小林みかんと市木オレンジ(いちぎおれんじ):来歴や特徴と産地や旬
●小林みかんと市木オレンジとは
◆小林みかんと市木オレンジの来歴
「小林みかん」は福岡県福岡市宇美町の小林鹿吉氏が1903(明治36)年夏橙(夏みかん)に温州ミカンを接木し育成していたところ、1922(大正11)年に折れた接木部から出てきた枝にできたみかんが外見が夏橙で果肉が温州みかんに似ているのを発見し、「小林みかん」と命名したとされています。いわゆる接木雑種です。
外皮は夏みかんの特徴を受け継ぎ、中の果肉は温州みかんの特徴を受け継いでいる、二つ以上の異なった遺伝形質から構成されているキメラと呼ばれる柑橘になります。
その後、福岡で生まれた「小林みかん」が50年以上前に三重県南牟婁郡御浜町下市木地区に伝わり、この地区で「市木オレンジ」として栽培が広まりました。ただ、食べにくさなどから一般受けせず大きな消費地へ出荷されず、個々の農家で細々と作り続けられてきたようです。
近年、三重県で伝統品種が見直され、2008年にこの「市木オレンジ」も美し国「みえの伝統果実」に認定されています。
◆小林みかんと市木オレンジの特徴
「小林みかん」はやや扁平した丸い形で、果皮の色は黄色から明るい橙色で果皮が厚く油胞が荒く表面がく凸凹した感じになっていて見た目は夏みかんとほぼ同じです。
中の果肉は濃いオレンジ色で、サジョウはみかんの特徴を受け継いでとても柔らかく果汁たっぷりです。そのため、硬い外皮を手で剥こうとすると夏みかんのようにサジョウがしっかりとしていないため中のサジョウがつぶれ果汁がぽたぽたと垂れてしまい上手く剥くことができません。
三重県南牟婁郡御浜町では皮を剥かず、グレープフルーツのように半分に切って果肉をスプーンですくって食べるよう勧めています。
◆実際に食べてみた市木オレンジの食味
今回、撮影、試食したものは三重県尾鷲の直売所で購入した市木オレンジです。
果皮は夏みかんのように厚みがあって硬く、手ではむきにくそうでした。半分に切ると中の果肉は綺麗な濃いオレンジ・・・みかんと同じ色です。
試しにスプーンですくってみると、なるほど、果肉は意外なほど綺麗にすくい取れました。果肉の食感はみかんに近い感じでとてもジューシーです。ほどよい甘味で酸味は少なく、みかんとは少し違った香りがします。
●小林みかんと市木オレンジの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「小林みかん」は各地のみかん産地で個々の農園で少量作られてはいるようですが生産者が非常に少なく、市場にはほとんど出回っていません。愛媛県伊予市の福岡正信自然農園が知られています。
三重県では「市木オレンジ」として三重県南牟婁郡御浜町の御浜柑橘など古くから栽培されている生産者や個々の農家で作られています。また、南牟婁郡紀宝町の石本果樹園は度々メディアで紹介されており、こちらでは30年ほど前から市木オレンジを栽培していて、「みえの伝統野菜」に認定された2008年から本格的に栽培を始め2021年は約1トンほどを収穫されているようです。
◆市木オレンジの収穫時期と旬
三重県で作られている市木オレンジは1月下旬ごろから収穫が始まり3月上旬頃までだそうです。
直売所などで購入できますが、沢山ならぶ旬の時期は2月中旬から3月上旬頃です。
品種 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | ||||||||
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市木オレンジ |
< 出 典 >
※三重県ホームページ 美し国「みえの伝統果実」
※「小林ミカンのキメラ性に関する研究」園藝學會雜誌 48巻2号 p. 169-178 1979年9月 山下 研介
※朝日新聞社 コトバンク市木オレンジ
※名古屋テレビニュース 「果汁たっぷり「市木オレンジ」の収穫が最盛期」2021.02.04
※Locipo 東海テレビ 「市場に出回る量少なく「幻のみかん」とも」2021.02.04