太秋(たいしゅう):特徴や旬の時期と主な産地

太秋(たいしゅう) 甘柿

■太秋(たいしゅう)とは

 「太秋」は農研機構が「富有」に「II iG-16」を交配し育成した、極めて大玉で、サクサクとした食感と多汁で甘い完全甘柿品種です。

◆太秋の来歴

 「太秋」は農研機構が果樹試験場安芸津支場(現 果樹試験場カキ・ブドウ支場)において「富有」に、「次郎」と「興津15号」の交雑実生から選抜された系統「II iG-16」を交配し、得られた実生から選抜育成された完全甘柿品種です。育成の過程は以下の通り。

1977年 果樹試験場安芸津支場において「富有」に「II iG-16」を交配。

1978年 種子を播種。実生を養生。

1979年 「富有」中間台に高接ぎ。

1983年 初結実。

1984年 一次選抜し、増殖して調査を継続。

1989年 系統名を「カキ安芸津10号」とし、全国30か所の公立試験研究機関および果樹試験場安芸津支場において、カキ第4回系統適応性検定試験に供試。

1994年 平成5年度同試験成績検討会および平成 5年度果樹試験研究推進会議を経て、3月に命名登録出願、合わせて種苗法に基づく登録出願。8月に農林水産省育成農作物新品種命名登録規定に基づき、「太秋」と命名され、「カキ農林7号」として農林登録される。

1995年 品種登録完了。

太秋(たいしゅう) 甘柿

 「興津15号」は「晩御所」と「花御所」の交雑実生から選抜された系統となっています。

●太秋の特徴

 果実の大きさは平均380g前後と大玉傾向にあり、500gを超えるものもあります。果肉が梨のようにさくさくとして軟らかく、果汁が大変多いのが特徴。糖度も高く、17~18度程にもなります。

 種は少なく、入っていても2~3個ほどです。熟すにつれ表面にひび割れが生じやすいこともあり、表皮にまだ緑が残っている位から収穫され始めますが、渋抜けが早く、青いうちから食べられ、完全に色付いたものよりシャキシャキ感が楽しめます。

太秋(たいしゅう) 甘柿

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『- - - - -

 果実の形はやや扁円、縦断面の形は扁円、果頂部の形は浅凹、微尖は全果、横断面の形は方円、果実の斜線溝は明瞭で中、側溝は無、蒂部の皺は無、

 果皮の亀甲紋はやや明瞭、大きさと密度は小密、果粉の多少は多、蒂窪平面の形は正円形、側面の形は凹平である。

 果心の形は長三角、果実の大きさは極大(400g程度)、

 果皮の色は銅橙、光沢は中、果実の座の有無は無、条紋の発生程度は多、蒂の全形は基太肩平幅広、大きさは中、果実に対する姿勢は平行である。

 果肉の色は黄橙、褐斑の大きさは小、密度はかなり粗、分布は果肉全体、肉質はやや密、甘味は中(糖度17度程度)である。

 種子数は1~2、種子の形は長三角、大きさはやや大、

 雌花及び雄花の開花期は中、落葉期は早、結果の多少は中、隔年結果性は小、成熟期は中、育成地においては11月上旬である。

 甘渋性は完全甘、

 「富有」及び「松本早生富有」と比較して、果頂部の形が浅凹であること、果実横断面の形が方円であること、果実が大きいこと、種子数が少ないこと、花性が雌花雄花完全花であること等で、「陽豊」と比較して、果頂部の形が浅凹であること、果実が大きいこと、蒂の果実に対する姿勢が平行であること、花性が雌花雄花完全花であること等で、「御所」と比較して、果実の斜線溝が明瞭で長いこと、蔕部の皺が無いこと、結果が多いこと等で区別性が認められる。

- - - - - - -』以上、抜粋。

●条紋入りが甘い

 太秋柿は果頂部を中心に円を描くように細かいひび割れのような筋が入りやすい特徴も持っています。この筋は「条紋(じょうもん)」と呼ばれ、沢山入ると見た目が悪くなり商品価値が下がってしまうのですが、実は、この条紋が入った部分は周りより糖度が上がったために出来るらしく、甘く美味しい部分なんだそうです。表面の傷は皮を剥けば分からなくなるので、選ぶ際の目安にするといいでしょう。

太秋(たいしゅう) 甘柿

◆実際に食べてみた太秋の食味

 撮影した太秋は11月中旬に岐阜県で購入したものです。果重400gほどのものと、520gほどある大きな柿で、いずれも果面に条紋が現れているものを選びました。

太秋(たいしゅう) 甘柿 太秋(たいしゅう) 甘柿

 食べてみると、条紋の入り方から予想する甘さは裏切られず、かなり甘いです。樹上で完熟したと思われますが、食感はまだサクサク感もしっかりとありとても美味しい柿でした。計った糖度は小さい方が18.3度、大きい方は条紋も多く、糖度は20度を超えていました。

 太秋柿は、このサクサクとした軽やかな歯触りとジューシーさ、そしてこの甘味の強さから、個人的にはとても好きは品種の一つです。

■太秋(たいしゅう)の主な産地と旬の時期

太秋(たいしゅう) 甘柿

●主な産地は熊本県

 政府がまとめた2019(令和元)年の栽培面積を見ると、太秋柿は全国で255.2haで栽培されています。これは柿全体で見ると約2.1%に当たります。

太秋柿(たいしゅうがき)の主な産地と栽培面積

 主な産地は熊本県で、その栽培面積は全国の約46%を締めています。次いで福岡県、岡山県、愛媛県となっています。

●太秋の収穫時期

 太秋柿は10月上旬ごろより収穫がはじまり11月中ごろまで収穫されます。食べ頃の旬の時期は10月中旬から11月中旬頃までです。

旬のカレンダー 9月 10月 11月 12月
太秋                        

< 出 典 >

 ※ 「カキ新品種‘太秋’」農林水産省果樹試験場 果樹試験場報告 35号 p. 57-73 2001年3月

 ※ 「登録番号4721 太秋」 農林水産省品種登録データベース

皆さんで是非このサイトを盛り立ててください。よろしくお願いします。