新星(しんせい):来歴や特徴と産地や旬
●新星(しんせい)とは
「新星」は農林省果樹試験場が「翠星」と「新興」の交配から得られた実生を選抜育成した関東地方中部において、9月下旬~10月上旬に成熟する赤ナシ品種です。
◆新星の来歴
「新星」は茨城県つくば市にある農林省果樹試験場(現 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所)において「翠星」に「新興」の花粉を交配し、得られた実生から選抜育成された赤ナシです。育成過程は下記の通り。
1952年 農林省農業技術研究所園芸部において「翠星」に「新興」の花粉を交配
1955年 「長十郎」に高接ぎ。
1959年 初結実。
1960年 一次選抜。これ以降、平塚、鳥取県、埼玉県にて試作開始。
1972年 系統名「ナシ平塚33号」とし、個体番号「9-5」としてナシ第4回系統適応性検討試験に供試開始。
1982年 農林水産省育成農作物新品種命名登録規程に基づいて「新星」と命名し、「なし農林11号」として農林登録された。種苗法に基づき登録出願。
1984年 品種登録完了。
ここまでの経過を振り返ると、交配から登録まで32年もの月日をかけて生み出されたことになります。
「新星」は他の品種に勝てず、現在は産地、生産量がとても少ない希少品種となってしまっています。
◆新星の特徴
「新星」の果実の特徴は農研機構の資料によると以下の通りです。
●果皮色は黄褐色の赤ナシで、果面には「新興」に似たわずかな凸凹が見られる。
●果実重は300~350g程度、果形に特徴があり、円楕円~卵形で、リンゴのデリシャス型に似て、へた付きの果実も多い。
●果肉は柔らかくち密で、糖度が12~13%で「豊水」程度、酸味は「豊水」より少ない。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実は円楕円形で、蒂端部がやや細く、りんごのデリシャス型に似た果形が混在する。果実の大きさは1果平均約350g、「新高」「新興」「豊水」よりも小さい。
果皮の色は赤褐色で、果点は密に分布する。
果肉は黄白色で、肉質は軟かく、「豊水」と「新興」の中間位で、ち密である。果汁は多く、甘味は多く、糖度12度内外で「豊水」と同程度、「新高」より多少高い。酸味はPH4.9程度で「豊水」より少ない。
成熟期は育成地(茨城県筑波郡谷田部町)において9月下旬で、「新高」より10日、「新興」より20日位早く、「豊水」より10日位遅い。
芯腐れ、みつ症状、裂果はほとんどみられない。日持ちは2週間程度である。黒斑病抵抗性は強い。
「新高」及び「新興新興」と比較して、成熟期が早いこと、果実が小さいこと、果肉がち密で軟かいこと等で、「翠星」と比較して、果皮色が異なること等で、「豊水」と比較して、成熟期が遅いこと等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた新星の食味
撮影した「新星」は9月11日に滋賀県近江八幡市にある直売所で購入したもので、果重は500~630gでこの品種としては大玉でした。
果形が梨らしくなく、特徴にあるようにリンゴのデリシャス系のように肩が張り果頂部が狭くなっています。
食味は比較的軽い歯触りで果汁が多く、甘味の強さに対して酸味はあまり感じませんでした。計った糖度は13.5%あり、全体にとても美味しい梨でした。
●新星(しんせい)の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「新星」は全国的に栽培面積が少なく希少な品種となっています。
令和元年産の特産果樹生産動態等調査によると全国の際s倍面積は6.2haで、群馬県、新潟県、山形県、千葉県のみとなっています。もちろん、ここに記録されていない産地でも個々の農園でわずかに栽培はされていると思いますが、いずれにしても生産量はとても少ないです。
◆新星の収穫時期と旬
農研機構の紹介では、「新星」の収穫時期は関東地方中部において、9月下旬~10月上旬となっていますが、その後収穫期が前進する傾向をみせており、「豊水」と同様の時期である年もあるようです。
撮影した滋賀県産のものは9月11日に販売されていたので、出回るのは9月中旬頃から10月上旬辺りにかけてでしょう。
品種 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | ||||||||
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新星 |
< 出 典 >
※ 「新星(しんせい)」果樹茶育成品種紹介 農研機構
※ 「ニホンナシの新品種“新星"について」農林省果樹試験場 11号 p. 9-13 1984年3月
※ 「登録番号526 新星」 農林水産省品種登録データベース