よしひめ:来歴や特徴と産地や旬
●よしひめとは
「よしひめ」は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構が、「21-18」(「中津白桃」と「布目早生」の交配から育成された、大玉で果実品質は比較的良いが日持ち性が悪い)に「あかつき」の花粉を交配し、得られた実生から選抜育成された中生種の桃です。
◆よしひめの来歴
「よしひめ」の交配から育成の過程は以下の通りです。
1973年 神奈川県平塚市において「21-18(中津白桃×布目早生) 」に「あかつき」の花粉を交配、得られた実生苗を養成。
1974年 茨城県の果樹試験受千代田圃場に定植。
1976年 初結実。
1978年 優良品種として選抜。
1981年 「モモ筑波89号」として第5回系統適応性検定試験を実施、全国14箇所で試験。
1989年 本度系統適応性検定試験成績検討会において新品種候補となる。
1990年6月22日 「もも農林19号」として農林登録。そして「よしひめ」として種苗法に基づく登録出願。
1993年 品種登録完了。
「よしひめ」は同時に公表された「まさひめ」とは同じ交配組み合わせで生まれた姉妹品種です。
◆よしひめの特徴
「よしひめ」は果実重250 g程度で、大玉生産が可能な品種となっています。果実は円形で果頂部はくぼみますが縫合線はあまり顕著にくぼまない傾向があります。
果皮色は乳白の地色に全体に縞状に赤く着色します。
果肉は白く、核周囲及び果肉内に紅色素が比較的多く入ります。肉質は緻密で溶質ですが比較的日持ち性はいいです。
果汁は多く糖度は12~13%に対し酸味は少なく食味が良い桃となっています。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の外観は円、果頂部の形は凹、凹みはやや深、梗あの深さはやや深、広さはやや狭である。
果実の大きさは大、果皮の地色は乳白、着色の多少は多、着色の濃さは濃、着色の形は条である。
果肉の色は白、果肉内の着色は中、核周囲の着色は少、果肉の粗密はやや密、果皮の剥離性は中、肉質は溶質である。
果汁の多少は多、甘味はやや多、酸味は少である。核と果肉の粘離は粘、核の形は楕円、大きさは大である。
成熟期は満開後111~120日、育成地においては7月末である。
生理落果の多少は少、核割れの多少は微、裂果は無、果実の日持ちは中である。
「白鳳」と比較して、果皮の着色が多く、濃いこと、着色の形が条であること、果肉内及び核周囲の着色が多いこと等で、「まさひめ」と比較して、果頂部の凹みが深いこと、果皮の着色が多く、濃いこと、着色の形が条であること、核周囲の着色が少ないこと等で区別性が認められる。
-----』以、抜粋。
◆実際に食べてみたよしひめの食味
撮影試食した「よしひめ」は滋賀県産で8月初旬に購入したものです。
果重は320前後あり、果形も左右のバランスがいい綺麗な丸い形で、果実表面はすじ状に赤色がさし、特に日光に当たっていたであろう麺が赤く色付いていました。
果実からは甘い桃の香りが出ていて、果皮表面に白い果点が沢山現れており糖度がのっていることがうかがえます。
種と果肉は密着しており、縫合線にそって包丁を入れても外れませんでした。果肉には核のまわりだけでなく、部分的に結構濃い赤色がにじんだようにさしていました。
食べてみると強い甘みと柔らかい酸味が広がり、果点の有無を裏付けてくれました。ただ、果肉に多く入っている赤い色素のせいか、後口に渋みも感じられたのが少し残念でした。ちなみに、糖度を計ると14.2度でした。
●よしひめの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「よしひめ」は生産者が少なく、農林水産省が作成している2019(平成30)年産特産果樹生産動態等調査で見ると、香川県で2.9haで作られているほか、愛媛県と富山県でそれぞれ1.1haで栽培されているだけとなっています。
それ以外の桃産地では個々の農園でわずかに作られている程度のようです。
◆よしひめの収穫時期と旬
「よしひめ」の収穫時期は「白鳳」より8日ほど、「あかつき」より10日ほど遅い中生種となっており、産地によって時期はずれますが、香川県や愛媛県では7月中下旬頃で8月初旬頃までのようです。
品種 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | ||||||||
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よしひめ |
< 出 典 >
※ 「モモ新品種‘よしひめ'」果樹試験場報告23号 1992年9月
※ 果樹研究所育成品種紹介「よしひめ」 農研機構ホームページ
※ 品種登録データベース 農林水産省ホームページ