内に広まり「安納芋」と呼ばれるようになったのだとか。
こうして種子島で作られてきた安納芋は今日まで在来種として定着していましたが、昭和の終り頃、このとろけるような甘いサツマイモが注目されるようになり、種子島以外でも栽培が広まっていきます。すると、同じ安納芋であっても系統や産地、環境などによって味や品質に大きなバラツキがみられるようになってきました。今では本州でも各地で「安納芋」が作られ、よく目にするようになりましたが、実際、食べてみると種子島から取り寄せて食べた時のような感動はなく、普通のものよりは甘いかな・・といった程度のものも多いです。
そこで鹿児島県が鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場で1989(平成元)年から優良品種の選抜育成を始め、1998(平成10)年に「安納紅」と「安納こがね」という2品種を品種登録。当面の間栽培は種子島に限定されていました。
種子島全体では農家と行政、農協などが一丸となって「安納いもブランド推進本部」を立ち上げ、品質基準を統一しブランド化を進めています。そして2022(令和4)年3月には「種子島安納いも」として地理的表示保護制度(GI)対象品目に登録されています。
■安納芋(あんのういも)の主な品種やブランド
「安納芋」と呼ばれるものにはいくつかの品種や、その中から選抜育成された品種などがあり、さらに産地などのブランド名もあってすこしややこしいので、分かりやすく整理して紹介します。
●安納紅(品種)と安納こがね(品種)
安納芋(あんのういも)は種子島の特産として知られるサツマイモです。一般的な安納芋は表皮が赤く「安納紅」とも呼ばれているものですが、その中から表皮の色が白いタイプが生まれ、それを選抜育成していったものが「安納こがね」です。
どちらも水分が多く粘質性で、焼くとまるでクリームのようにネットリとした食感になります。また、生の状態で16度前後と非常に糖度が高く、じっくりと時間をかけ て焼く事により糖度が40度前後にもなる芋として人気が高まりました。
●フルーツこがね(品種)
株式会社山陽種苗が苗を販売しているイモで、種子島の安納いも系で最も甘味のある系統を選抜育成したものだそうで、2010(平成22)年に商標登録申請が出され、2011(平成23)年に登録されています。
農林水産省の品種登録データベースに記載されているそれぞれの特徴は下記のとおりです。
<登録番号6862 安納紅>
『 藷梗の長さは短、強さは中、いもの形状は長紡錘形、はやや下膨れ、大小は中、皮色は基本色は褐、補助色は紅、濃淡はかなり淡、分布は均一、肉色は淡黄、条溝は微、皮脈は無、外観は中である。萌芽の遅速、多少、早掘適性、アール当たりの上いも重、貯蔵性及びカロチンの多少は中である。
「高系14号」と比較して、頂葉色が紫であること、いもの皮色の基本色が褐であること等で、「種子島在来(紅)」と比較して、いもの形状が長紡錘形であること、いもの条溝が少ないこと等で区別性が認められる。』
<登録番号6863 安納こがね>
『 藷梗の長さは短、強さは中、いもの形状は円筒形、大小は中、皮色は基本色は黄、補助色は褐、濃淡は淡、分布は均一、肉色は淡黄、条溝は微、皮脈は無、外観は上である。萌芽の遅速、多少及び早掘適性は中、アール当たりの上いも重は多、貯蔵性及びカロチンの多少は中である。
「コガネセンガン」と比較して、葉形が波・歯状心臓形であること、葉脈色及び蜜腺色がないこと、いもの形状が円筒形であること、いもの条溝が少ないこと等で、「種子島在来(紅)」と比較して、葉脈色及び蜜腺色がないこと、いもの形状が円筒形であること、いもの皮色が黄であること、いもの条溝が少ないこと等で区別性が認められる。』
◆「安納もみじ」(ブランド)
「安納もみじ」という名称は種子屋久農業協同組合の登録商標で、「安納こがね」の中でも、果肉の色に少し紅が入ったような系統のものを「安納もみじ」として出荷しています。
◆「島あんのう」(ブランド)
「島あんのう」はJA種子屋久の登録商標です。 (登録品種名 : 安納紅)
◆「灯籠蜜いも」(ブランド)
熊本県山鹿で種子島産の安納芋をもとに栽培方法などを工夫し改良されたものの産地ブランドです。
■安納芋(あんのういも)の産地と食べ頃の旬
●安納芋の主な産地
現在、この安納紅と安納こがねは鹿児島県の登録品種苗として種子島でのみ栽培が認められており、他の地域では認められていませんでした。ただ、在来品種にはこの規定が無いので、同様の物は他の地域でも作られてきました。また、この制限は平成25年までなので、それ以降は各地での栽培も可能となっています。
とはいうものの、この安納芋の美味しさに育てられる土壌、気候風土は種子島ならではかも知れません。
●安納芋の旬は
9月頃から12月にかけて収穫されます。美味しくなるのは収穫後2~3週間経ってからなので、旬は10月中旬から1月と言えます。それ以降も、定温管理されたものが市場には出回ります。
品種 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | ||||||||||
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安納紅 | |||||||||||||||
安納こがね |
< 出 典 >
※ 「さつまいも」島の農畜産物 種子屋久農業協同組合
※ 「産地紹介:鹿児島県 JA種子屋久たねやく ~しっとりとした食感とクリーミーな甘さの「 種子島産安納あんのういも」~」野菜情報 独立行政法人農畜産業振興機構 2018年11月
※ 農林水産省品種登録データベース