甲州(こうしゅう):来歴や特徴と産地や旬

甲州ぶどう こうしゅう

●甲州ぶどうとは

◆甲州の来歴

 現在数多くのブドウ品種が栽培されるようになったが、「甲州」は古来より日本に自生していたブドウ品種で、その来歴は奈良時代、大僧行基が今の甲州市勝沼町に大善寺を建立した際に発見した、あるいは薬師如来から授かったとする説や、鎌倉時代初頭(1186(文治2)年)に勝沼の雨宮勘解由(あめみやかげゆ)が発見し、それを植えたところその5年後に実が付いたという説がある。いずれも現在の甲州市勝沼地区が発祥とされている。

 その後江戸時代初期にはこの地域で現在のようなぶどう棚による栽培が広く行われるようになっていたとされ、国内のブドウ栽培の先駆けとなった。

甲州ぶどう こうしゅう

 近年、この「甲州」のルーツを解明すべく2013年、独立行政法人酒類総合研究所がアメリカ農務省農業研究所、コーネル大学などと共にDNAの解析を行った結果、ビニフェラと中国由来の野生種とのクォーターであることが解ったそうです。つまり、コーカサス地方を原産とするビニフェラがシルクロードを経て中国に伝わり、そこで何百年あるいは千年以上もかけて中国原産の野生種と種間交雑し、さらにそれがビニフェラと交雑したものと考えられるとのことです。(※「 ‘甲州’ブドウのルーツを解明」 独立行政法人酒類総合研究所

 なんともロマンあふれるぶどうだったのです。この野生種の血を受け継ぐことでとても強い適応性を身に着け、奈良時代あるいは鎌倉時代から栽培され続けてきたのでしょう。

◆甲州ぶどうは生食用とワイン醸造用兼用種

 「甲州」は生食用だけでなく、白ブドウ品種としてワイン用にも用いられ、現在では生産量の大半がワイン向けに出荷されています。

 「甲州」で作られたワインはフレッシュで軽やかな辛口白ワインに仕上がったものが多いですが、果皮の渋みや色合いを引き出した深みのある味わいのものも作られています。


 2010年には国際ぶどう・ぶどう機構O.I.V.(Office International de la vigne et du vin )に日本固有のぶどう品種として品種登録され、「甲州」100%で造られたワインはその品種目を冠してEUでの販売が認められています。

◆甲州の特徴

 「甲州」の果房はやや縦長の有岐円錐で着粒はやや粗目ですが脱粒はしにくい。

甲州ぶどう こうしゅう

 果粒は「キングデラ」と同じくらいかそれより少し大きく、果皮色は「キングデラ」ほど着色せず、濃く色付いたものでも薄い紫赤から赤褐色で、”グリ”=「灰色」と呼ばれる色合いです。

 果皮はやや厚みがあり果肉と一緒に食べるのは難しく、「デラウエア」などのように口から皮を出さなくてはなりません。また、種も入っています。

甲州ぶどうの果粒断面 こうしゅう

 果肉は柔らかくジューシーで、甘みと適度な酸味のバランスが良く糖度は18度ほどになるようです。

◆実際に食べてみた甲州の食味

 今回入手したものは10月1日で山梨県産のものです。価格は1房と0.7房ほどが入った1パック400円ほどでした。

甲州ぶどうの果粒断面 こうしゅう

 甘みは十分あり、それを支えるだけの酸味もあって美味しいですが、今日市場を占めている多くのブドウ品種に比べるとあっさりとしています。

 粒が大きくなく、皮を出さなければならない上に、種もしっかりと入っているので今どきの消費者にはあまり受けなくなった品種の一つですが、何百年も前から日本で作られ続けてきた固有種であるという来歴を想像しながら食べると、これがまた違った味わいに感じます。

●甲州の主な産地と旬

甲州ぶどう こうしゅう

◆主な産地と生産量

 「甲州」は発見されて以来何百年もの間、この甲州地方で作り続けてこられました。現在でも主な産地は山梨県で0、2017(平成29)年産の「甲州」生食向けの栽培面積を見ると全国で435haあり、そのうち約98%にあたる426haが山梨県となっています。その他は山形県、大阪府となっています。(※平成29年産特産果樹生産動態等調査 農林水産省)

 また、平成30年ワイン向けの「甲州」は全国で3574トン、うち山梨県が3426トンで96%近くを占め、残りは島根県と山形県となっています。(※国内製造ワインの概況(平成30年度調査分)-国税庁)

◆甲州の収穫時期と旬

 収穫時期は山梨県において9月中旬~10月中旬で、生食向けはその時期に出回ります。

旬のカレンダー

品種 8月 9月 10月 11月
甲州                        

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