ゆら早生:来歴や特徴と産地や旬
●ゆら早生とは
◆ゆら早生の来歴
「ゆら早生」は1985(昭和60)年に和歌山県日高郡由良町の山口寛二氏が自園の「宮川早生」の中から発見した枝変わりを高接ぎし育成したもので、和歌山県果樹園芸試験の協力も得ながら特性調査を行い、1993(平成5)年に和歌山県農業協同組合連合会によって品種登録出願、1995(平成7)年に品種登録されています。
「ゆら早生」は育成地において10月上旬に熟す極早生種で、この時期の温州ミカンの中ではとても甘みが強く高糖度系と呼ばれる品種の一つで、「旬の食材百科」の一押しのみかんです。
◆ゆら早生の特徴
「ゆら早生」は果重110gほどですが小さいものが多い傾向があり、大玉にするのが難しいと言われています。果形は扁平した球形ですが、一般的な温州みかんに比べ、やや腰高の形をしています。
この写真は特Sサイズの「ゆら早生」で、とても小さく1個平均42gほどでした。
こちらはLサイズのもので、110~150gのものが入っていました。
果皮色は表皮が青いうちに収穫されるものから黄色く熟してから収穫されるものまでありますが、熟したものの果皮は明るい黄橙色で果皮は比較的薄く中の果肉にぴったりと付いていて隙間はありませんが、手で簡単に剥くことができます。
中のジョウノウ膜は薄くて柔らかく、サジョウはやや濃い橙色おしており、多汁で糖度は12度前後と甘いのが特徴です。上の写真は左が特Sサイズで右がLサイズの断面です。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の外観は円,果形指数は~135,果頂部水平域の果実横径に対する比は小,果頂部凹部の深さは浅,花柱痕の大きさは中,果梗部水平域の果実横径に対する比は小,果梗部放射条溝果の多少は少,中心柱の大きさは小,果実の大きさは中(110g程度)である。
果皮の色は黄橙,油胞の大きさ及び果面の平滑度は中,油胞の密度は密,凹凸はやや凸,凹点の多少は無~少,果皮の厚さは中,剥皮の難易は易である。
じょうのう膜の硬さは軟,砂じょうの色は橙,果汁の多少は多,甘味は多(糖度12度程度),酸味及び香気は少である。
成熟期は極早,育成地においては10月上旬である。
隔年結果性は中,浮皮果の発生及び裂果の多少はでにくい,貯蔵性は小である。
「宮川早生」と比較して,花柱痕の大きさが大きいこと,果皮の厚さが厚いこと,成熟期が早いこと等で,「宮本早生」と比較して,中心柱の大きさが小さいこと,果皮の厚さが厚いこと,甘味が多いこと等で,「上野早生」及び「紀宝早生」と比較して,花柱痕の大きさが大きいこと,果面の平滑度が粗いこと,果皮の厚さが厚いこと,甘味が多いこと等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみたゆら早生の食味
今回入手した「ゆら早生」は10月上旬に購入した特Sサイズと10月中旬に購入したLサイズでいずれも和歌山県産です。
特Sサイズのものはまだ果皮に緑がかなり残っている状態で、一つ一つがとても小さく、スダチと間違えるほどのサイズでした。
そして上の写真のように皮が非常に薄く果肉がぴっちり詰まっています。一見皮がむきにくそうに見えますが、意外にも手で簡単に剥け、果肉はしっかりと熟していました。
みかんは小粒の方が美味しいものが多い傾向にあると私は考えていますが、この「ゆら早生」もその期待を裏切らない甘みの強さと適度な酸味がありとても美味しいみかんでした。
このスダチサイズだと皮を剥いてスライスしたものをトッピングに使うと面白いのではと思います。また、弁当に入れるデザートには丁度いいサイズではないでしょうか。
そしてこちらはLサイズの方です。
こちらはほんの少し緑が残る程度で、全体に明るい黄橙色になっていました。特Sの方に比べると皮は厚く感じますが、果肉との間に隙間はなく果肉がぴっちり詰まっているのは同じです。
そしてその味は特S以上に甘みが強く酸味が少なく感じ、甘味酸味のバランスが絶妙でとても美味しいみかんでした。
特SもLサイズもいずれも房と房をはがすとジョウノウ膜が破れやすいくらいのものが多く、じょうのう膜ごと食べてもほとんど気にならず美味しく食べられます。
サジョウは比較的しっかりとしており、ジョウノウ膜がはがしやすいので、手で膜を剥いても果汁はあまり滴らず缶詰のみかんのような状態にできます。
●ゆら早生の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「ゆら早生」は和歌山県で発見され育成された品種で和歌山県で作られてきましたが2013(平成25)年に種苗法における育成者権が期間満了し解禁されています。和歌山県以外では2002(平成15)年頃から静岡県で栽培され始めたのを皮切りに、2005(平成17)年には三重県や佐賀県などでも栽培されるようになり、現在では各地のみかん産地で作られています。
ただ、「ゆら早生」は樹勢が弱く潅水の摘果など手間がかかり、果実が小さくなりがちで収量も少ないため栽培は難しい品種とされています。
本場和歌山県由良町にあるJA紀州ゆら選果場では外見の善し悪しにに加え、糖酸センサーを使用し、糖度11度以上のものを「ゆらっ子」というブランド名で出荷しています。
◆ゆら早生の収穫時期と旬
「ゆら早生」は和歌山県での熟期は10月上旬で、まだ果皮の色が青いうちから収穫は始まります。収穫時期は早い所では9月末辺りからで10月一杯続きます。
青さが残る「ゆら早生」はイキイキとした酸味があり、そうしたものを好む方にお勧めです。酸が抜け糖度が高まるのは10月中旬ごろから下旬にかけてで、適期を過ぎると浮皮が出始めて味が落ちてき始めます。そうしたことから食べ頃の旬は10月という事になります。
品種 | 8月 | 10月 | 11月 | 12月 | ||||||||
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ゆら早生 |