肥のさやか :来歴や特徴と産地や旬
●肥のさやかとは
◆肥のさやか の来歴
「肥のさやか」は1986(昭和61)年、熊本県農業研究センター果樹研究所において「上野早生」に「福原オレンジ」を交配し、珠分離・培養後、カラタチに寄せ継ぎして育成された珠心胚実生から選抜育成されたみかんで、2001年熊本県によって登録出願され、2004年に品種登録されています。
10月初旬に収穫出荷できる極早生種として栽培出荷されており、10月上旬から11月上旬頃に出回る熊本県産の何割かは本種という事になりますていますが、温州ミカンはスーパーや八百屋などで売られる際、品種名を表示されることがほとんどなく、単に”早生みかん”として売られていることが多いので消費者はあまり意識しないと思います。
今回入手した「肥のさやか」は全国の百貨店や果実店などから高い評価を受けておられる生産者立山誠一氏の不動岩果樹園で作られたもので、品種名ではなく、立山氏独自のブランド名である「蜜柑 ちなつ」として出荷されています。(※品種は収穫時期によって変わります)
◆肥のさやか の特徴
「肥のさやか」の果形はやや扁平で、果実の大きさは「豊福早生」や「宮本早生」などと同じくらい。果皮色は濃橙で表面は比較的滑らかで皮が薄い。
じょうのう膜はやや薄くサジョウの色は果皮の色と同じようにやや濃い色をしています。
甘味酸味ともにあまり強くはなくさっぱりとした味わいのみかんとなっています。種はありません。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の形はやや扁平、果形指数は中、果頂部の形は平坦、放射条溝の有無は無、凹環の有無は不明瞭、果梗部の形は切平面、放射条溝の多少は無である。
果心の充実度は中、大きさはやや大、果実の重さはやや軽、果皮の色は濃橙、油胞の大きさ及び密度は中、凹凸は平、果面の粗滑はやや滑、果皮の厚さは薄、果皮歩合は中、剥皮の難易は易である。
じょうのう膜の硬さはやや軟、さじょうの形及び大きさは中、色は濃橙である。
果汁の多少は中、甘味はやや低、酸味は低、香気の多少は中、種子数は無、胚の数は多胚である。
発芽期、開花期及び成熟期は早で育成地においては10月上旬である。
隔年結果性及び浮皮果の発生は中、裂果の発生は無、貯蔵性は短である。
「上野早生」と比較して、樹勢が強いこと、成熟期が早いこと等で、「豊福早生」と比較して、枝梢のとげが無いこと、果汁が少ないこと等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた肥のさやか の食味
今回食べたものは名人と言われる立山誠一氏の手による「蜜柑 ちなつ」です。立山氏は樹に与える水分を制限して適当なストレスを与えるなど独自の栽培技術により甘みと酸味を高いレベルでバランスがとれた蜜柑を作られることで知られています。
皮は薄く、果肉との間に隙間がないこともあり、ややむきにくい感じではありますが、剥いてしまうとジョウノウに白い綿がほとんど残らず、じょうのう膜も薄いです。
食べてみるとサジョウの粒感が舌に感じられ、甘みと酸味のバランスがとても良く、『甘味はやや低、酸味は低』という「肥のさやか」の特徴とは思えない味の濃いミカンでした。
●肥のさやか の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「肥のさやか」は熊本県が生み出したオリジナル品種なので、熊本県内でのみ栽培出荷されています。
農林水産省の平成28年産特産果樹生産動向調査によると、「肥のさやか」の栽培面積は86.9haとなっています。
◆肥のさやか の収穫時期と旬
「肥のさやか」は10月上旬から収穫できる極早生品種となっており、沢山市場に出回る旬の時期は10月中~下旬となります。
品種 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
肥のさやか |