次郎(じろう):来歴や特徴と産地や旬

次郎柿(じろうがき),治郎柿

●次郎柿とは

◆次郎の来歴

 「次郎(じろう」は1844(弘化元)年に静岡県周智郡森町の松本治郎吉氏(1813-1887年)が太田川の河原で上流から流れてきた柿の幼木をみつけ、これを自宅の井戸端に植えたのが起源とされています。

 1869(明治2)年にに火事によって一度焼失しましたが、翌年その根元からあらたに芽を出してきた木は以前以上に甘く美味しい実を付ける柿の木に育ち、現在でも静岡県の指定天然記念物として保存され現存しています。

次郎柿(じろうがき),治郎柿

 当時は発見者の名前から「「治郎(じんろう)さの柿」と呼ばれていたようですがそれが「治郎柿」となり、戦後になって「次郎柿」と書かれるようになりました。

 その後「次郎」は枝変わりによる系統がいくつも発生しています。主なものには「一木次郎」、「前川次郎」、「焼津早生次郎」「若杉系次郎」などがありまが、これらの多くは単に「次郎柿」として店頭に並ぶことが多く、個々の品種名はあまり知られていないのではないでしょうか。近年、それぞれの発祥地などで地域おこし的に品種名を表示する所も出ているようです。

◆次郎柿の特徴

 「次郎」柿は完全甘柿です。果実は果重200~300gほどで「平核無」柿などのように上から見ると四角い形をしていますが、起伏があり、果頂部はわずかに凹み、そこから放射状に側面にまで浅い窪みが出来やすい。

次郎柿(じろうがき),治郎柿

 果皮色は熟し具合により明るい橙色から熟すにつれ橙紅色へと色づいていきます。

次郎柿(じろうがき)の断面,治郎柿

 果肉は黄紅色で褐斑粒子が極めて細かく、肉質は緻密で硬く、「富有」に比べて果汁が少ないのが特徴です。糖度は17度ほどと甘く、上品な風味で渋残りせず食味が良い柿ですが、肉質が粘粉質のため熟しすぎると食味は落ちます。

●富有柿と次郎柿

次郎柿(左)と 富有柿

 「富有」柿と「次郎」柿は柿の代表格でよく比較されたりします。『「富有」はあごで食べ、「次郎」は歯で食べる』と言われていて、「富有」柿は果肉がやわらかく、「次郎」は硬めで歯ごたえがある柿ということを表しています。外見ではふっくらと丸くつるっとした「富有」柿の方に軍配が上がます。写真は左が次郎で右が富有です。

◆実際に食べてみた次郎の食味

 「次郎」柿の美味しさは何といってもコリコリとした食感と上品な甘さではないでしょうか。

 表面に浅い起伏があるため薄く皮を剥くのは難しいですが、近頃は種子がほとんどなく食べやすいです。

次郎柿(じろうがき)の断面,治郎柿

 肉質が緻密で硬く、小さいサイの目や薄くスライスしても崩れにくいので、サラダや和え物など歯触りの良い食感と甘味を活かした料理にもお勧めです。

●次郎の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 令和元年産特産果樹生産動態等調査でみた「次郎」柿の全国の栽培面積は早生系と合わせると536.5haとなっています。これは柿全体で見ると4.4%ほどで、早生を含めた「富有」、「平核無」「刀根早生」「甲州百目」に次いで5番目に広く作られている品種となっています。ただ、新しい品種の登場や後継者不足などから栽培面積は徐々に減ってきています。

次郎柿(じろうがき)と早生系次郎の栽培面積

 主な産地は愛知県で豊橋市が有名です。愛知県だけで全国の半分近くを占めています。次いで静岡県、三重県、愛媛県となっています。

◆次郎の収穫時期と旬

 「次郎」柿の収穫時期は10月下旬頃から始まり、12月初旬頃までです。最盛期は10月下旬から11月中旬となり、食べ頃の旬もその頃となります。

品種 9月 10月 11月 12月
次郎                        

< 出 典 >

 ※ 「次郎」カキ品種名鑑 遠藤融郎著 社団法人日本果樹種苗協会 p.48

 ※ 「次郎柿原木静岡県天然記念物第17号(昭和19年)」静岡県森町ホームページ

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