ジュエルマスカット:来歴や特徴と産地や旬
●ジュエルマスカットとは
◆ジュエルマスカットの来歴
「ジュエルマスカットは山梨県が「ブドウ山梨 47 号」に「シャインマスカット」を交配し育成した山梨県オリジナルブドウ品種です。
山梨県が下記の要件を満たす山梨県のオリジナル新品種を目標に果樹試験場において、2004年より育種が始められました。
▶無核化が可能で食味が良いいこと。
▶皮ごと食べられるか皮離れが良いこと。
▶盆前出荷が可能な早生品種で,市場競争力があり高品質で高級感溢れる大粒種であること。
▶彩り豊かでボリューム感があり,観光や宅配向けなど多面的な販売が可能な大粒品種であること。
ジュエルマスカットの育成過程は下記のとおりです。
2004年 大粒でボリューム感のある山梨県育成系統「ブドウ山梨 47 号」に大粒で食味に優れる「シャインマスカット」の花粉を交配。その種を得る。
2005年 種をまき、発芽した実生を緑枝接ぎし育成。 翌2006年に定植。
2009年 系統名「生食ブドウ山梨 1 号」として一次選抜。
2010年 県農政部関係者や関係農業団体による検討が行われ、その結果有望と判断され、種苗法に基づく登録出願。翌2013年に出願公表。
2013年 「ジュエルマスカット」として品種登録完了。
交配親に使用された「ブドウ山梨 47 号」は「ジュライマスカット」と「リザマート」の交配から育成された系統です。
「ジュエルマスカット」の名称はこのぶどうの外観が山梨県の代表的な地場産業品である宝石(ジュエリー)のように美しい緑色であることに因んでいるそうです。
◆ジュエルマスカットの特徴
「ジュエルマスカット」は自然状態での果房は大きく、有岐円錐形になり、着粒は中程度となりますが、通常は果房の大きさを調整し開花前後に2回ジベレリンなどの処理が行われ、果粒は肥大し種無しとなります。
適切な処理が行われた「ジュエルマスカット」の果房は600g~1kgほどの大きさになり張りのある円錐形に仕上がります。
果粒は18g前後の大きさで長楕円形。果皮は薄く、果肉に密着していて手でむくことはできませんが、皮ごと食べることができます。
果肉は崩壊性で糖度14~20度と高く、酸味は少ないため甘いぶどうとなっています。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果房の大きさは極大、果房の着粒密度は中、穂梗の長さは極長、穂梗の色は淡緑、
果粒の大きさはかなり大、果粒の形1は広楕円体、
果皮の色は黄緑、果粉の多少は中、果皮の厚さは中、果皮と果肉の分離性は難、
肉質は崩壊性、果汁の甘味はかなり高、果汁の多少は中、果実の香りは無、熟しょうの色は暗褐、花振るいの多少は中である。
出願品種「ジュエルマスカット」は、対照品種「シャインマスカット」と比較して、若葉裏面の葉脈間の綿毛の密度が無又は極粗であること、成葉の主脈に対する葉柄の長さが長いであること等で区別性が認められる。
対照品種「ロザリオ ビアンコ」と比較して、成葉の上裂刻の深さが浅であること、成葉の主脈に対する葉柄の長さが長いであること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみたジュエルマスカットの食味
撮影試食した「ジュエルマスカット」は8月28日にJAの直売所で購入した810g/房のものです。
粒の大きさは19gほどで、丸い長楕円の粒の他、タグビーボールのように少し先が尖ったような形の粒が多くついていました。
房は『ジュエル(宝石)』という名の通り全体にとても美しい黄緑色で、形も良い感じでした。果粒は太くしっかりとした果梗に付いていて脱粒はしにくい感じです。
食べてみるとパリッとした歯触りでシャインマスカットとよく似ていて、酸味はあまりなく甘味が主張してくる味わいで、香りは感じられませんでした。
ただ、試食した房は少し収穫のタイミングが早いのか、糖度は14.5度ほどで、皮に少し渋みがありました。
●ジュエルマスカットの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
ジュエルマスカットは山梨県が育成した県のオリジナル品種で、山梨県内でしか栽培することはできません。
平成30年産特産果樹生産動態等調査にもまだ記載がなく、現在の栽培面積や収穫量は分かりませんが、まだまだ生産者が少ないようです。
◆ジュエルマスカットの収穫時期と旬
ジュエルマスカットの収穫時期はシャインマスカットより10日ほど遅いとされ、山梨県では8月下旬~9月中旬にかけてとなっています。
品種 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||||
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ジュエルマスカット |
< 出 典 >
※ 「ブドウ新品種‘ジュエルマスカット’」山梨果試研報第 13 号:9-14.2014
※ 品種登録データベース 農林水産省ホームページ