紀のゆらら(YN26):来歴や特徴と産地や旬
●「YN26」/「紀のゆらら」とは
「紀のゆらら」とは和歌山県内で栽培された「YN26」のうち、一定の基準を満たしたものに付けられた登録商標です。「YN26」は和歌山県が「ゆら早生」に「紅まどか」を交配し育成した温州ミカンの極早生品種で、「ゆら早生」より減酸が早く、9月中旬頃から出回り始めます。
◆「YN26」/「紀のゆらら」の来歴
「YN26」は和歌山県農林水産総合技術センタ ー果樹試験場(現 和歌山県果樹試験場)において「ゆら早生」にブ ンタンの一種「紅まどか」の花粉を交配し、得られた珠心胚実生から選抜育成されました。育成から流通するまでの過程は下記のとおりです。
2001(平成13)年 「ゆら早生」を種子親、「紅まどか」を花粉親として交配、種子を得る。播種後、発芽した実生を養生し、その中から温州ミカンのみを選別し、温州ミカン中間台木に高接ぎ。結実した中から「ゆら早生」を基準に減酸が早く早熟性で糖度の高い個体を一次選抜。
2006(平成18)年 「ゆら早生」「日南 1 号」を基準に着色,減酸が早い個体を最終選抜。
2009(平成21)年 種苗法に基づき、和歌山県育成品種「YN26」として品種登録出願。和歌山県果樹試験場で原木からカラタチ台木に接ぎ木を行い、「YN26」母樹(1年生苗)を仕立て、和歌山県果樹育苗組合員で増殖を希望した23名に対し、母樹を配付。これを秋芽接ぎで増殖。2011(平成23)年春までに育苗した分のほとんどを自己増殖とする。
2011(平成23)年 高接ぎ用穂木の販売が始まる。
2012(平成24)年 品種登録が完了。 1年生苗木の生産者への販売が開始される。
2013(平成25)年 収穫が始まる。
2014(平成26)年 和歌山県農業協同組合連合会が一定の基準を満たした「YN26」の果実に対し使用する 商標として「紀のゆらら」という名称を登録出願。
2015(平成27)年 「紀のゆらら」の商標登録が完了。
「YN26」はJAグループを通して集荷出荷され、一定の基準を満たしたものが「紀のゆらら」として店頭に並んでいるほか、JAを通していないものでも和歌山県に申請し、一定の基準を満たしたものがこの名称で販売することが可能となっているようです。また、個々の農園で「ゆらのさきがけ」のように独自の名称を付けて販売されているものもあります。
◆「YN26」/「紀のゆらら」の特徴
「YN26」の果実は小玉果が多い傾向があり、果重は100g程度、横径は60mm前後のM~Sサイズで「ゆら早生」よりもやや扁平で、「日南 1 号」「宮本早生」よりもやや腰高となっています。撮影したものは75~80gでした。
果皮色は果実全面の緑色が早く均等に脱け て黄色く着色し、着色部の色が「ゆら早生」ほど濃くならず黄色に近い色合いです。
ジョウノウ膜は「ゆら早生」と同じくらいで薄く、ジョウノウ膜ごと食べられます。糖度は10~11度でクエン酸含有率は1%以下となっています。
「紀のゆらら」として出荷されるものは、以下のような基準が設けられています。
着色:10月上旬まで 3分着色以上、10月中旬 4分着色以上、10月下旬以降 6分着色以上
糖度:10%以上
クエン酸:出荷時 1.00以下
等級 秀・優・良
サイズ: 2L ~ 2S
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の形は扁球、果頂部の形は平坦、果頂部放射条溝の有無は無、果頂部の凹環の有無は不明瞭、
果梗部の形は球面、果梗部放射条溝の多少は無、果心の充実度は中、果心の大きさは小、果実の重さは中、
果皮の色は黄橙、油胞の大きさは中、油胞の密度はかなり密、油胞の凹凸は平、果面の粗滑は滑、果皮の厚さは中、果皮歩合は大、
剥皮の難易は易、じょうのう膜の硬さは軟、
さじょうの形は中、さじょうの大きさは中、さじょう(果肉)の色は濃橙、果汁の多少はやや多、甘味は高、酸味はかなり低、香気の多少は中、種子数は無、
発芽期は中、成熟期はかなり早、浮皮果の発生は無、裂果の発生は無、貯蔵性は短である。
出願品種「YN26」は、対照品種「ゆら早生」と比較して、酸味がかなり低であること、成熟期がかなり早であること等で区別性が認められる。
対照品種「日南1号」と比較して、葉身長が短であること、葉形指数が小であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた紀のゆららの食味
撮影試食した「紀のゆらら」は10月1日にスーパーで購入した、果皮色は黄緑から黄色に着色が進んだ状態で、果重75~80gの小さなものでした。
果実が小さく、皮が比較的薄くてジョウノウ膜とぴったりと張り付いているため、ややむきにくさはありますが、手で剥けます。ジョウノウ膜は厚くはないですが特に薄いというほどではありません。
食べてみると、極早生みかんにしてはしっかりと甘く、酸味は控えめで美味しかったです。計った糖度は12.4%でした。
●「YN26」/「紀のゆらら」の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「YN26」は和歌山県のオリジナル品種で、苗木の供給は和歌山県内に限られ和歌山県内でのみ栽培出荷されています。また、「紀のゆらら」は和歌山県農業協同組合連合会の登録商標でこちらも県内産のものにしか使用が限られています。
令和元年産特産果樹生産動態等調査によると、和歌山県での栽培面積は53.1haとなっています。
◆「YN26」/「紀のゆらら」の収穫時期と旬
「YN26」の収穫時期は9月中旬から下旬にかけてとなっており、この短い期間に市場に出回ります。
品種 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | ||||||||
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紀のゆらら |
< 出 典 >
※ 「極早生温州「YN26」品種特性と導入に向けてのポイント」和歌山県西牟婁振興局 技術情報(技術試験紹介)
※ 「温州ミカン新品種「YN26」の品種特性と栽培上の注意点」和歌山県果樹試験場 平成26年
※ 「登録番号21314 」 農林水産省品種登録データベース
※ 「登録5757395 紀のゆらら」特許庁 特許情報プラットフォーム