あすみ:来歴や特徴と産地や旬
●あすみとは
◆「あすみ」の来歴
「あすみ」は現在の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が1992(平成4)年に「興津46号(「スイートスプリング」×「トロビタ'オレンジ」)」に「はるみ」を交雑し、得られた実生から選抜育成されたタンゴール品種です。
2011(平成23)年に品種登録出願、翌2012(平成24)年に出願公表され、2014(平成26)年に品種登録されています。
品種名の「あすみ」は、『「はるみ」の子であることと、明日のカンキツ産業を担うようにとの期待を込めて命名』されたとのことです。
「あすみ」が選抜育成されたのちに、同じ交配系統の中から選抜育成された「あすき」という品種もあり、2017年に出願公表されています。
◆「あすみ」の特徴
「あすみ」の果実はやや扁平な球形で平均果重が150gほどと温州みかんと同じくらいです。やや橙色が濃く見える程度で、外見的には明確な特徴がなく、パッと見ただけで判別するのは難しいでしょう。
栽培環境にもよるようですが、糖度は15~17%とかなり甘みが強く、酸味もあり、芳香もいいと食味の評価が非常に高いのが特徴です。
皮はややむきにくいですが手で剥けなくはなく、ジョウノウ膜が柔らかいことと種が少ないことから比較的食べやすい品種とされています。
また、機能性成分のβ-クリプトキサンチンを果肉100gあたり1.66mgと多く含んでいるのも特徴の一つです。
(※出典元:農研機構ホームページ)
農林水産省の品種登録データベースには「あすみ」の特徴が以下の通り記載されています。
『-----
果実の形は扁球、果頂部の形は平坦、果頂部放射条溝の有無は無、果頂部の凹環の有無は無、果梗部の形は切平面、果梗部放射条溝の多少は無、果心の充実度は中、果心の大きさは小、果実の重さはやや重、
果皮の色は橙、油胞の大きさは小、油胞の密度は中、油胞の凹凸は平、果面の粗滑は滑、果皮の厚さは極薄、果皮歩合は極小、剥皮の難易は中、じょうのう膜の硬さはやや軟、
さじょうの形は中、さじょうの大きさは中、さじょう(果肉)の色は濃橙、果汁の多少は多、甘味は高、酸味は中、香気の多少は中、種子数は少、
発芽期はやや晩、開花期はやや晩、成熟期はやや早、隔年結果性は中、浮皮果の発生は無、裂果の発生は少、貯蔵性は中である。
出願品種「あすみ」は、対照品種「はるみ」と比較して、果頂部の形が平坦であること、果梗部の形が切平面であること、果心の充実度が中であること、果心の大きさが小であること、胚の数が単胚であること等で区別性が認められる。
対照品種「せとか」と比較して、花粉の多少が中であること、胚の数が単胚であること等で区別性が認められる。
-----。』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた「あすみ」の食味
今回入手したものは2月上旬に仕入れた愛知県蒲郡産のもので、大きさはやや小ぶりの温州みかんほど。
触った感じは硬く、皮が手で剥けないんじゃないかと思えました。しかし、実際には果肉部分もしっかりとしていることもあり、剥く事ができます。ただ、皮が硬く、温州ミカンのようには剥けず皮が細切れになってしまいました。
断面写真を見ても分かるように、果肉と皮の間に隙間はなく、引き締まった果肉に皮が密着しています。また、このように赤道切りしても果汁はあまり出てきません。
皮を剥いたものをジョウノウ膜ごと食べてみると、ジョウノウ膜は確かに薄く、あまり口の中で気にならず、サジョウの粒感が舌に感じられます。そして強い甘みとしっかりとした酸味が相まって濃厚な味わいとして口に広がり、柑橘の良い香りが鼻に抜けていく感じで、甘いだけではない美味しさが楽しめました。
●「あすみ」の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「あすみ」は農研機構で開発された品種で、全国のミカン産地で栽培が可能とされており、各地で栽培が始まっているようですが、まだ品種として新しく、樹が育っていないため生産量は少ないようです。
また、樹の枝に長い棘があることから風によって果実に傷がつきやすく、他の要因もあって施設での栽培に向いているとされています。
◆「あすみ」の収穫時期と旬
成熟期は栽培立地にあまり影響されず1月下旬から2月上旬となっています。生産量が少なく、出回る時期が限られているので見かけたら買うことをお勧めします。
品種 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | ||||||||
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あすみ |