秋麗(しゅうれい) < 梨の品種
■秋麗(しゅうれい)とは?
「秋麗(しゅうれい)」は農研機構が「幸水」と「筑水」の交配から選抜育成した、果形が扁円で大玉になる、果皮色が黄緑の青ナシで、育成地の茨城県では9月上旬~中旬に成熟する中生種です。
●秋麗の来歴
「秋麗(しゅうれい)」は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所が「幸水」に「筑水」の花粉を交配し、得られた実生から選抜育成した青ナシ品種です。育成の過程は下記のとおりです。
1982(昭和57)年 茨城県つくば市にある果樹研究所において「幸水」に「筑水」の花粉を交配。その種子を得る。
1983(昭和58)年 種子を播種して実生を養成。
1984(昭和59)年 個体番号281-9を付して実生選抜圃場に定植。
1987(昭和62)年 初結実。
1991(平成3)年 果実品質や果実肥大性、成熟期などから一次選抜。
1992(平成4)年 「ナシ筑波46号」の系統名を付してナシ第6回系統適応性検定試験に供試。
2000(平成12)年 1月、平成11年度落葉果樹系統適応性・特性検定試験 成績検討会議において新品種候補とされ、2月、平成11年度果樹 試験研究推進会議において新品種候補に決定。
10月、農林水産省育成農作物新品種命名登録規程に基づいて「秋麗」と命名され、「なし農林 21号」として登録。
2001(平成13)年 種苗法に基づく登録出願。
2003(平成15)年 品種登録完了。
ところで、「幸水」も「築水」も赤梨なのに、その子供は青梨なんだ・・・と思う方もいると思います。でも、「幸水」は「菊水」(青ナシ)×「早生幸蔵」(赤ナシ)、そして「築水」は「豊水」(赤ナシ)×「八幸」(青ナシ)と、いずれも赤梨とはいえ親をたどれば青梨の血が流れている梨なのでこういう事が起こるのでしょう。
●秋麗(しゅうれい)の特徴
秋麗(しゅうれい)は背が低めでやや扁平な形をしています。大きさは平均350g前後とされています。果実の表面は無袋栽培の場合全体にサビが沢山出る傾向にあり、見た目は美しいとはいいがたい感じです。袋掛けして栽培されたものはサビもほとんど出ず綺麗な果実になるようですが、その分糖度が上がりきらないというデメリットがあります。
無袋は外見は悪いのですが、糖度が13度前後ととても高くなり、食べた時にほとんど酸味が感じられないため柿にも似た濃厚な甘さを感じます。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の形は扁円、果形指数はやや小、梗あの深さはやや深、広さはやや広、ていあの深さはやや深、広さは広、有てい果の有無は混在、果実の大きさは大、
果皮の色は黄緑、果点の大きさは小、密度は中である。
果梗の長さは短、太さは太、肉梗の有無は混在である。果芯の形は長心臓、大きさは小、
果肉の色は白、硬さは軟、粗密は密、切口の褐変は中、甘味は高、酸味は弱、香気は中、果汁の多少は多、種子の形は卵、大きさは中である。
開花期は晩、成熟期は中で育成地においては9月上旬~中旬、後期落果は無~僅か、裂果は無、果実の貯蔵性は中である。
「秀玉」と比較して、花色が白いこと、有てい果が混在していること、果点が小さいこと、果梗が短いこと等で、「ゴールド二十世紀」と比較して、果実が大きいこと、甘味が高いこと、酸味が弱いこと等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
●実際に食べてみた秋麗(しゅうれい)の食味
「秋麗」はどれも外見的には美しいとは言いにくいサビだらけのものが多いですが、皮をむいてしまえば果肉は白く、緻密で歯ざわりは柔らかく「二十世紀」のようなシャキシャキ感はあまりありませんが、とてもジューシで甘く美味しい梨です。
歯触りはとても軽く、果汁が多いことと、甘味も甘すぎず飲み物のような感覚で食べられます。計ってみた糖度は12~13どのものが多いです。
価格も手ごろで、気軽に食べられる美味しい梨といった印象です。
■秋麗(しゅうれい)の主な産地と旬
●熊本県の一押しブランド
政府がまとめている特産果樹生産動態等調査で見ると、秋麗(しゅうれい)の主な産地は熊本県で、熊本県の栽培面積はH20年に2.8haしか作られていませんでしたがH21年には7.6ha、そしてH22年には12.6haと年々急ピッチで拡大しています。これは熊本県が、県をあげてブランド化を推し進めているからでしょう。熊本県産の秋麗梨にはくまモンのロゴ入りシールが貼られ、各地でPRも行われています。また、熊本では甘さを前面に出した無袋栽培が中心になっています。
現在他の地方でも生産が始まっているようですが、その数はまだまだ少ないです。2019(令和元)年産で見るとやはり熊本県が76%を占めており、次いで広島県、新潟県、そして東京都となっています。
●秋麗(しゅうれい)の出回る旬
秋麗(しゅうれい)は育成地(茨城県つくば市)では9月上旬~中旬に成熟する中生種となっています。
一大産地の熊本県では収穫が8月中旬から下旬にかけて行われ、市場には9月上旬まで出回ります。
旬のカレンダー | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||||
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秋麗(しゅうれい) |
< 出 典 >
※ 「ニホンナシ新品種‘秋麗’」農研機構 果樹研究所研究報告 3号 p. 31-40 2004年3月
※ 「秋麗(しゅうれい)」農研機構 育成品種紹介
※ 「登録番号11119 秋麗」 農林水産省品種登録データベース