◆甘太の来歴
「甘太」の開発の過程は以下の通りです。
1998年 果樹研究所において、晩生で収量性が優れる「王秋」に、中晩生で食味が優れる「あきづき」を交杯。
2000年 得られた実生を選抜圃場に定植。
2006年 一次選抜。
2007年~2012年 「ナシ筑波58号」としてナシ第8回系統適応性検定試験に供試。
2013年 系統適応性検定試験成績検討会において新品種候補と決定し、種苗法に基づく登録出願。
2015年 品種登録完了。
「甘太」は高糖度で食味が良く、かつ栽培が容易で豊産性の晩生品種として注目されていますが、まだ新しい品種という事で生産量は少なくまだあまり多くは出回っていません。
名称は『甘くて、果実肥大が良く(太)、栽培が容易(簡単)であること』に因むそうです。
◆甘太の特徴
「甘太」の果実は果重570g程度と大きく、形は広楕円形です。
果皮色は黄緑色で果点は小さめの青梨品種となっています。
農研機構の紹介によると、果肉は名前の通り糖度が高く「幸水」、「豊水」、「新高」を越え、硬さは「新高」より軟らかく「幸水」、「豊水」並となっています。
果汁pHは「豊水」や「新高」に近く、酸味が少しありますが、糖度の高さと相まって食味は濃厚となっています。
栽培面では「幸水」、「豊水」、「新高」より収量が多い豊産性で、日持ち性は「新高」ほど長くなく「豊水」と同程度以上となっています。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の形は広楕円形、梗あの深さは中、梗あの幅は中、がくあの深さはやや浅、がくあの幅は中、果実の大きさは大、
果皮の色は黄緑、果点の大きさは小、果点の粗密はやや粗、
果柄の長さは中、果柄の太さは中、肉梗の有無は無、果芯の形は短紡錘形、果芯の大きさは中、
果肉の色は白、果肉の硬さは軟、果肉の粗密はやや密、果実の甘味は高、果実の酸味は中、果汁の多少は多、
種子の大きさは大、種子の形は卵形、
開花始期は中、成熟期は晩、自家和合性は無、裂果の発生の有無は無である。
出願品種「甘太」は、対照品種「豊水」と比較して、がく片の宿存の強弱が強であること、果皮の色が黄緑であること等で区別性が認められる。
対照品種「新高」と比較して、がく片の宿存の強弱が強であること、果皮の色が黄緑であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた甘太の食味
撮影試食した甘太は9月26日に届いた鳥取県産のもので、1.9kg3玉入り3000円(送料別)ほどでした。
果重は一番大きなもの700gほどある大きな梨で、果皮表面は黄緑色の地に黄褐色のサビ状のまだらがあり、青梨というより、青梨と赤梨を混ぜたような外見です。
食べてみると、果肉はシャキシャキとしながらとても歯触りが軽く、そして果汁がとても多く甘さが口いっぱいに広がりました。甘さが強いわりに果汁が多いため後口はさっぱりとしていてとても美味しい梨でした。計った糖度は13.9度でした。
●甘太の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「甘太」は系統適応性検定試験で全国33県で試作栽培試験が行われた結果、南東北以南の大部分の県で有望と評価されています。
ただ、まだ登場してから浅いせいか全国の栽培面積はそう多くはなく、平成30年産特産果樹生産動態等調査を見ると全国でまだ8haとなっており、熊本県の3haをはじめ、佐賀県2.8ha、千葉 1.2ha 、東京 1.0haしか記録がありませんでした。
これには記録されていない産地でも栽培しているところはありますが、まだ全国の生産量が少ない品種に違いはありません。
◆甘太の収穫時期と旬
「甘太」の収穫時期は産地によって多少幅がありますが、9月下旬頃から始まり10 月中旬頃までです。
育成地の茨城県つくば市では「新高」に近い10月上旬となっています。
全国の栽培が増えていけば市場に出回る量が増えるとともに、その期間も長くなるので、今後に期待したいところです。
品種 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | ||||||||
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甘太 |
< 出 典 >
※ 「ニホンナシ新品種‘甘太’」農研機構報告 果樹茶部門 Bull. NARO, Fruit Tree and Tea Sci. 3: 1~9, 2019
※ 「 甘太(かんた)」果樹茶育成品種紹介 農研機構ホームページ
※ 「高糖度、軟肉質で食味良好、豊産性の晩生ニホンナシ新品種「甘太(かんた)」」果樹研究所 2013年の成果情報 農研機構
※ 「ニホンナシ新品種‘凜夏’と‘甘太’」鳥取県ホームページ
※ 「甘太」品種登録データベース 農林水産省ホームページ