鴨梨(ヤーリー):来歴や特徴と産地や旬
●鴨梨(ヤーリー)とは
◆鴨梨(ヤーリー)の来歴
「鴨梨」は中国原産の梨で、ホクシヤマナシ(P. ussuriensis var. ussuriensis)とヤマナシ(Pyrus pyrifolia)の交雑種とされ、「ヤ―リー」という呼称は「鴨梨」の中国読みから。また、果実が熟すと独特の強い香りを発することから「香梨(シャンリー)」とも呼ばれています。
日本には明治時代初年の1868年に導入されましたが広く普及はしなかったようで、現在は岡山県のごく一部で栽培されているだけとなっています。
「鴨梨」という名称は果実の形が鴨が首をすくめた姿に似ていることに因んでいます。
◆鴨梨(ヤーリー)の特徴
「鴨梨」の果実は西洋梨と同じ、首(梗あ付近)が細く、そこから下部がふっくらとしているびん型で、果皮色は収穫時は淡い緑色ですが、食べ頃になった果実は全体に淡い黄色から黄白色で、暗褐色の小さな果点が全体にみられ、梗あ周辺が黄褐色になっています。通常、「鴨梨」は収穫後、美味しく食べられるようになるまで一定期間追熟させたものが出荷されています。
また、適塾になると独特の芳醇な強い香りを発します。
果肉は乳白色で、肉質は和梨に近く石細胞を含み、シャリっとした食感で、果汁が多く、甘味は強くはありません食味いい梨です。
写真を見ても洋梨のような外観と、和梨のような果肉の感じが分かっていただけるのではないでしょうか。
◆実際に食べてみた鴨梨(ヤーリー)の食味
撮影した「鴨梨」は岡山県の石原果樹園から12月5日に届いた4玉(2kg)/箱で、果重495~529gの大きな果実でした。
箱を開けた途端、芳醇な香りが部屋中に広がり、それだけでもちょっと感動しました。
果実は一つ一つ丁寧に紙で包まれており、その紙を外すと、淡い黄色でとても綺麗な果実が出てきます。
果梗近くを触ると既に少し柔らかく、食べ頃であることが解ります。切った感じは包丁の刃先にザクザクとした感触があり、和梨に似ています。
食べてみると、この華やかな強い香りを除けば和梨と同じ感じで、石細胞が歯や舌に感じられ果汁が多く、甘味も十分にありました。甘さの陰に隠れるような感じで酸味もあり、甘さ自体は今時の果物に比べるとそれほど強くはないのですが、香りと甘酸のバランスがよくとても美味しいです。計ってみた糖度は14.5%でした。
●鴨梨(ヤーリー)の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「鴨梨」は現在岡山県の岡山市東区西大寺雄神地区でしか作られていません。現在はとても希少な品種となっています。
平成30年産特産果樹生産動態等調査には岡山県での栽培面積が5haとなっていますが、令和元年以降は中国梨が調査対象から外されてしまいました。
◆鴨梨(ヤーリー)の収穫時期と旬
「鴨梨」の収穫は10月中旬頃に始まります。収穫された「鴨梨」はすぐに出荷されず、11月下旬まで一か月ほど冷蔵庫で追熟され、11月下旬~12月中旬にかけて出荷されます。
美味しく食べられるのは正月あたりまでとなります。
品種 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | ||||||||
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鴨梨(ヤーリー) |
< 出 典 >
※ 「鴨梨(備前乙女梨)」石原果樹園 品種紹介
※ 「鴨梨」図解 果物の大図鑑 株式会社マイナビ出版 p.57