美郷(みさと):来歴や特徴と産地や旬
●美郷(みさと)とは
◆美郷(みさと)の来歴
「美郷(みさと)」という名称の桃は山形県大江町本郷の加藤秀一郎氏が「日川白鳳」と「だて白桃」を混植している自園で発見した偶発実生を育成した大果で着色が良い白肉の桃品種で、正式な品種名は育成者の名前から「加藤一号」となっています。
2012(平成24)年に山形県天童市の株式会社イシドウが「美郷(みさと)」という商標で商標登録し、その後2013(平成25)年に種苗法に基づく登録を出願、2017(平成29)年に品種登録されています。
◆美郷(みさと)の特徴
「美郷」の果実はこの時期の桃としては特に大きく、撮影したものも果重400g以上450g前後ありました。果形は扁円形で左右に広く前後の幅は左右ほど広くはありません。
果皮色はクリーム色の地色に陽光面を中心に濃い赤色に着色します。
果肉は乳白色で種の周りは赤くなく、果肉に差す紅も少ないです。果肉は硬めで肉質は繊維質となっています。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の大きさはかなり大、果実の形は扁円形、果頂部の形は広浅凹、果実の対称性は対称、縫合線の強弱は中、梗あの幅はやや広、
果実の地色は乳白、果実の着色の型はべた状、果実の着色面積はかなり大、
果実の毛じの粗密はやや粗、果皮の厚さは中、果皮の付着性はやや強、
果肉の硬さは中、果肉の地色は白、果肉のアントシアニン着色の強弱は弱、核の周辺のアントシアニン着色の強弱は弱、果肉の肉質は繊維質、果実の甘味は中、
核の大きさは中、核の横面の形は楕円形、核の褐色の濃淡はやや淡、核の表面の紋様は点・条、核割れの多少はかなり低、核と果肉の粘離の有無は有、核と果肉の粘離の強弱はやや弱、収穫期はやや早である。
出願品種「加藤一号」は、対照品種「あかつき」と比較して、果実の大きさがかなり大であること、果肉の肉質が繊維質であること、核と果肉の粘離の強弱がやや弱であること等で区別性が認められる。
対照品種「恋みらい1号」と比較して、果実の大きさがかなり大であること、果皮直下のアントシアニン着色の強弱が無又は極弱であること、果肉の肉質が繊維質であること、核と果肉の粘離の強弱がやや弱であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた美郷(みさと)の食味
撮影した「美郷」は福島県の菱沼農園から7月下旬に届いた、果重400~450gある大玉6玉入り/箱でした。
着色の色がかなり濃いのが印象的で、表面に白い果点も現れていて糖度の高さに期待が高まります。
届いた日に撮影のために切ってみると、果肉はナイフの刃先に少し力を入れないと切れないくらい硬く、皮も手ではむくことができません。
食べてみるとゴリゴリした食感で果汁感も弱かったですが、甘味は十分にありました。計った糖度は13.5度でした。
次に5日間箱に入れたまま室温で追熟させてから食べてみました。
表面の皮は少ししぼんだような状態になっていましたが、それでも果肉は硬く、皮も手で剥くことはできませんでした。食べた食感は幾分柔らかくはなっていましたが、それでも繊維が強く硬い桃で、甘さもあまり変わっていませんでした。
以上から、美郷は硬めの桃がお好きな方にお勧めの品種と言えそうです。
●美郷(みさと)の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「美郷」の栽培面積などの情報は見当たらず、令和元年産特産果樹生産動態等調査にも記録がありませんでした。
苗木は一般に販売されているので、どこでも栽培することは可能となっています。
調べてみた限りでは主な産地は福島県、山形県、愛知県などで、その他の桃産地でも個々の農園で少量栽培されているようです。
◆美郷(みさと)の収穫時期と旬
「美郷」の収穫時期は産地によって差がありますが、早い所では7月中旬辺りから、福島県では7月下旬あたりからで、8月中旬辺りまでとなります。全国的に栽培されている数が少なく、市場に出回る数もわずかなので直売されている農園などで予約購入することをお勧めします。
品種 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
美郷(みさと) |
< 出 典 >
※ 「美郷® MISATO」株式会社イシドウホームページ
※ 「登録番号第5540312号 美郷」特許情報プラットフォーム 特許庁
※ 「登録番号25874 加藤一号」 農林水産省品種登録データベース