豊福早生(とよふくわせ):来歴や特徴と産地や旬

豊福早生(とよふくわせ) 温州みかん

●豊福早生(とよふくわせ)とは

 「豊福早生」は熊本県の果樹研究所が「大浦早生」に「パーソンブラウン」を交配し選抜育成した極早生温州みかんで1995年に品種登録され、熊本県から10月に出荷される極早生温州ミカンの主要品種となってきました。

◆豊福早生の来歴

 「豊福早生」は熊本県農業研究センター果樹研究所(下益城郡松橋町)において「宮川早生」の枝変わりである「大浦早生」にオレンジの極早生種である「パーソンブラウン」の花粉を交配し、得られた珠心胚実生から選抜育成されました。育成の過程は下記の通りです。

豊福早生(とよふくわせ) 温州みかん

1984(昭和59)年 熊本県農業研究センター果樹研究所において「大浦早生」に「パーソンブラウン」を交配。得られた種子から珠心胚を分離、培養した実生を養成

1986(昭和61)年 高接ぎを行い、特性の調査を開始。

1990(平成2)年 2個体を選抜、

1991(平成3) 年 県内4か所で地域適応性試験および特性の調査・確認を行い最終選抜して育成を完了。

1992(平成4)年 種苗法に基づき登録出願。

1995(平成7)年 品種登録完了。

 ※「パーソンブラウン」・・・1865 年にアメリカ・フロリダ州ウェブスター近くのNLブラウン牧師の家で偶然発見された苗木とされるオレンジの極早生種。(※1)

◆豊福早生の特徴

 「豊福早生」の果実は果重70~140gで、扁円形で果形指数(横径/縦径)は135ほどで、「宮本早生」ほど扁平ではありません。大きさは「宮本早生」と同じくらいとなっています。

豊福早生(とよふくわせ) 温州みかん

 果皮の色は黄橙色に着色しますが、多くは少し黄緑が残っている状態で収穫されます。果面は中くらいの油胞が密にあり比較的滑らかです。皮は普通の厚さで、手で剥くことができます。

 ジョウノウ膜は薄く、そのまま食べることができ、収穫時期によって9月下旬頃は酸味が強く、その後酸味が減り糖度が上がって10月上旬には糖度10~11%、酸度9~10%となります。

豊福早生(とよふくわせ)の断面  温州みかん

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果実の外観は円、果形指数は~135,果頂部水平域の果実横径に対する比は大、果頂部凹部の深さは浅、花柱痕の大きさ及び果梗部水平域の果実横径に対する比は大、果梗部放射条溝果の多少は少、中心柱の大きさ及び果実の大きさは中である。

 果皮の色は黄橙、油胞の大きさは中、果面の平滑度はやや滑、油胞の密度は密、凹凸は平、凹点の多少は無~少、果皮の厚さは中、剥皮の難易は易である。

 じょうのう膜の硬さは軟、砂じょうの色は橙、果汁の多少は多、甘味は中、酸味及び香気は少である。

 成熟期は極早、育成地においては9月下旬~10月上旬である。

 隔年結果性は低、浮皮果の発生及び裂果の多少はでにくい、貯蔵性は小である。  

 「大浦早生」と比較して、樹勢が強いこと、中心柱の大きさが小さいこと、油胞の密度が密であること、酸味が少ないこと等で、「山川早生」と比較して、樹勢が強いこと、油胞の密度が密であること、酸味が少ないこと等で、「宮本早生」と比較して、樹勢が強いこと、葉身の面積が大きいこと、花柱痕の大きさが大きいこと等で、「白浜1号」と比較して、樹勢が強いこと、果梗部放射条溝果が少ないこと、中心柱の大きさが小さいこと等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた豊福早生の食味

 写真の豊福早生は10月20日に購入した熊本県の[夢未来みかんくまもと]ブランドで販売されていたものです。

 ”夢未来みかん”は平成12年度に統合された、河内町内3地区、熊本市1地区の管内4地区のみかん選果場で最新のセンサーを使い選別されたJA熊本市柑橘部会の柑橘のブランド名で、温州みかんに限らず「デコポン」や「清見」など色々な柑橘が含まれています。

皮をむいた豊福早生(とよふくわせ) 温州みかん

 価格は手頃で、外見はわずかに黄緑が混じるものの全体に黄色く色付いたものが多かったです。果重は110~135gとやや大きめのサイズでした。

 食べた食味はあっさりとした甘味で酸味は少なくジューシーで、ジョウノウ膜も薄く、極早生品種としては食べやすく美味しいみかんでした。

●豊福早生(とよふくわせ)の主な産地と旬

◆主な産地と生産量

 令和元年産特産果樹生産動態等調査によると「豊福早生」の全国の栽培面積は331haとなっています。これは極早生品種の中では「日南1号」「上野早生」「ゆら早生」に次いで4番目に広く栽培されていることになります。

豊福早生(とよふくわせ) 温州みかん

 主な産地は熊本県で326.3haと全国の98.6%を占めており、豊福早生は熊本の極早生温州みかんと言ってもいいほどです。それ以外の地域では長崎県2.6ha、佐賀県2.1haとわずかに作られています。

 熊本県のJAでは県下統一基準を満たしたものを「肥のさきがけ」というブランドで出荷しています。

◆豊福早生の収穫時期と旬

 「豊福早生」は9月下旬から収穫できる極早生品種となっています。収穫は9月下旬ごろから始まりますが、収穫時期によって甘味酸味のバランスに違いがあり、9月下旬から10月上旬にかけてはまだ活き活きとした酸味が残った味わいで、10月下旬にかけて酸味が抜け甘味が増してきます。その時々の味わいを楽しみましょう。

品種 9月 10月 11月 12月
豊福早生                        

< 出 典 >

 ※1 「HOME FRUIT PRODUCTION-ORANGES」College of Agriculture and Life Sciences Texas A&M University

 ※ 「豊福早生(とよふくわせ)」 公益財団法人中央果実協会 主要品種紹介

 ※ 「上野早生・大浦早生の特性比較」九州農業研究 第48号 p.265 昭和61年8月 農研機構

 ※ 「登録番号4423 豊福早生」 農林水産省品種登録データベース

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