玉うさぎ:来歴や特徴と産地や旬
●玉うさぎとは
◆玉うさぎの来歴
「玉うさぎ」は山形県天童市で果樹苗木生産販売を営む株式会社イシドウの石堂悟氏が「川中島白桃」に「ゆうぞら」を交配し、得られた実生から選抜育成した、果皮が濃紅色に着色しやすく食味が良い晩成種の白肉桃品種で、2006(平成18)年に種苗法に基づき登録出願、2009(平成21)年2月に品種登録されています。
「川中島白桃」と「ゆうぞら」の交配で生まれた品種としては本種の他「甘甘燦燦」があるほか、「黄ららのきわみ」や「光月」などの黄桃も生まれています。
◆玉うさぎの特徴
「玉うさぎ」の果実は果重は300g前後で果形は扁円形で果頂部は尖らず浅くくぼんでいます。
果皮の地色は乳白色で、全面に濃紅色に着色しやすく、果肉は乳白色で核のまわりだけ赤く着色します。肉質は硬めで日持ち性がいいですが、溶質で繊維が少なく、追熟させると柔らかくなります。
糖度は13~15%に対し酸味は少なく果汁はやや多く食味良好な品種となっています。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の形は円形、果実の大きさは中、果頂部の形は広浅凹、果実の対称性は対称、縫合線の強弱はやや弱、梗あの幅は中、
果実の地色は乳白、果実の着色の型はべた状、果実の着色面積は極大、
果実の毛じの粗密は中、果皮の厚さは中、果皮の付着性は中、
果肉の硬さはやや硬、果肉の地色は乳白、果肉のアントシアニン着色の強弱は弱、核の周辺のアントシアニン着色の強弱は強、
果肉の肉質は非繊維質、果実の甘味は高、
核の大きさはやや大、核の横面の形は楕円形、核の褐色の濃淡は濃、核の表面の紋様は点・条、核割れの多少は極少、核と果肉の粘離は有、核と果肉の粘離の強弱は強、
収穫期はやや晩である。
出願品種「玉うさぎ」は、対照品種「川中島白桃」と比較して、葉身の長さ/幅がやや小であること、果実の大きさが中であること等で区別性が認められる。
対照品種「ゆうぞら」と比較して、果実の着色面積が極大であること、果肉の硬さがやや硬であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた玉うさぎの食味
撮影試食した「玉うさぎ」は8月11日に購入した和歌山県産です。果皮は全体に着色し、一玉は色が濃く、もう一玉は色は薄めでしたが、糖度の高さをうかがわせる白い果点が現れていました。
切ると果実は既に柔らかく熟しており、皮は手で容易にむくことが出来ました。おそらく樹上でしっかりと熟してから収穫されたのだと思われます。断面をミルだけで果肉に果汁がたっぷり含まれていることが解ります。
食べてみると、果肉は歯を使わなくても口の中で崩れ、甘い果汁が口いっぱいに広がりました。酸味が少ない分、甘さが強く感じます。計った糖度は17度を超えていました。
甘さと食感は申し分なかったのですが、渋みが結構口に残ったのが残念です。これは核割れしているのが原因かと、もう一つの方(色が濃い方)を切ってみると、こちらは核割れしていませんでしたが、やはり少し渋みが出ていました。これは栽培環境によるもののようです。
●玉うさぎの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「玉うさぎ」の主な産地は山形県です。令和元年産特産果樹生産動態等調査によると全国で「玉うさぎ」を栽培している産地は少なく、記録があるのは山形県の19.6haと福島県の3.2haだけでした。
「玉うさぎ」の苗木は普通に販売されているので、このほかにも各地の桃産地で個々の農園が少量栽培しているようです。
◆玉うさぎの収穫時期と旬
「玉うさぎ」は山形県あたりでは「川中島白桃」より7~10日遅い9月上旬~中旬となっています。撮影したものは8月中旬に購入した和歌山県産なので、岡山県や和歌山県辺りでは8月中旬から下旬にかけてとみられます。
品種 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||||
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玉うさぎ |
< 出 典 >
※ 「玉うさぎ TAMAUSAGI」株式会社イシドウホームページ
※ 「もも晩生種「玉うさぎ」の特性」地方独立行政法人 青森県産業技術センター りんご研究所
※ 「登録番号17329 玉うさぎ」 農林水産省品種登録データベース